収入減の医師、仕送り20万で赤字「メンツで妻は働かせられないので支出削減策が知りたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳、勤務医の男性。事故の後遺症で収入が減ってしまったという相談者。元が高収入のため、全体的に出費が多く、家計が赤字に。メンツのために妻は働かせられないと言いますが、どこから改善していけばよいでしょうか?FPの横山光昭氏がお答えします。

予想外のことが続き、家計が赤字です。

地方で働く医師ですが、交通事故の後遺症のため以前のように働くことができず、手取り収入が25万円ほど減りました。それと同時に長女が大学進学。本当なら自宅から国立大学に通うはずでしたが落ちてしまい、東京の大学に一人暮らしをしながら通うことになりました。そのため、家賃と生活費として、月に20万円ほどの仕送りをすることになりました。

このような事情で、最近の家計はいつも赤字です。長女の学費は今のところボーナスをあてがってなんとか支払うことができていますが、来年は次女の進学です。

毎月の赤字補填は、現状で約23万円。貯金があっという間に減っていき、残りが1,100万円ほどになってしまいました。後どのくらい持つのだろうか、次女が進学して、また一人暮らしを始めることになったら、支払っていけるのだろうかと不安です。

妻はしばらく働いたことがなく、今から働き始めることも無理でしょうし、この地域での私のメンツもあり、レジ打ちなどのパートはさせられないと思っています。そうなると、毎月の支出を見直していくしかないと思うのですが、妻は今までの生活にすっかり慣れてしまい、支出をどう削減すると良いかわからないと言います。

あまり難しくなく、でも妻もできるような、効果的な支出削減策はないものでしょうか。

【相談者プロフィール】

・相談者(51歳勤務外科医)

・妻(48歳専業主婦)、長女(19歳大学1年生・一人暮らし)、次女(18歳高校3年生)

・毎月の手取り収入:56万4,000円(Yさん)

・年間の手取りボーナス:約300万円

・貯金:約1,100万円

・毎月の支出の目安:79万4000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万8,000円

・食費:11万6,000円

・水道光熱費:23万円

・通信費:3万4,000円

・生命保険料:2万4,000円

・日用品代:2万8,000円

・教育費:4万2,000円

・自動車関連費:2万8,000円

・交通費: 7,000円

・被服費:2万4000円

・交際費: 3万2,000円

・嗜好品:8,000円(酒)

・小遣い: 7万円

・仕送り: 20万円

・その他: 3万円


横山:収入が減り、支出が増える時期が重なってしまったのですね。現在は赤字ということですが、支出状況を見るとまだ改善できる支出があると思えます。減収後の暮らしをどの党に整えていくか、一緒に考えてみましょう。

減収に合わせた暮らし方を

ケガの後遺症により、今までできていた業務ができなくなったことによる減収かと思いますが、後遺症の状況はリハビリなどで回復する可能性はあるのでしょうか。今の状況が生涯続く状況であれば今後、増収を見込める可能性もありませんから、今の収入に合わせた暮らし方に慣れていくしかありません。

もともと高収入であったのでしょう、支出はどの費目も多めな状況ですから、「支出を減らす」意識を持てば、かなり改善できるのではないかと思います。まずは現状、毎月何にいくらを使って暮らしているのかを把握するために、支出の記録を継続してみましょう。口座引き落としのものや月に一度決まった金額を支払うものは把握しやすいので、日々の生活費を中心に記録すると、効率が良いでしょう。

その上で、削減できる支出がないか、改めて見直してください。削減できないものばかりだと思う場合は、この支出が今の暮らしに見合っているかどうかを疑うことも必要です。

FPが気になる費目は?

客観的に見ると、食費は大人3人の食費としても高めです。日用品も同様です。通信費や被服費も改善の余地があります。具体的には、食費はその内容を見直してみましょう。外食が多いのか、総菜が多いのか。中にはデリバリーやデパ地下惣菜にかける支出が多いというケースもあります。現状が分かると、外食を減らそうか、自炊する頻度を上げようかなど、対策も考えやすいものです。

日用品も同様です。上質な消耗品にこだわっている、買いだめをたくさんしていた等が分かると、ストックの仕方や買う商品の選び方も変わってくるでしょう。

教育費、一人暮らし費用はお子さんと相談を

減収に加え、長女の一人暮らしのために、月20万円もの仕送りが必要だそうですが、果たして全額相談者さんが負担する必要はあるでしょうか。多くのお子さんが都内に進学し、一人暮らしをしていると思いますが、20万円も仕送りされるという裕福な子は、少ないと思います。

今、日本学生支援機構の奨学金を利用しているのは、学生2人に1人といわれています。それに大学内で取り扱う奨学金を加えて受給したり、アルバイトをして生活費や授業料等の一部を子ども自身が支払っているというケースが多いように見受けます。大学は義務教育ではなく、子どもの意思で、学びたい気持ちを持っていくところですから、それで当たり前だと思います。医師の場合は収入が高いことが多いので、所得面で奨学金の利用は難しいかもしれませんが、アルバイトなどお子さんの努力で何とかできる部分もあるはずです。

ですから、相談者様が医師で収入が多いことや、メンツに関係なく、子どもにもある程度、大学に通うための費用を負担させるよう、話し合いをすると良いでしょう。都内は家賃が高いので、家賃は家計で負担するけれど、生活費の一部はバイトなどで補ってほしい、などというやり取りがあっても良いと思いますよ。ましてケガの後遺症で収入が下がっているのですから、尚のことです。

長女さんとそのようなやり取りをしていると、次に進学を考える次女さんも、進学とお金について意識するでしょう。そうすると、大学授業料や生活費などの負担は丸々2倍とはならないはずです。

後の資金作りも意識して

現状の赤字、教育費負担など目の前の問題がある程度落ち着いたら、早めにご夫婦の老後資金作りにも着手しましょう。定年年齢がわかりませんが、勤務されているのなら、あと10~15年ほどしか働けません。退職金または企業年金などで、年金暮らしになっても問題ないほどお金があるというなら良いのですが、そうではない場合、老後資金を意識して貯めていく必要があります。

現在減ってきたと言っても貯金は1,000万円以上ありますから、生活防衛資金にそれを当て、今後できる貯金は老後資金用に運用することを検討しましょう。個人型の私的年金制度であるiDeCoは、今の時点では60歳までしか掛け金を拠出できませんが、2022年春からは公的年金制度に加入していれば65歳まで拠出できるようになります。もし、すでにDC(企業型確定拠出年金)があり規約でiDeCoが利用できなくても、これからは利用できるようになります。受け取り年齢も最大70歳だったのが75歳に上がりますから、50歳を過ぎても利用する価値があります。掛け金が全額所得控除、運用益が非課税という税制優遇のメリットも生かせます。

iDeCoとつみたてNISAは組み合わせで補う

ただiDeCoは一定の期間引き出すことができませんから、自由に使える資金がないと不安という場合は、つみたてNISAを検討しても良いでしょう。iDeCoの掛け金額が少ないと思う場合は合わせて取り組むとよいですね。つみたてNISAは掛け金額が年間40万円まで、20年間非課税で運用できます。投資対象は金融庁が認めた投資信託やETF(上場投資信託)ですから、長期でみれば失敗のリスクは低く抑えられるでしょう。

今は赤字の状況かもしれませんが、支出を見直せば、良い方向へ迎えるように変わることができます。こうでなくてはいけない、自分のメンツが、と考えず、その時に合わせ柔軟に対応できるようになっていきましょう。

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