車いす 贈り続け22年 「コロナ禍でも絶やさずバトンつなげたい」 「くわ焼の店たこ政」店長 石井俊助さん

11月25日の寄贈式で目録を手渡す石井俊助店長(右から2人目)=佐世保市社協

 長崎県佐世保市上京町の「くわ焼の店たこ政」は、1999年から毎年、市や市社会福祉協議会に車いすの寄贈を続けている。今年も11月25日、2台を市社協に贈った。店長の石井俊助さん(35)は「新型コロナウイルス禍でも寄贈を続けたかった」と思いを語る。

 俊助さんの父で同店代表の義矩さん(72)が99年、市が9月19日を「九十九島の日」に制定した記念にイベントを実施。売上金で車いすを購入し、市に贈り始めた。妻美沙緒さん(64)によると、義矩さんの母が県外の旅行先で車いすを借りた際、使いづらかった経験をした。それをきっかけに「使いやすい車いすを」と寄贈を決めたという。
 以降、毎年9月19日の店の売上金で車いすを購入するのが恒例になった。2002年からは市社協も対象に加え、毎年1~3台を贈呈。現在は市社協だけに贈っており、今年の2台を含め累計42台になった。
 寄贈を重ねるうち、車いすを必要とする人には十分行き渡ったのではないかと考えた時期もあったが、「『たこ政の名前が入った車いすに乗っていた人がいたよ』などの声を聞くと、続けなきゃなと思えた」と美沙緒さんは笑顔で話す。
 義矩さんは現役を退き、昨年から俊助さんが店を切り盛りしている。今年は新型コロナの影響で「たこ政」も打撃を受けた。苦しい中でも寄贈を続けたのは、これまで積み重ねてきたものを大切にしたいとの考えからだ。
 俊助さんは「昔からのいいものを絶やさないため、自分たち世代が頑張ってバトンをつなぎたい。店に来てくれるお客さんがいるから車いすを贈ることができている。お客さんに感謝です」と話した。

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