酒造りに適した風土が美味しさの秘訣?福井県勝山市の日本酒『一本義』とは

福井県といえば、自然が豊か、水がきれい…
つまり、
日本酒が美味しいんです!
そんな福井県を代表する日本酒の一つ、『一本義』。
社長のお話や酒蔵見学を通じて、一本義を育む福井県勝山市の風土や、なかなか見ることができない酒造りの裏側を調査してきました!

一本義久保本店が手がける多彩なお酒たちの紹介はこちら>>福井県を代表する日本酒『一本義』はどんなお酒?古酒や梅酒などのレアなお酒も!

一本義を育む勝山の風土

福井県の北部は越前と呼ばれますが、勝山市はその中でも奥越前、奥越(おくえつ)と呼ばれる山深い豪雪地帯です。

白山からもたらされる井戸水は日本酒に必要なミネラルが豊富

日本酒といえば水が命ですよね。
日本酒の原料の8割は水なので、水が美味しい場所に美味しい日本酒は存在します。

勝山も、標高2,702mの白山に降り積もった雪が、数年から、もしかしたら数百年以上もかけて勝山市の井戸に流れ込んでくる場所です。

日本酒の醗酵には、有益なミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロール、リン酸など)と、不要なミネラル(鉄分やマンガンなど)があるそうです。

一本義の井戸からくみ出される仕込み水はタンクに入れると青く見えるそうですが、これはミネラルが十分に入っている証拠。
ミネラルが紫外線を吸収することで青く見えるそうです。

すごいことに、そのミネラルは醗酵に必要なものだけで、要らないミネラルは全く入っていないという最高の条件が整っているのだとか。

奥越前の自然環境によって生まれる最良の水、これこそが一本義の味わいを構成する最大の秘密だったんですね!

酒米・五百万石の生産量日本一

また、お米も日本酒にとって大切な素材です。

酒米といえば五百万石や山田錦が有名ですが、五百万石の生産量第3位はなんと福井県!
県単位でなく地域単位(農協単位)で見れば、五百万石の生産量は勝山市が所属する農協が日本一となっています。

五百万石を使ったお酒はピュアで涼しげ、男らしい味わいと表現されることが多く、一本義もその特徴を活かした辛口ですっきりとした味わいが特徴です。

一本義では、その他にも華やかな味わいの山田錦、優しくみずみずしい味わいの越の雫といった酒米を、お酒の種類ごとに使い分けています。
特に越の雫は福井県の酒造メーカーしか購入することができない希少品種なので、越の雫を使っている伝心 凜一本義 辛爽系純米吟醸などを試してみてください。

一本義が造られている酒蔵を見学!

一本義の日本酒がどのように作られているのか、工程を詳しく教えていただきました。

米の洗浄、浸漬、蒸し

まずは、日本酒の原料となるお米を洗い、浸漬して蒸すところから見学。

経験だけを頼りに、お米の出来、仕込みの時季によって、洗う時間、浸漬する時間を秒単位・分単位で変えるそうです。

洗い、浸漬して蒸すところまでをこの機械で行う

洗われたお米は、蒸米機に送られて蒸されます。
日本酒にはたくさんのお米を使うので、お米を蒸す機械も大きい!
この機械で1時間に約1tものお米を蒸すことができるんだそうです。

一方、大吟醸などのハイクオリティなお酒は小容量での綿密な仕込をするため、セイロのような蒸器を使います。

麹室(こうじむろ)で米麹を作る

続いて、日本酒造りの心臓部ともいえる部屋、麹室へ。

日本酒造りには、「酵母」と「麹」という2つの微生物の力を使います。
アルコールをつくりだし、日本酒の香を生み出すのが「酵母」、酵母が働くためのエネルギー(ブドウ糖)を供給し、日本酒の味の決め手になるのが「麹」です。

麹室(こうじむろ)の中では、蒸したお米に黄麹菌を植え付けて、二昼夜かけて米麹をつくります。

この台そのものが秤になっている

麹室の内部には大きな台が。
この台の上で、麹を植え付けた蒸米をほぐしたり、広げたり、集めたりという作業を繰り返します。

二昼夜にわたる米麹の育成は、微妙な温度と湿度のコントロールの繰り返し。
部屋に運び込まれた蒸米の重量と水分含有量、それがどのように変わっていくかを重量計算で確認しながら、その生育状態を「味、香り、手触り、見た目」など、五感を駆使して判断しているんだとか。

理想とする日本酒の味にするための麹をつくり上げるには、長年の経験と観察力が必要。
お酒造りをしている職人さんって本当にすごいと感動しきりでした。

酒母室(しゅぼしつ)で酵母を培養する

麹室を出て、続いては酒母室へ!

ここは、お酒造りに必要なもう一つの微生物、「酵母」を培養する部屋です。

酒母(しゅぼ)とは文字通りお酒のもととなるもので、酛(もと)とも表現されます。

ここで培養された酵母が、前述した「麹」がつくるブドウ糖を栄養分にして、アルコールを生み出すのです。

仕込み・発酵

酵母、麹、蒸米、すべてが出来たら、それを仕込み水と共に醗酵タンクに入れて、いよいよ酒仕込が始まります。

このタンク中で、酵母が麹のつくったブドウ糖を食べて(分解して)、アルコール醗酵が行われています。

一般的なもので20日、高級酒は低温環境の中で30日以上かけて醗酵をさせる

このタンク内の醗酵中の液体物を醪(もろみ)といいます。
20~30日かけて醪の醗酵が終わったら、搾って酒と酒粕に分ければ新酒の誕生です。

搾り

日本酒の搾り方には、

  • 一般的な自動圧搾機を使うやり方
  • 昔ながらの、酒袋に醪を入れ、槽の中で重ねて優しく搾る「槽搾り(ふなしぼり)」
  • 醪を入れた酒袋を吊るして、圧力をかけずに自然に落ちる滴だけを集める、とても贅沢な「袋吊り」

などの方法があります。

一本義では、商品のコンセプトによって3種類の搾り方を使い分けています。

これは、槽搾りに使用する槽。この中に醪が10ℓほど入る袋を積み重ねて搾ります。

なんとこの装置は、設計図から一本義の社員さんが手作りしたものだそうです!

濾過・熟成

こうして搾られた原酒は、濾過を経たら貯蔵タンクに送られます。

原酒が熟成される貯蔵タンクの外側には、マイナス7℃の不凍液が走るパイプラインがつながれていて、タンク自体を凍らせているんです!

貯蔵されているお酒はマイナス2℃程度にキープされながら、氷温熟成(お酒自体が凍らない温度で熟成)されています。

熟成しすぎることによる香味の劣化を防ぎつつ、味わいのまろみだけを出すために、こうした熟成方法がとられています。

瓶詰め

最後は瓶詰め。
一本義では、瓶詰めの部屋はまるで工場のようになっていて、徹底した衛生管理が行われていました。

たった一つの異物混入でも大問題なので、とてもデリケートに気を使っているとおっしゃっていました。

私たちの手元に日本酒が届くまでにはここまでの手間がかかっているんですね。
いつもは何気なく飲んでいた日本酒ですが、これからはもっと心して飲まないと、という気持ちになりました。

酒蔵見学は通常4月~8月のみの事前予約制なので、見学希望の方は事前のお問い合わせをしてください。

直営アンテナショップ『勝山酒舗』

蔵の前には、一本義の全商品はもちろん、グッズなども購入できる直営アンテナショップ『勝山酒舗』が。
こちらでお土産を買うことも可能です。

一本義久保本店社長と杜氏(とうじ・醸造責任者)さんのおすすめの日本酒は以下でご紹介しています。

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