不登校でも つながり絶たないで 「五島子どもサミット」初開催

不登校や引きこもりを経験した若者や親が、体験や思いを語り合ったパネル討論=五島市三尾野1丁目、福江総合福祉保健センター

 「不登校って悪いこと?」。不登校や引きこもりに悩む子どもたちや親、市民らが共に考える「五島子どもサミット」が11月29日、五島市で初めて開催された。「学校に居場所がない」「先生が家に来るのが『取り立て』みたいで嫌」-。パネル討論で不登校経験者らは、当時は言えなかった思いを吐露。今も苦しむ当事者に向けて、「学校に行かなくてもいい。人とのつながりを絶たないでほしい」などと呼び掛けた。
 不登校の子や親らを支える同市の「フリースペースつくしんぼ」主催。パネリストの不登校経験者は、怜さん(20)、ジュンさん(18)、タツヤさん(18)、シンジさん(18)=いずれも仮名=の4人と、つくしんぼ副代表の花浦紀章さん(32)。会場には市民ら約80人が詰め掛けた。

■話したい時に
 花浦さんは小中学校時代に受けたいじめをきっかけに、高校から9年間、自宅に引きこもった。「学校自体や人と会うことすら嫌なのに、先生は家に来た。放っておいてくれと思った」と、当事者と学校の考え方の“ズレ”を指摘した。
 小規模校から大規模校への転校を機に、学校になじめなくなったジュンさんも「先生が家のドアをノックして名前を呼ぶのが『取り立て』に来られた感じ」。一方で時折、自ら「学校に行こうかな」と思える日もあったと明かし、学校には「話したい時に話せる」適度な距離感を求めた。
 怜さんは小学校の教諭から暴行を受けて人間不信に陥り、中学は不登校、高校も中退した。「自分は負けず嫌いで、殴られても泣きもせずサンドバッグになった」「先生は心から話を聞こうとしなかったので、相談しなかった。でも思うことが顔に出る子もいる。そういう子に目を向けて、話を聞いてあげてほしい」。現在、若者の就労支援などに取り組む五島若者サポートステーションを利用している。

■考えすぎない
 タツヤさんとシンジさんは、不登校経験者らを受け入れる県立五島南高の3年生。それぞれ持病があったり、教諭と気が合わなかったりして、中学に通わなくなった。それでも見守ってくれた親や友人が支えに。タツヤさんは「不登校はマイナスに捉えられるけれど、考えすぎない方がいい」、シンジさんは「自分の好きなことを真剣にやって、いつかは周りの人に感謝できればいい」と、不登校当事者にメッセージを送った。
 数年前から悩みを抱えた子どもたちの支援に取り組む花浦さんは「学生時代は家と学校だけの世界だけど世界はもっと広い。人とのつながりを絶たずにいてほしい」と語った。
 この他、不登校の息子2人を育てた同市の辻千穂子さん(64)による講演もあった。


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