【社会人野球】若獅子賞はNPBへの登竜門? 直近では12人中7人がプロ入り、今年の受賞者は

ホンダ・朝山広憲【写真:荒川祐史】

若獅子賞を受賞した過去5年12選手のうち7選手がプロ入り

第91回都市対抗野球大会は、狭山市代表のホンダが決勝で東京都代表のNTT東日本を4-1で下し、11年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。コロナ禍にありながら今年も熱戦が繰り広げられた12日間。全日程終了後には個人賞の受賞者も発表され、今年も若獅子賞に期待の3選手が選ばれた。

若獅子賞は、大会で活躍した新人選手に贈られる賞。過去5年間で受賞した12選手のうち、7選手がドラフト会議での指名を勝ち取るなど、プロ入りへの登竜門ともいえる新人賞だ。今大会では、ホンダ・朝山広憲投手(法大)、三菱自動車倉敷オーシャンズ・廣畑敦也投手(帝京大)、NTT西日本・藤井健平外野手(東海大)の3選手が受賞した。

ルーキーながら決勝戦のマウンドを任され、8回3安打1失点の快投で決勝戦の勝利投手になったホンダ・朝山は、作新学院高で3年連続夏の甲子園に出場し、法大4年秋には4勝を挙げて最優秀防御率のタイトルも獲得した本格派右腕。最速149キロの直球に右打者の内角をえぐるシュート、鋭く落ちるスプリットを緻密に操り三振の山を築く。

朝山は初戦の大阪ガス戦で先発も、3回途中KO。試合後はホンダの主将・福島から「今までやってきたことを思い出せ」と声をかけられ、元巨人・木村龍治投手コーチのもとで入社以来取り組んできたフォームに原点回帰。重心をぶらさず「頭を残して投げるイメージ」を取り戻し、3回戦では7回13奪三振の快投で復活。中2日で立った決勝のマウンドでも、8回3安打1失点と先発の役割を果たし、チームの11年ぶりVの原動力となった。

若獅子賞を手にしても浮かれることはない。「来年、新人が入ってきて競争になる」と気を引き締め、「ホンダのエースといえば朝山と言ってもらえるように。プロ野球に行けるように結果を出していきたい」と来秋のドラフト会議での指名を目指し、さらなるレベルアップを誓った。

三菱自動車倉敷オーシャンズ・廣畑敦也【写真:荒川祐史】

廣畑は前回王者・JFE東日本に1失点完投、バースデー受賞となった「最高の誕生日プレゼント」

16年ぶりに本戦に出場した三菱自動車倉敷オーシャンズの新人・廣畑は開幕戦に先発。前回王者・JFE東日本を自慢の直球で押し、7安打を許しながらも要所で粘って9回1失点完投勝利。直球はそれまでの自己最速を更新する154キロを計測し、カーブとのコンビネーションも冴えた。王者を食った男として一気に名をあげると、2回戦は2番手で登場。チームの勝利とはならなかったが、3回1/3を無安打無四死球の完璧な救援を披露し、わずか2試合の登板ながら抜群のインパクトを残した。

この日23歳の誕生日を迎えた廣畑。仕事中に受賞を知らされ、倉敷から急いで東京ドームに駆けつけた。会見に登場すると、「最高の誕生日プレゼント」と笑顔をはじけさせ、「まさか。なんで自分がもらえたんだろうという気持ちは大きいけど、素直にうれしい」とはにかんだ。今大会での活躍には「LINEやツイッターでのメッセージなど、反響はありました。メディアの方にもよく取り上げていただいて……」と照れ笑いを浮かべ、「今年は注目される年になった。プロ野球選手になりたい気持ちがあって野球を続けているので、この先何年できるかはわからないが、チャンスがあるなら自分の実力を出したい」とプロ入りの目標を口にした。

ホンダの優勝で幕を閉じた第91回大会だが、選手たちはすでに次の戦いに向けた準備期間に入っている。アマチュア最高峰の舞台からプロの世界を目指す男たちの挑戦に要注目だ。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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