TJ手術で復活は3年後も… 鷹育成ドラ1佐藤のプロ入りを決断させた球団の配慮

新入団選手発表会見に臨んだ佐藤宏樹【写真:福谷佑介】

昨年4月に神経移行及びクリーニング手術、11月にはトミー・ジョン手術

ソフトバンクは10日、本拠地PayPayドームに隣接する「BOSS E・ZO FUKUOKA」内にある「よしもと福岡 大和証券/CONNECT劇場」で新入団選手発表会見を行った。ドラフトで指名された支配下5人、育成8人がお披露目され、各選手の背番号も決まった。

育成1巡目で指名を受けたのが慶大の佐藤宏樹投手だ。最速151キロの真っ直ぐを武器とする左腕で、順調にいけば、ドラフト上位候補となる可能性もあったが、育成指名に。そこには左肘の怪我が影響していた。

秋田の大館鳳鳴高から慶大に進み、1年生からリーグ戦に登板。秋には9試合に先発して3勝0敗、防御率1.03をマークした。3年時に最速151キロをマークしたが、左肘を故障。昨年4月に左肘の神経移行及びクリーニング手術を受けた。さらにドラフトの2週間前には左肘のトミー・ジョン手術を行った。

トミー・ジョン手術は全治まで1年前後を要するとされており、来季中に復帰できるかは微妙なところ。プロ入りしても1年間はほぼ投げられない状況になる中で、育成選手としての指名でプロ入りを決めた。決断に至った背景を佐藤が語った。

ドラフト前に各球団のスカウトと、指名候補者が面談を行うことが多々ある。その中でソフトバンクの担当スカウトである山本省吾スカウトらからの言葉が背中を押してくれたという。

「ホークスはどこよりも復帰の具体的なプランを示してくれた」

「もともと浪人すると言っていて、育成でプロにいくとは思ってなかった。球団の方と話した中で、このまま支配下で取るのは難しいと言われていました。その中でホークスさんはどこよりも復帰のメドというか、具体的なプランを示してくれた。そういうものを出してくれたのはホークスしかありませんでした。頑張ろうと思いました」

トミー・ジョン手術を受け、復帰まで1年以上かかる佐藤の状態。そこを十分に理解し、ソフトバンクはリハビリプラン、復帰までの道のりを示したという。1年目の2021年はじっくりとリハビリと体作りに充てる。

トミー・ジョン手術は仮に投げられるようになっても、再建した肘の靭帯が体に馴染むまでにさらに時間がかかると言われる。そのため、2022年は靭帯を馴染ませる期間と考え、本格的な復帰は2023年を見据えるものだという。入団する選手に不安を感じさせず、焦らせることなくしっかりと復帰までの道筋を歩ませようという配慮と言える。

この復帰へのプランを示してくれたことによって、佐藤は育成指名でのプロ入りを決心した。手術を受けてから2か月ほどが経った現在は肘の可動域はほぼ戻った。通常は3か月ほどかかるというが、それよりも早くリハビリは進んでいるという。

「育成の選手といえば、大竹(耕太郎)さん。1年生の時の4年生で、身近な選手が育成から這い上がって活躍している。一緒にやっている選手がという親近感はあった。自分にもチャンスがあると希望を持たせてくれました」と語る佐藤。復活までは2年から3年はかかる。それでもホークスが指名に踏み切ったのは、その潜在能力の高さがあるから。トミー・ジョン手術を乗り越え、復活を遂げる姿を待ちたい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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