国際ロマンス詐欺を仕掛けられたのに5万円儲かった…被害女性の機転とは

見知らぬ外国人から突然連絡があり、恋愛関係に持ち込まれ、お金をだまし取られるという「国際ロマンス詐欺」。この詐欺に遭いかけながら、逆にお金が増えてしまったという女性がいます。

詐欺に遭っていながら、お金が増えてしまったとは、どういうことなのか? 最初はよくわからない話でしたが、経緯を聞き納得しました。彼女のとったある行動が、すんでのところで身を守ることにつながったのです。


詐欺に遭ったのにお金が増えた

「被害に遭ったわけではないので、警察に相談すべきかどうか悩んでいます」。こう話すのは関西に住む40代女性です。

「国際ロマンス詐欺という、外国人の異性に恋愛感情を抱かせられる手口に引っかかって、お金を払ったんですよね」と尋ねると、「はい、そうです。ですが、お金が増えてしまったんです」

相手は30代台湾人男性を名乗る

女性は婚活アプリを使って結婚相手を探していました。11月初旬、30代男性から「いいね」がつき、連絡を取り合うことになったそうです。すると男は「LINEで連絡しませんか?」と言ってきます。彼女は了承して、ここからメッセージのやりとりが始まりました。

相手は台湾人で、神奈川県に住んで広告デザインの仕事をしているといいます。最初のうちは自らの結婚観を語ってきました。

「結婚したら一緒にカナダかオーストラリアのゴールドコーストで過ごしたいね」
「そして、君には専業主婦になってほしいんだ。50歳までにリタイアできるだけのお金を投資で稼いで、その後は悠々自適に過ごそう!」
「君は美しい。ベイビー」
「自分をダーリンと呼んでいいよ」

愛の言葉を受けて、彼女もしだいに彼に好意を抱いていくようになります。

知り合って一週間で「結婚したい」

一週間ほどすると、男は「あなたと結婚したい」と言い出します。相手はアイドルとして歌っていてもおかしくないほどのイケメン男性です。彼女は「はい」と答えます。

すると、男性は「君が今の仕事をやめて、専業主婦でやっていけるように投資でお金を稼ごうよ」、「自分が投資で稼いでいるところがあるので、あなたにも教えてあげる」と提案してきました。

カーレースのカジノサイトに誘導された

そこで紹介されたのが、車の着順を当てるカーレースのカジノサイトでした。「ここへの出金は、仮想通貨でしなければならない」と彼から言われ、彼女は仮想通貨交換所に口座を開き、仮想通貨イーサ20万円分を購入します。

そして、サイトの口座へ送金してしまいました。その際、サイトのカスタマーセンターとLINEでつながり、身分証の写真を撮るように言われて送信しています。

彼に指示された番号の車に数回賭けると、その日は5万円ほどが儲かりました。サイト上でも、2400ドル(約25万円)となっていました。

次に、男は新たな指示をしてきました。「儲かった分を出金してください」。これは詐欺の常とう手段のひとつで、サイトのお金が見せ金でないことを信じさせるために、一端、本人にお金を手にさせるのです。

本当にお金が振り込まれた

おそらく、男は儲かった分の「5万円を出金」を指示したのでしょう。しかし、金額を指定してこないので、彼女が「25万円」の出金依頼をサイトにすると、翌週には本当にお金が振り込まれました。

すると、男から次のメッセージが届きました。「次は1000万円を投資してください。そうすれば、もっと儲かります」

しかしあまりの高額に、彼女は少し怖くなりました。有り金をはたいて投資に失敗すれば、生活さえもができなくなってしまう。彼への恋愛感情よりも、不安の方が大きくなったのです。

占いに駆け込んだ結果…

そこで彼女は、いつも占ってもらっている人へ相談し、「投資を続けた方がいいのか」を尋ねました。占ってもらうと、答えは「お金がリセットされる」というものでした。「お金なくなる」という結果に、彼女の不安はますます募ります。

さらに「彼は私のことを騙しているのでしょうか?」を尋ねると、占い師からは、「棘(トゲ)を意味する文字が出た」と言われました。これは「痛い目に合うことに繋がる」という意味だそうです。

彼女はこのまま相手とやり取りしていたら、騙されるかもしれないとの思いを深めました。そこで、このカーレースサイトについて調べてみました。

ネット上にそっくりの詐欺手口が!

ネット検索して目にしたのが、ちょうど私が書いた、アジア人による国際ロマンス詐欺の記事「出会ったアジア人に誘われて。1500万の仮想通貨の詐欺被害も!(2)新手のロマンス詐欺がやってきた!」でした。

アジア人と恋仲になり、投資をしようと誘われて、カーレースのギャンブルサイトに誘導させられる。そこで、お金を出させられて、仮想通貨で1000万円以上の被害に遭った人もいるという内容です。

「全く同じ手口ではないですか!」彼女は相手が詐欺師であることを確信して、相手の男をブロックしました。

そして、カーレースサイトのカスタマーセンターにも、この国際ロマンス詐欺の記事のURLを貼り付けて送りました。すると、カスタマーセンターも彼女のLINEからすぐに消えてしまいました。男とサイトはグルで、詐欺がバレたと足早に逃げたと思われます。

おかしいと思ったら取るべき行動は

おかしいと思ったら、すぐに誰かに相談してみることは大事です。彼女は女性ならではの「占い」という形で第三者に相談をしたのが、詐欺を防ぐきっかけになりました。

ただし、相手の悩みを逆に利用して悪巧みをする占い師もいます。そこで私は「ネット上の占い師のなかには、さらにお金を取る人もいるので、気をつけてくださいね」と言いました。

彼女は儲けた5万円は寄付したそうです。「今、考えれば、あまりにレスが早かったです。本当に私の文章を読んで送ってきているのだろうか?と思う時もありました」と、彼女は振り返りました。

卑猥な画像は送られることも

実はその通りで、詐欺の側では相手に送る文章はある程度、マニュアル化されており、過去に成功した文章のパターンで詐欺を働いてきます。

特に最近は、相手が心を許すと、バーチャルな形でのエッチをしようと、男性器の画像を送ってくることがあります。実際に、彼女のところにも動画の形で送り付けられました。会ったこともない異性の外国人がわいせつなトークをし始めたら、要注意です。

多くの被害者はお金をかなり取られてから、詐欺への注意喚起をみます。しかし、彼女のように「ちょっとおかしいな」と思った時点で誰かに相談して調べることで、身を守ることができます。

詐欺師は「現金を早く奪い、すばやく逃げる」ことをモットーとしています。こちらも、「思い立ったら、誰かに相談」のスピード感が大事になります。被害に遭うか遭わないかは時間との闘いでもあるのです。

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