公民館、エジプトに「輸出」 カイロのギドさんが那覇「井戸端会議」で学んだこと

 沖縄県那覇市の繁多川公民館を運営するNPO「1万人井戸端会議」のプロジェクトでエジプトに整備した公民館が、12月末のオープンを目指して活発に活動している。10月にソフトオープン(プレオープン)して、公民館運営メンバー周辺の人々を対象に、サークル活動や起業支援に取り組んでいる。本格的にオープンした後は、より多くの人々に公民館を利用してもらう予定だ。

 繁多川公民館の講座で公民館の役割を学んだカイロ在住のモハメッド・アブデルミギードさん(通称ギドさん)(40)が、1万人井戸端会議と共にプロジェクトに取り組んでいる。文部科学省の「日本型教育の海外展開推進事業パイロット事業委託費」を活用している。

 今春のオープンを目指していたが、エジプトでの新型コロナウイルス感染拡大で遅れた。公民館はカイロ・ギザ地区の物件を借りて整備した。名前は「ター公民館」。「ター」はアラビア語で「学び」「協力」「つなぐ」を意味する単語の頭文字だという。

 公民館は大学などで日本語を学んだ人、教員、保護者ら約15人のボランティアメンバーで運営する。ソフトオープン後は、各メンバーが自身のワークショップなどを開きながら運営課題の発見と解決、公民館の周知に努めている。

 エジプトと日本の架け橋となる日本語・アラビア語の翻訳者を育成するサークルも始まり、約15人が参加している。ター公民館は若者の起業支援にも取り組むのが特徴で、助言に加え、資金の1割を出資している。これまでにカイロの文房具を地方に売るプロジェクトなどを支援した。

 ギドさんは「エジプトのNGOは寄付を集めてサービスを与えるが、私たちは(公民館を利用する)それぞれの人がプロデューサーとして活躍することを目指している」と説明。「相手を尊敬して協力し合うという文化をター公民館から周囲に広げたい」と話した。

 (伊佐尚記)

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