【F1第16戦無線レビュー(2)】まさかのタイヤ交換ミスにボッタスも混乱「どっちのタイヤが装着されている?」

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 バーレーン・インターナショナル・サーキットの外周コースを使って開催されたF1第16戦サクヒールGP。メルセデスがジョージ・ラッセルとバルテリ・ボッタスによる1-2体制を築いままレース中盤を迎えたが、後半のタイヤ交換ではまさかのミスが発生。当時の状況を無線とともに振り返る

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 後方とのギャップを着実に広げているメルセデスは、コース上でのポジションを優先して、ピットストップによるリスクを冒さず、1ストップ作戦に切り替えてきた。

(36周目)
ジョージ・ラッセル:タイヤは大丈夫

 38周目、メルセデス勢の約20秒後方では3番手のランス・ストロール(レーシングポイント)に4番手のエステバン・オコン(ルノー)が追いついてきた。

ルノー:そろそろ、ストロールにプレッシャーをかけようか

2020年F1第16戦サクヒールGP エステバン・オコン(ルノー)

 メルセデスはボッタスに対して、ピットストップが近くなってきたことを伝える。

メルセデス:あと5周

 同じタイミングで、ラッセルがピットへ無線を送る。

ラッセル:フロントタイヤが少しタレてきた

 メルセデス同様、1ストップ作戦を採り、ピットインせずにソフトタイヤで粘っていたストロールがタイヤの不調を訴え始める。

ストロール:タイヤが少しずつ落ちてきた

 42周目にストロールがピットインするが、ミディアムタイヤを履くメルセデス勢はまだ入らない。

メルセデス:もう少し、ピットインのタイミングを遅らせる。ピットアウトで渋滞につかまらないようにしたい
ラッセル:OK

 45周目、メルセデスからラッセルへピットインの合図が。

メルセデス:ピットインだから、プッシュしていいよ

 しかし、ピットアウト直後にラッセルがパワーユニットの不調を訴える。

ラッセル:ノーパワー
メルセデス:HPPをデフォルト35にして

 一方、ボッタスはステイアウトしたまま。

2020年F1第16戦サクヒールGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)

メルセデス:(オーバーカットするには、ラッセルに対して)4秒足りない

 59周目、最終コーナーでジャック・エイトケン(ウイリアムズ)がクラッシュ。もぎ取られたフロントウイングがコース上に残され、まずバーチャル・セーフティカー(VSC)が出る。その直後の62周目にセーフティーカーが導入された。このときラップリーダーのラッセルは最終コーナーを通過していたため、メルセデスは緊急ピットインをラッセルに命じる。

メルセデス:セーフティーカー、セーフティーカー
ラッセル:ステイアウトするの?
メルセデス:BOX、BOX、BOX

このときラッセルはセーフティーカーラインの直前にいた。このラインを超えると、もうピットインはできない。そこでもう一度、確認する。

ラッセル:ステイアウトなの?
メルセデス:BOX、BOX、BOX

 その約4秒後方にいたボッタスにも無線が飛ぶ。

メルセデス:BOX、BOX、BOX。ジョージとの差は4.2秒だ。いま5秒になった。時間は十分ある。

 しかし、メルセデスは無線システムの不調から、ふたりのタイヤが正しく準備されておらず、タイヤ交換で大混乱。ラッセルは間違ったタイヤを履き、ボッタスは一度履いたタイヤを取り外して、それまで使用していたタイヤに戻してコースに復帰させた。ピットアウトしたボッタスは、ピットレーン走行中にエンジニアに確認の無線を入れる。

メルセデス:ブレーキに気をつけろ
ボッタス:このタイヤはなんだ?
メルセデス:ハードタイヤに戻した。いままで履いていたヤツだ。だから、ピットアウトしたらセーフティーカーラインまでプッシュしてくれ

 その後、1コーナーを通過した後、ボッタスはもう一度、チームに確認の無線を入れる。

ボッタス:もう一度、言ってくれ。どっちのタイヤが装着されている?
メルセデス:……バルテリ、ハードタイヤが装着されていると思うんだ。いままで使用していたヤツだ
ボッタス:どうして?
メルセデス:その件については後で話し合おう
ボッタス:なんじゃ、そりゃ?!

 ラッセルはトップでコースに復帰したが、27.4秒もタイヤ交換に時間を要したボッタスは5番手に後退。しかし、メルセデスの混乱はこれで終わりではなかった。

2020年F1第16戦サクヒールGP 決勝レース62周目、メルセデスはジョージ・ラッセルとバルテリ・ボッタスの同時ピットインを行った