ワーケーションの聖地・南紀白浜ってどんなところ?

ワーケーションの聖地・和歌山県白浜町。2020年から注目を浴び始めたワーケーションですが、白浜町は全国の自治体に先駆けて2017年からワーケーションを推進しています。
コロナ禍以前からワーケーションに注目していた背景、現在の白浜町のワーケーション事情を紹介します。

ワーケーションの聖地と呼ばれるようになった背景

白浜町がワーケーションを推進するようになった背景として、もともとIT企業の誘致を積極的に行っていたことが挙げられます。
IT産業は世界はもちろん日本でも伸長してきた分野であることは言うまでもなく、今後も成長が期待される分野です。

しかし、和歌山県が公表している「和歌山県のIT企業誘致の取組」によると、東京大都市圏(東京・神奈川・千葉)のIT企業事業所数は17,417事業所(42%)、大阪が4,058事業所(10%)のところ、和歌山県はわずか132事業所(0.3%)しかないそうです。

和歌山県は、「(IT企業誘致で)選ばれる6つの強み」として

①世界が注目する最高のロケーション

②首都圏からの便利なアクセス

③ビジネス環境、生活環境の強み

④全国トップクラスのネットワーク環境

⑤全国最高水準の奨学金制度

⑥生産性向上の実績

を挙げ、積極的に誘致を行ってきました。

これまで白浜町に進出した大手IT企業や施設をまとめました。

2015年 株式会社セールスフォース・ドットコムが白浜サテライトオフィスを開設

2016年 クオリティソフト株式会社が白浜に本社を移転

2016年 NECソリューションイノベータ株式会社が白浜サテライトオフィスを開設

2019年 三菱地所株式会社がワーケーション用オフィス拠点「WORK×ation 南紀白浜」を白浜町に開設

また、2020年現在、白浜町に進出している企業は以下の通りです。

株式会社ゼネラルステッカー

メディスト株式会社

NECソリューションイノベータ株式会社

株式会社ブイキューブ

株式会社ウフル

株式会社Office Concierge

(和歌山県公式YouTube 和歌山ミュージアム「ワーケーション」より)

計13社の企業が町運営のオフィスに入居し、そのうち4社は2019年6月に開設したばかりの「白浜町第2 ITビジネスオフィス」に入居しました。募集開始からかなり早い段階で満室になったそうです。

さらに、町内で3ヵ所目となるITオフィスの整備が決まり、今回は民間企業による「民設民営」の施設です。施設名は「ANCHOR(アンカー)」で、2020年11月にオープンしたばかりです。すでに1社の入居が決まっているということです。

新しく注目されるスタイル「ワーケーション」

こうした積極的なIT企業の誘致成功により、新しく注目したワークスタイルが「ワーケーション」です。
IT企業はコロナ禍以前からリモートワークを積極的に導入していました。今では当たり前になりましたが、遠隔のビデオ会議や、場所を選ばずパソコン1つで働けるワークスタイルはリゾート地と相性がよく、イノベーションも生まれやすいとされています。

ワーケーションという言葉がコロナ禍で注目を浴びる以前からIT企業の誘致とその働き方を活かして積極的にワーケーションの地として謳っていたことが、白浜町が「ワーケーションの聖地」と呼ばれる由縁だと思います。

では、現在の白浜町ではどのようにワーケーションを打ち出しているのでしょうか。
和歌山県が運営するwebサイト、和歌山ワーケーションプログラム(WWP)では、以下のように定義しています。

Work(仕事) + Vacation(休暇)
「ICTの活用等をすることで、リゾート地や地方など、普段の職場とは異なる場所で、働きながらも地域の魅力に触れることのできる取組」
WWP資料 「ワーケーションとは」より引用)

和歌山県のワーケーションにおいては、バケーション(Vacation)のみならず、

・非日常での活動を通したイノベーション(Innovation)の創出

・一人ひとりが自分自身と向き合い、新たな自分と出会う場 モチベーション(Motivation)/エデュケーション(Education)

・訪問者と地元業者とのコラボレーション(Collaboration)

など、さまざまな観点からワーケーションの利点を打ち出し、受入体制を整備しています。

WWPの資料によると、平成29年度〜令和元年度の3年間で、104社910名がワーケーションに参加したそうです(WWP資料「和歌山県のワーケーション実績」参照)。
こちらは県が主導した企業向けワーケーションに参加した人数ですが、個人ワーケーションの需要は今後一層増えると思われます。

白浜ワーケーケーションのここがすごい!

(1)都市部から良好なアクセス

首都圏から和歌山県は遠いように思われますが、実は羽田空港から南紀白浜空港まで約1時間で移動できます。1日3便出ており、利便性も悪くありません。
その他の交通手段として、和歌山市から車で約1時間半、関西国際空港から電車で約2時間と、都市部からリゾート地に足を伸ばすにはちょうどよい距離だと思います。

(2)Wi-Fiスポット数は国内有数

和歌山県は1,500ヵ所以上のWi-Fiスポットがあり、全国ランキングでもWi-Fi密度ランキング2位にランクインしています。
観光施設・飲食店・スーパーマーケットなどで無料で利用できます。WAKAYAMA FREE Wi-Fiのホームページで白浜エリアを検索したところ、確かにスポット数が多いことが分かりました。

画像:WAKAYAMA FREE Wi-Fi ホームページ

また、白浜町内には国の機関である情報通信研究機構(NICT)が開発した「NerveNet(ナーブネット)」と呼ばれる耐災害ネットワークがあり、同ネットワークを介した端末同士ではインターネット接続がない状態でも通話やメッセージ交換が可能です。
平時は「Shirahama free Wi-Fi」として無料開放されており、通信環境面でも先進地として知られています。

