<大ヒット盤>高橋優『PERSONALITY』打ち込み、ロックサウンドも

 2010年のメジャー・デビュー後、通算7作目となるオリジナル・アルバム。コロナ禍で、よりメッセージの尖った作品に突き進んだのではと思いきや、むしろより自由に解き放たれた作品のように感じた。トレードマークの眼鏡を外したのもそのためだろうか。

 全15曲、冷酷な社会に「FUCK YOU」と刃向かいつつ頑張る男を描いた『八卦良』から、コロナ禍で太っていく様子を自堕落気味に歌った『フライドポテト』、更には都会のど真ん中に落ちている汚物をハードロック調に歌った『東京うんこ哀歌(エレジー)』といった奇特な楽曲まで幅広い。それでいて、「丸い場所で丸になれなくていい」と穏やかに励ます『アスファルトのワニ』や、小沢健二風のポップさで「両手ふさがらないくらいの荷物で会いに行く」と愛を語る『CLOSE CONTACT』など、親身になった言葉は本作にも多い。

 大きく変わった印象があるのは、むしろアレンジだろうか。二股をかけられた男を歌った『room』は打ち込みポップスで、嫌いなはずなのに惚れてしまう男を歌った『ABC』はノイジーなロックサウンドなど、1曲だけ聴いたらまるで別人のようだ。この辺りは、ファンの中でも意見が分かれそうだが、確かなのは、どんな曲調でも言葉を伝えられるほど歌手として成長しているということだ。

 ラストに収録で、ラジオDJを担当する心情を綴った『PERSONALITY』が、やはり最も彼らしいと感じた。深夜に一人で聴いていたら、孤独に寄り添ってくれそうな心温まるミディアム・バラードだ。本作を聴けば、人ひとりひとりを大事に思うことの大切さを学ぶはず。

(ワーナー・通常盤 3000円+税)=臼井孝

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