音響とたたずまいは維持 神奈川県立音楽堂を改修へ

 神奈川県は築60年以上経過している県立音楽堂(横浜市西区紅葉ケ丘)の改修に着手する。2019年ラグビーワールドカップ(W杯)と20年東京五輪・パラリンピックに伴う外国人客などの増加をにらみ、評価の高い音響は維持しつつ、安全に使えるよう整備する。16年度一般会計当初予算案に舞台設備や建物改修の実施設計費8850万円を計上した。

 県立音楽堂は、モダニズム建築の旗手といわれた世界的建築家、前川國男の設計。公共施設としては日本最古の本格的な音楽ホールとされる。08〜09年度に耐震補強が施されたものの、雨漏りや外壁の劣化が進んでいた。このため舞台設備の更新、防水対策や外壁、空調や電気設備などの建物改修に取り組む。

 音楽堂は木材を多用した設計で、無駄な響きがなく音の良さがストレートに伝わるため、クラシック界や建築関係者などから高い評価を得ている。こうした音の味わいやたたずまいは、改修でも維持する。

 当初予算案には建物改修の実施設計費として8190万円、舞台設備の実施設計費に660万円を計上。16年度に実施設計を行い、主に18年度に休館して工事に入る。県は外国人旅行客などを対象に、県内の文化コンテンツの強化や文化を楽しむ機運を醸成する方針を示しており、ラグビーW杯の開催に間に合わせたい考えだ。

 指定管理者の立場で運営に当たる神奈川芸術文化財団・伊藤由貴子館長は「世界有数の音響や建築的な意義など建物全体の価値が評価されたのだと思う。アマチュアも含め多くの県民が集う県の宝として永続する見通しが立ち喜ばしい」と話している。

 このほか、13〜14年度に耐震工事などの大規模改修を行った県民ホール(横浜市中区山下町)の舞台、電気設備改修関連費も計上した。工事期間が音楽堂となるべく重ならないよう、17年度を中心に休館、工事を行う方針。

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