小学校低学年向け「ScratchJr」でプログラミング教育を実践

小中学生向けのプログラミング道場「CoderDojo Kashiwa」を主催・運営する宮島衣瑛氏が、今年から始まっている小学校でのプログラミング教育に鋭く切り込んでいくこの企画。今回は、宮島氏が小学校の3年生と一緒に取り組んでいる ScratchJr を使ったプログラミング活動について紹介します。

小学校低学年の子どもたちとプログラミング

学習指導要領に例示されている中で、はじめてプログラミング教育が登場するのは、小学校5年生の正多角形の作図の単元です。そのせいか、プログラミング教育は高学年から始めるという印象があるようです。

しかし、プログラミング教育の手引にもあるように、学習指導要領に例示されていなくても、カリキュラム・マネジメントなどを通じて各学年・各教科で取り組んでいくことになっています。

今回は、私がある小学校の3年生と一緒に取り組んでいる ScratchJr を使ったプログラミング活動について紹介します。この活動自体は教科の内容に取り組んでいるわけではなく、手引で例示されている分類で言うところのC分類(プログラミングの楽しさを体験する取り組みや、プログラミング言語などの基礎について学習する取り組みなど)に含まれます。

この学校では、3年生からコンピューターや情報についての学習が始まります。はじめはインターネットやコンピューターなどの向き合い方(いわゆるデジタル・リテラシー)について体験的に学習します。子どもたちは、悪いことややってはいけないことはすでにある程度わかっていることが多いと思います。

デジタルツールを使う上でのルールは、法律や各サービスの利用規約を除くとほぼありません。親や教師が決めたルールに受動的に従うのではなく、子どもたちが自らマナーを考えられる能動的なユーザになってもらうことを目標にしています。このリテラシーの授業については、後日あらためてしっかりと紹介したいと思います。

デジタル・リテラシーの授業が終わると、いよいよプログラミングに入っていきます。ここで登場するのが ScratchJr です。(先生との事前打ち合わせで Scratch だと複雑すぎるかもしれないということになり、より低年齢の子どもを対象としている ScratchJr を選択しました。)

ScratchJr は「子どもたち(5歳~7歳)が自分自身で対話型の物語やゲームを作成できる、入門用のプログラミング言語」です。

ScratchJrを使った授業

ScratchJr の様子

画面を見てわかるとおり、ScratchJrのブロックや画面の説明に「言葉」は一切使われておらず、すべてイメージでわかるようにデザインされています。これは Scratch と比べたときの大きな特徴のひとつです。子どもたちは言葉の理解より先にブロックを試していくことではたらきを理解していきます。

たとえば、ScratchJrにはスプライト同士をまたいでメッセージを送ることができるブロックがあります。これを使えば、スプライト同士が会話をしているように見せたりできるのですが、メッセージを送るブロックと受け取るブロックは同じ色同士の必要があります。

メッセージを送るブロック

先日の授業で、ある子はこのブロックを発見し、スプライト同士が掛け合いをするプログラムをつくりました。しかし、すべてのメッセージを同じ色のブロックでつくってしまったため、何度も同じメッセージが繰り返し送られてしまうという問題が起きていました。

かなり悩んだ挙げ句私に相談してくれたので、下の矢印をクリックしてたくさんの色があることを確認し、この色にはどんな意味があるのかを考えてもらうことにしました。すると、すぐに色とメッセージの送り先が対応していることに気づき、あっという間に自分がつくりたかったプログラムを完成させることができました。

つくったプログラムを発表

今回の授業は ScratchJr を使ってオリジナル物語をつくることをゴールにして、全部で8時間ほど制作しています。子どもたちの作品を見ていると、皆それぞれたくさんの工夫を凝らしていることがよくわかります。私たち教師の側からの指示は4つの場面を使った物語をつくってほしいということだけで、ストーリーや登場人物などはすべて子どもたち自身が考えています。

もちろん中にはストーリー性がなくとりあえずたくさんのスプライトを出したり、適当な動きをさせる作品もあります。しかし、定期的に子どもたち同士で作品を見合う時間をつくることで、徐々に友だちの作品からインスパイアを受けおもしろいものに変化していきます。

つい先日、中間発表会を行いました。4人ごとの班をつくり、自分の作品のオススメポイントなどを自分の言葉で説明します。発表する人は

という3点について話し、聞いている人には

という2点をたくさん見つけようと声をかけました。このような活動を通して、自分のアイデアが煮詰まっていたりもう満足している子も、新しい視点で作品を見ることができると思います。

ここで教師が指摘するだけではあまり意味がないのかもしれません。子どもたち同士で相手の作品にフィードバックを返すことで、Creative Learning Spiral に沿って作品づくりに没頭できるのです。

今回 ScratchJr を初めて連続した授業で使いましたが、やはり子どもたちが自分ですすめていくことができる点がとても優れていると感じました。最終発表会まで、がんばってつくってほしいとおもいます。

これまでの【プログラミング教育のホントのところ】は

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