安倍前首相が朝日新聞と植村隆に対するFacebookの“デマ”投稿を説明なく削除! 抗議を受けこっそりなかったことに

削除された安倍晋三Facebook

「桜を見る会」前夜祭をめぐる嘘が完全にバレたにもかかわらず、国民に一言も説明せず逃げ切りを図ろうとしている安倍前首相。その姑息さにはいまさながら呆れ果てるが、しかし、このウソつき前総理が自分のついた大ウソをごまかそうとしているのは、この一件だけではない。

元朝日新聞記者の植村隆氏に対してFacebookで拡散した例のデマを、こっそり削除していたのだ。

安倍前首相が問題の投稿をしたのは、植村氏が「従軍慰安婦」問題に関する記事をめぐり、櫻井よしこ氏らを名誉毀損で訴えていた裁判で、最高裁が植村氏の請求を棄却した翌日11月20日のこと。安倍前首相はこの判決に大はしゃぎで、判決を報じた産経新聞のニュースを自身のツイッターとFacebookでシェアし拡散、さらにFacebookではこんなコメントを付けていた。

〈植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したと〉〈いう事ですね〉

しかし、本サイトでも報じたように(https://lite-ra.com/2020/11/post-5713.html)、このコメントは完全なデマだった。最高裁は植村氏の請求を棄却したが、植村氏の記事を「捏造」だなどと一言も言っておらず、一審=札幌地裁の判決を支持したにすぎない。

そして、札幌地裁もまた、植村氏の記事を「捏造」だと認定していない。長い判決文の隅から隅まで読んでも、「原告の記事は捏造であった」「原告は捏造記者である」、あるいは「原告は事実と異なることを知りながら記事を執筆した」などといった記述は一切出てこない。

裁判所が植村氏の請求を棄却したのは、櫻井氏の記事について「真実と信じる相当の理由があった」という真実相当性が認めたからにすぎなかった。名誉毀損裁判では表現の自由を尊重する立場から、それが真実でなかったとしても、真実だと信じてもやむをえない状況や理由、つまり「真実相当性」があれば、悪意はないとして違法性は阻却されることになっている(実際の裁判ではそういうふうには運用されていないが)。今回はそれが適用されたに過ぎず、櫻井氏の主張の真実性、つまり植村氏の記事が捏造であることが認定されたわけではないのだ。

いや、それどころか、一審の判決では、櫻井氏側の主張のほうが「真実であると認めることは困難」とされていた。

櫻井氏は植村氏を攻撃する記事で“金学順さんは継父によって人身売買されて慰安婦にさせられたのに、植村氏はそれを知りながら意図的に書かないことによって強制連行を印象付けようとした”という主張を展開していたのだが、判決文は〈「継父によって人身売買され慰安婦にさせられた」という事実が真実であると認めることは困難である〉と言及していたのだ。

にもかかわらず、安倍前首相は「請求棄却」という一点のみをもって、「植村記者の捏造が確定」などというまったくのデマを拡散。植村氏への個人攻撃を扇動したのである。

●安倍前首相のこっそり削除に植村氏は「通知も理由説明も一切ない」とコメント

しかし、問題はこの後だった。デマを拡散した安倍前首相に対して、植村氏サイドは抗議。投稿は「事実無根」「名誉毀損」であるとして、11月24日、記事の削除を求める内容証明を送った。

すると、安倍前首相は12月4日までに、上述のFacebookのコメントをこっそり削除してしまったのである。

これまで幾多の嘘が発覚しても開き直り、知らぬ存ぜぬを決め込むことを繰り返してきた安倍前首相。朝日新聞や野党についても、ネトウヨまる出しの誹謗中傷を多数発信・拡散してきたが、自らのFacebook投稿を削除するというのは異例といっていい。

この背景には「桜を見る会」問題で追い詰められているというのもあるだろうが、それ以上に、今回のデマは訴えられたら敗訴確実だからだろう。植村氏の代理人である神原元弁護士は本サイトの取材にこう話す。

「判決は植村氏の記事が捏造だとは一切認定していません。むしろ、裁判を通じて、植村氏の記事が捏造でなく、櫻井氏の記事のほうが真実でないことが明らかになっています。安倍氏の投稿は明らかに事実に反しており、名誉毀損にあたります。削除は当然ですし、こちらの削除要求に応じたということは、安倍前首相もそれを認めたということでしょう」

もっとも、安倍前首相は投稿を削除はしたが、なぜ削除をしたのか、Facebookで何の説明もしていない。植村氏サイドにも謝罪も説明も一切していない。

自分の歴史修正主義に都合のいいように事実を歪め、SNSでデマを拡散しながら、それがデマだと指摘され都合が悪くなると一転、攻撃相手に何の説明もなく、勝手に削除する。そのやり口は一国の首相経験者とは到底思えないものだ。

植村氏はこの削除を受けて「削除は間違いに気づいたからだと思うが、私への通知も理由説明も一切ない。安倍氏のフェイク情報は今も広範囲に拡散したままで、こっそり消せば免罪されるものではない」とコメント。今後も説明を求めていく姿勢を示したが、当然だろう。

むしろ、安倍前首相ら右派の歴史修正主義の嘘を広く世間に認識させるためにも、植村氏には、安倍前首相を相手に名誉毀損裁判を起こすことを強く提案したい。
(編集部)

© 株式会社ロストニュース