WRCモンツァ:トヨタ育成の勝田貴元、持ち前のスピードで“パワーステージ”制す

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加している勝田貴元は、12月3~6日の日程でイタリア・ミラノ近郊のモンツァ・サーキットで開催されたWRC世界ラリー選手権最終戦、第7戦モンツァにトヨタ・ヤリスWRCで参戦。総合20位で今シーズン最後のラリーを完走した。

 日本人WRCレギュラードライバーを目指し、今季はモンツァを含むWRC計5戦にWRカーのトヨタ・ヤリスWRCで参戦した勝田。その最後のイベントとなった『ラリー・モンツァ』は本来、伝統のモンツァ・サーキットが舞台となるターマック(舗装路)ラリーだが、初のWRC開催に合わせてコースが再編成され、土曜日のみサーキットを離れベルガモ北部の山岳道路でSSが行われる特殊なイベントとして実施された。

 また、土曜日のデイ3以外の3日間はサーキットが会場となるものの、路面は舗装されたメイントラックや旧オーバルコースに加えて未舗装のサービスロードなどがコースに組み込まれ、ターマック仕様のマシンでグラベル(未舗装路)を走行する難易度の高いラリーとなった。

 さらに週末は大雨や降雪に見舞われ、路面はさらに滑りやすくトリッキーに。勝田もその影響を受け、初日のSS1で濡れた芝生でグリップを失いコンクリートウォールにヒット。マシンにダメージを負いデイリタイアを喫してしまう。

 しかし、翌日ラリーに復帰した勝田は徐々にペースを上げ、デイ2最後のSS6ではステージ首位に0.2秒に迫るSS2番手タイムを記録する。さらに、翌土曜日は降雪や積雪の影響でクラッシュが相次ぐなか、スピンで軽度のダメージを負うも無事に完走を果たすと、サーキット内に戻って行われたSS13でふたたびステージ2番手タイムをマークしてみせた。
 
 迎えた最終日も好調を維持する勝田は、この日のオープニングとなったSS14で4番手タイムを記録すると、“パワーステージ”に設定された最終SS16では、雨で滑りやすい路面のなか2番手に1.4秒差をつける全体ベストタイムをマーク。WRC参戦後初となるステージ優勝を飾るとともにボーナスの5ポイントを獲得した。

「この週末はいろいろなことがあり、決して簡単ではありませんでした。しかし、木曜日に小さなミスをしてしまった後は、いい仕事ができたと思います」と勝田は週末のラリーを振りかえった。

「良いリザルトを残すチャンスを失ったので、金曜日の朝に自信を取り戻すのは難しかったです。しかし、ステージを重ねるごとに多くを学び、序盤の経験を生かすことができた結果、どんどん自信がついていきました」

勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)
2020年WRC最終戦モンツァに参戦した勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)

■ドライビングは「すでにトップレベル」

「土曜日は天気が大きく変わり、非常にトリッキーでした。路面は信じられないくらい滑りやすく、グリップレベルが分からない場所も多かったので、走り切れてとてもうれしかったです」と勝田。

「日曜日も依然路面コンディションはとても悪かったので、パワーステージでベストタイムを出すことができて本当に良かったです」

 最終順位は初日のデイリタイアが響き総合20位となったものの、着実に成長を見せた。それを自覚する若武者は、「自分はまだまだ上達していますし、成長も続いているので、来年はさらにスピードを高め、結果を残したいと思います」と豊富を語った。

 プログラムのインストラクターを務めるヤルッコ・ミエッティネンは、「木曜日のスタートではいきなり問題に直面したが、金曜日のステージではドライビングを改善し、その夜はWRC参戦後ベストといえるパフォーマンスを披露した。その走りは彼が精神的にも強くなっていることを示すものでもあった」と評価する。

「最終日にパワーステージを制して得た5ポイントは、彼の今シーズンの最後を飾るのにふさわしいものだ。よくやった!」

 2021年のプログラム内容は現時点で発表されていないが、ミエッティネンは勝田が来月のモンテカルロでふたたびラリーに参加することを示唆している。

「タカのドライビングスキルはすでにトップレベルだが、つねにトップタイムを出せるようになるためには、もう少し経験が必要だ」

「今週末を経験したことで、2021年のラリー・モンテカルロに少し楽な気持ちで臨むことができるだろう」

ラリー・モンツァのデイ3はサーキットを離れ山岳ステージでのラリーに。アクシデントが相次ぐなか勝田貴元は無事に完走を果たす。
2020年WRC最終戦モンツァに参戦した勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)

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