コンパクトハッチとSUV、どっちが買い!? 期待の最新フレンチ兄弟、プジョー 新型208と新型2008を比べてみた!

2020年12月7日(月)に発表された日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)で、プジョーブランド初となるインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたコンパクトカー「プジョー 208」。この208にはコンパクトSUVの兄弟車「2008」がある。どちらも価格は200万円台からと、輸入車としては手ごろなプライスだ。話題のフレンチモデル2台を試乗し徹底比較する!

プジョー 新型208&2008

期待のコンパクトスポーツとコンパクトSUVが日本上陸

この夏に日本上陸を果たした2代目プジョー208は、現行508に通じるインパクト抜群のデザインを纏い、一気に輸入コンパクトカーの主役に躍り出た感がある。プジョーのコンパクトカーは、1980〜90年代に販売され、WRCでも大活躍した205の時代から日本市場でも熱心なファンが存在し、「スポーティなフレンチコンパクト」の代名詞となっている。

一方、この秋に日本市場へ導入された新型プジョー2008は、新型208と同様にPSAの新世代コンパクトカー用プラットフォーム「CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)」を採用したコンパクトSUV。こちらもアグレッシブなデザインに仕立てられており、世界的に盛り上がっているコンパクトSUV人気の中、大きな成功が期待されているモデルである。

どちらもピュアEVのe-208とe-2008も用意されているが、今回はコンベンショナルなガソリン車同士でその実力やキャラクターの違いを比べてみた。

スポーティな走りを存分に楽しめる仕様の新型208

サイズ的にはVW ポロとちょうど同じくらい

新型208は、全長4095mm、全幅1745mm、全高1445mm(GT Lineは1465mm)のBセグメント・ハッチバック。先代と比較すると80mm長く、5mm幅広く、30mmルーフが低くなっている。ホイールベースは2540mmで、先代とほぼ同じだ。サイズ的にはVW ポロとちょうど同じくらいである。

さらにGT Lineでは、フルLEDヘッドライトやブラックのホイールアーチ、専用フロントグリル、クロームエキゾーストエンドなど、エクステリアがスポーティに仕立てられている事に加え、サポート性に優れたスポーツシートや専用デザインのステアリングホイールも備わり、スポーティな走りを存分に楽しめる仕様となっているのが嬉しい。

抜群にスポーティな走り

パワーユニットは、最高出力100PS/5500rpm、最大トルク205Nm/1750rpmの1.2リッター直3直噴DOHCターボを搭載し、トランスミッションは8速ATが組み合わされる。本国にはより高性能なガソリンエンジンや、ディーゼルエンジン、5速および6速のMTも用意されているが、日本仕様は1.2リッター3気筒ターボ+8速ATのみ。駆動方式はCMPが4WDに対応していないので前輪駆動だ。

0~100km/h加速は10.8秒(本国データ)なので、絶対的な速さは特筆するほどではないが、走りは抜群にスポーティだ。今回のテスト車である上級グレードの208 GT Lineは、205/45R17のミシュラン・プライマシー4を履き、フロントがマクファーソンストラット式、リアはトーションビーム式の足回りは、それなりに引き締まっていて、ダイレクト感のある俊敏なハンドリングが楽しめるのだ。ドライビングポジションはスポーティカーらしい低い姿勢で、スポーツモードを選んでシフトパドルによるマニュアル変速を駆使すれば、積極的にアクセル操作でヨーをコントロールするような走りも可能だ。

快適性を重視なら中間グレードがおすすめ

乗り心地はフラットで静粛性も悪くないが、路面からの強い入力には、そこそこ角のある突き上げを感じる事がある。より快適性を重視するなら、スプリングやダンパーのセッティングは同じだが、16インチタイヤを装着した中間グレードのアリュールを選んだ方が良いだろう。

プジョー 新型2008

新型2008、ライバルはVW T-Cross

新型2008は、全長4305mm、全幅1770mm、全高1550mmと、当然ながらひとまわり大きい。特に全長は新型208より210mm長く、2610mmのホイールベースも208より70mm長くなっている。競合するVW T-Crossより低く長いプロポーションだ。

新型208より高スペックな1.2リッターターボ

パワートレインは、こちらも本国にはより高性能なガソリンエンジンやディーゼルエンジン、6速MTもラインアップされているが、日本仕様は新型208と同様に1.2リッター直3直噴DOHCターボ+8速ATに統一されている。また新型2008の1.2リッターターボは、最高出力130PS/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpmと、新型208より高スペックになっている。駆動方式はこちらも前輪駆動だ。