(3)顔認証で手ぶら旅行(事前登録必要)

白浜にサテライトオフィスがあるNECは、AIやIoTを活用した最先端の旅行スタイルの提供に貢献しています。

「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」と呼ばれるこちらのプログラムに参加すると、顔認証でテーマパークの入園、飲食店などでの手ぶら決済、宿泊施設でのキーレスドア解錠などが体験できます。顔認証が可能な施設は13施設です(2020年11月現在)。
参加には事前登録が必要で、スマートフォンからのみ申込可能です。

申込方法や利用できる施設の詳細はNECの「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」ページをご覧ください。

(4)仕事もできる宿泊施設

ワーケーションをする上で心配なのが、十分なワークができる施設かあるかどうかです。今回は、ワーキングスペースがある宿泊施設をご紹介します。

SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(白浜キーテラス ホテル シーモア)

画像:SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE ホームページ

ホテル シーモアは2018年3月に大規模なリニューアルを経て生まれ変わった、白浜の大型ホテルです。
オーシャンビューが一望できる立地のいいホテルで、1階エントランス横のベーカリーは地元民も多く訪れます。

注目すべきは、海に向かって足湯を楽しむ「インフィニティ足湯」と、館内にある「ビジネスルーム」。
宿泊者は誰でも利用できるので、足湯でリラックスした後ビジネスルームで集中して仕事ができます。

SEAMORE RESIDENCE(シーモア レジデンス)

画像:SEAMORE RESIDENCE ホームページ

2019年7月、ホテル シーモアのすぐ隣に2棟のレジデンスがオープンしました。お部屋は高級マンションのような佇まいで、共用キッチンで料理をすることも可能です。
隣のホテル シーモアの施設も利用可能なので、気分転換に足湯やビジネスルームでオンオフを切り替えるのもよいと思います。

ホテル シーモアのnote「大規模リニューアルした白浜の『HOTEL SEAMORE』が描く、これからの地方観光ホテルの未来」では、シーモア レジデンスはワーケーションの利用を狙っていると語られており、すでに企業と組んで年間利用も始まっているそうです。まさに「住むように滞在する」ことに適した施設です。

ゲストリビング Mu 南紀白浜

画像:ゲストリビング Mu 南紀白浜 ホームページ

「なにも無く、なにもある 南紀白浜でムゥとする時を。」というコンセプトの宿泊施設。南紀白浜空港から車で5分、JR白浜駅から車で10分、ビーチまで車で5分という好立地。館内の温泉も自由に利用できます。
4つの広々としたワーキングスペースがあり、その日の気分によって仕事する場所を選べます。

(5)豊富な観光資源

ワーケーションをする上で欠かせないのが、非日常的な時間や空間を過ごせる場所です。白浜町や近隣の市町村には豊かな自然があふれています。親子で楽しめる施設もあるので、親子ワーケーションにもぴったりです。

白良浜
サラサラの白砂と透明度の高い青いビーチで、毎年夏になると多くの観光客が訪れます。ハワイ州ホノルル市ワイキキビーチの姉妹浜で、白良浜も南国間溢れるビーチです。ダイビングやシュノーケルなどのマリンスポーツを楽しめます。

熊野古道
「紀伊半島の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている熊野古道。神仏習合の聖地「熊野三山」を巡礼するために開かれた道で、平安時代中頃から室町時代まで多くの参詣者がここを歩きました。
Airbnb 19 destinations to visit in 2019(Airbinb 世界で訪れたい観光地 2019年)で日本で唯一選出された、世界でも有名な観光地です。

注目すべきは、道普請(みちぶしん)という、一般人が道の修繕活動ができる点です。紀伊山地は雨量が多く、参詣道の土がしばしば流出するため、昔から参詣者が土を運んで道の修繕を行ってきました。
自らの手で世界遺産の保全ができる貴重な体験として、CSR活動としても注目を浴びています。

アドベンチャーワールド
遊園地とサファリパークの複合型施設。広大な敷地を有するサファリゾーンは見どころ満載で、パンダが特に有名です。日本でパンダを見れるのは上野動物園と和歌山のアドベンチャーワールドだけです。

飼育や繁殖が難しいパンダですが、アドベンチャーワールドはこれまで16頭の繁殖・育成を成功させました。アドベンチャーワールド生まれのパンダは白浜の名前にちなんで「浜家」と呼ばれています。

動物のエサやり体験やイルカショーなど、お子様も楽しめるイベントがたくさんあります。

おわりに

今回は、ワーケーションの聖地と呼ばれる和歌山県白浜町についてご紹介しました。
もともとリゾート地を活かしてIT企業の誘致を積極的に行っていたこと、豊富な自然観光資源があることがマッチして、ワーケーションと相性のいい土地になっていったと思われます。

新しい生き方、働き方のモデルとしてどのように発展していくのか、今後の白浜町の取り組みに注目が集まります。

参考資料
和歌山県のIT企業誘致の取組
計14社の企業誘致に成功した白浜町!テレワークとワーケーション促進で、目指すは白浜の“シラコンバレー”化
「ワーケーション」最先端の町に変身した和歌山・白浜に行ってみた
わかやまWorkation guide


小山 志織
和歌山県出身のフリーライター。「住むように旅をする」をモットーに、2020年7月〜12月まで九州を旅しながら執筆活動を続ける。noteで自身のワーケーション記やエッセイを綴っている。
Twitter:https://twitter.com/shiori_koyama
note:https://note.com/shiori_koyama

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