最終戦を待たずチャンピオン決定の可能性も【スーパー耐久 第5戦オートポリスプレビュー】

 2020年シーズンのピレリスーパー耐久シリーズも12月13〜14日に行われる第5戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』で年内最後のレースを迎えることとなった。

 最高峰ST-Xクラスは888号車 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3が第4戦終了時点でもランキングトップを守っており、第5戦で優勝すれば2021年1月に鈴鹿サーキットで開催される最終戦を待たずシリーズタイトルを手にする状況だ。第5戦の公式予選を翌日に控え、ST-Xクラスの優勝争い、そして2020年シーズンのタイトル争いを探った。

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、9月5日〜6日の『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』で開幕を迎えた2020年シーズンのスーパー耐久シリーズは、全6戦中の上位5戦分のポイントでシリーズタイトルを決める有効ポイント制で競われる。

 第4戦もてぎ終了時点の総獲得ポイント、そして現時点での有効ポイントは以下の通りだ。

●ST-Xクラス ポイントランキング 第4戦もてぎ終了時点(編集部集計)

No. POS. Car TOTAL 有効

888 1 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3 90 90

81 2 DAISHIN GT3 GT-R 64.5 64.5

31 3 DENSO LEXUS RC F GT3 67 57

9 4 MP Racing GT-R 65 53

777 5 D’station Vantage GT3 49 47

16 6 Porsche 911 GT3R 20 20

 2020年シーズンの残り2戦はいずれも5時間レースとなるため、1大会で獲得できる最大ポイントは32ポイント(決勝1位:30ポイント+各クラスのポールポジション:2ポイント)だ。

 第5戦で888号車が優勝した場合、888号車の有効ポイントは120ポイントとなる。有効ポイントで2位につける81号車が第5戦を2位でチェッカーを受けたとしても39ポイント差でタイトルを獲得する。

 つまり、第5戦で888号車が優勝すれば、ライバルの順位に関わらず、888号車 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3が最終戦を待たずシリーズチャンピオンに輝くということだ。

 このような状況で、有効ポイントで2位につける81号車 DAISHIN GT3 GT-Rの星野一樹は「今回は絶対に勝ちに来ています」と意気込みを語る。

「888号車はST-Xクラスの参戦台数が5台以下の、ウエイトがあまり加算されないときに優勝しているので、いいときに勝てているなというイメージはありますね。でも、今の差を残り2戦で逆転できればと思っています。やれるだけのことはやりたいので、オートポリスでは優勝以外考えていないですね」

 予選と決勝が行われる週末は最高気温でも15〜14度と非常に寒いコンディションとなる。予選、そして決勝の結果を左右しかねないタイヤのウォームアップに関しては「厳しいですけど、長年の経験が活きてくるのかなと。そして、ニッサンGT-RニスモGT3は発熱性しっかりしているので、そこはアドバンテージだと思っています」と語った。

■「タイトル獲得がかかっていてもスタンスは変えない」と根本悠生

 総獲得ポイントで2位、有効ポイントでは3位につける31号車 DENSO LEXUS RC F GT3の嵯峨宏紀は「正直、クルマの素のスピードだけでいうと僕らと888号車は手も足も出ないくらい差があると感じています。第1戦の富士24時間を2位で終えて大量ポイントを手にし、その後のレースでリタイアもなく、ライバルが脱落するなか上位でフィニッシュというパターンが続いて。結果的にライバル勢とポイント差が拮抗しているのですが、スピードだけで言えば僕らのクルマは5台中5台目です」と吐露する。

「何事もなければチャンピオンは厳しいだろうなとは思っています。ただ、勝つ気もないのにグリッドにクルマを並べる人はいないので(苦笑)。少しでも可能性があるならそこは追求していきたいですね」

「もちろん、現実的にはかなり厳しいということも理解しています。やれる範囲で少しづつ改善はしていますけど、まだまだこのクルマについて勉強しなければいけないところが多いというのがST-Xクラス1年目の印象です」と、今年から投入したレクサスRC F GT3のポテンシャルを引き出すために苦労を重ねているようだ。

 そんなレクサスRC F GT3だが、第4戦もてぎを除いては大きなトラブルに見舞われていないことを忘れてはいけない。

「第4戦で電気系のトラブルはありましたけど、基本的にはトラブルがほぼありません。そこはレクサス品質なのかなと。耐久レースを戦う上ではそこは強みかなと思います」と嵯峨は語った。

 一方、タイトルに手をかける888号車 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3の根本悠生は「僕らは自分たちができるベストを尽くすだけです。自分たちのベストを尽くした結果、それが相手より速いのか、遅いのかというものだと思っています」

「シリーズタイトルを獲るために特別何かを変えるというよりは、自分たちが1秒でも速く走れるためにできることをしっかりやって、その結果勝てたらいい、という感じです」とデビューレースとなった富士24時間レースから続く、チームのスタンス通りに仕事を進めるだけだと話した。

「セットアップもタイトルがかかっているからとアグレッシブな方向にすることもなく、一貫性があり、動きの予想がつきやすい、ジェントルマンに優しいクルマを作っています。なので、表彰台に乗れたら万々歳ですね」

 低気温、低路温でのタイヤのウォームアップに関しては「そんなに困ってはいません。個人的にはイタリアで実施したナイトセッションの練習で気温10度以下を経験しています。ここでもロングスティント中のタイヤの冷えとかは気にしていません。ただ、色々と対策をして、ドライバー3人がさらに安心感を持って走れるような状態を作っている感じです」と語った。

 ピレリスーパー耐久シリーズ第5戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』は12月12日9時40分から公式予選が行われ、12月13日10時45分から5時間の決勝レースが開催される。

 前例のない12月中旬の開催となるオートポリス戦。過去のデータが参照できない未知の領域での戦いを強いられるなか、ランキングトップの888号車 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3がタイトルを手にするのか、それとも最終戦まで持ち越されるのか。予選から目が離せない展開となりそうだ。

DAISHIN GT3 GT-R(大八木信行/星野一樹/大八木龍一郎/藤波清斗)
DENSO LEXUS RC F GT3(永井秀貴/嵯峨宏紀/小高一斗/永井宏明)
第5戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』金曜日の専有走行の様子

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