サスペンション形式は新型208と同じく、フロントがマクファーソンストラット式でリアはトーションビーム式。テスト車の2008 GT Lineは、215/60R17のミシュラン・プライマシー4を装着。新型208とは扁平率が異なっている。

プジョーならではの「ネコ足」感

走りはというと、SUVとしてはかなり軽快だ。車両重量が1270kgと、新型208より100kg重いが、0~100km/h加速は9.1秒(本国データ)と新型208を凌駕するだけあり、力不足は全く感じない。コーナーではそれなりにロールするが、ハンドリングもSUVとしてはかなり俊敏な部類に入るだろう。また208 GT Lineは比較的硬質な乗り味だが、2008 GT Lineの足回りはSUVらしく比較的ソフトで良くストロークするので、むしろこちらの方がプジョーならではの「ネコ足」感が味わえる。

快適性もなかなかのもの。ホイールベースが長い事もあって、足回りがソフトでもフラット感は高く、フランス車らしいしっとりとした乗り心地が味わえる。静粛性も十分に高く、長距離ドライブでも疲労感は少ないだろう。

プジョー 新型208&2008

スポーティな走りなら新型208、快適性・実用面では新型2008

ドライバー目線で見た場合では、積極的にスポーティな走りを楽しみたいなら、新型208を選ぶべきだ。重たいバッテリーの搭載を前提に開発されたCMPは、強靱なボディを実現している。それだけにスポーティな走りにも全く弱さを見せないのだ。動的質感の点では、現時点で世界トップレベルにあると言って良いだろう。

一方、快適性と実用性の面では新型2008に軍配が上がる。ホイールベースと全長が長く、ドライビングポジションも比較的アップライトなので、室内空間、特にリアパッセンジャースペースは身長175cmの筆者が座っても膝の前に拳が2個入るほどの余裕がある。またラゲッジ容量も通常時で434リットル、60:40分割可倒式のリアシートを倒せば、1467リットルものフラットな荷室空間が現れる。テールゲートの開口部形状も良く、使い勝手はかなり良い。

一方、新型208の後席は、筆者が一応問題無く座れるレベルで、広々としているとは言い難い。ラゲッジも先代より拡大しているが、通常時で285リットル、60:40分割可倒式のリアシートを倒しても1076リットルの容量だ。またフルラゲッジ状態のフロアもフラットにはならず、テールゲートの開口部形状も2008ほど良くはない。後席とラゲッジの使用頻度が高い人は、自ずと2008を選ぶことになる。

どちらを選んでも後悔することはない

このように新型208と新型2008は、基本メカニズムが同じ2台だが、キャラクターにはかなりの違いがある。車両価格(消費税込み)は208 GT Lineが293万円、2008 GT Lineは338万円と、45万円の価格差だ。新型208はスポーティな走りと個性的なデザインが魅力のスペシャリティカー、新型2008は高い快適性と優れた使い勝手を備えたスタイリッシュなSUVといった感じだが、どちらを選んでも後悔することはないだろう。とはいえ、現在のコンパクトSUV人気を考慮すると、リセールバリューの点で2008を選んだ方が良いかもしれない。

[筆者:竹花 寿実]

プジョー 新型208 GT Line 主要諸元(スペック)

ボディサイズ:全長4095mm×全幅1745mm×全高1445mm/ホイールベース:2540mm/車重:1170kg/駆動方式:FF(前輪駆動)/エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ/最高出力:100PS(74kW)/5500rpm/最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/1750rpm/トランスミッション:8段AT/タイヤ:(前)205/45R17/(後)205/45R17(ミシュラン プライマシー4)/燃費消費率:17.0km/L(WLTCモード)/19.5km

プジョー 新型2008 GT Line 主要諸元(スペック)

ボディサイズ:全長4305×全幅1770×全高1550mm/ホイールベース:2610mm/車重:1270kg/駆動方式:FF(前輪駆動)/エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ/最高出力:130PS(96kW)/5500rpm/最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm/トランスミッション:8段AT/タイヤ:(前)215/60R17 96H/(後)215/60R17(ミシュラン プライマシー4)/燃費消費率:17.1km/リッター(WLTCモード)

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