「どうやったらできるか」

 先月、東京で開かれた体操の国際大会「友情と絆の大会」。閉会式の選手代表スピーチで、五輪男子個人総合2連覇中の内村航平選手が、静かに、力強く訴えた。「東京五輪はできないではなく、どうやったらできるかを皆さんで考えてほしい。やり方は必ずある。どうか、できないと思わないでほしい」と▲新型コロナの感染拡大に終わりは見えず、五輪やパラリンピックには否定的な意見がつきまとう。内村選手も批判を覚悟の上での発言だったと思う▲それでも、31歳の世界的レジェンドは「SNSで言っても意味がない」と公の場でアスリートの心の内を直接語り掛けた▲この発言は多くの選手たちを勇気づけた。女子代表の寺本明日香選手は「思っていても口には出せなかったことを、航平さんが言ってくれた」と感謝の言葉を口にした▲駅伝、ラグビー、サッカーなど、冬の全国高校大会の開催が決まった。観客の有無などに違いはあるが、まずは若者たちの輝ける場が少しでも保たれたことを素直に喜びたい▲その上で、これが高校最後の舞台となる3年生へひと言。ぜひ、今季一度も全国大会がなかった他競技の仲間たちの思いを忘れずに、本番へ臨んでもらいたい。「どうやったらできるか」を考え、実践してくれた方々への感謝とともに。(城)

© 株式会社長崎新聞社