菅首相の「ニコ生」は安倍前首相よりヒドい! コロナ感染深刻化のなかヘラヘラ「ガースーです」、GoTo中止も「まだ考えてません」

ニコ生に出演する菅首相

国民を舐めきっているとしか言いようがない。昨日11日、菅義偉首相が生出演したニコニコ生放送の特別番組「菅義偉総理が国民の質問に答える生放送」の件だ。

まず、平日の15時に生放送して、一体どれだけの国民がその時間帯に見られるのか。しかも、YouTubeでのライブならまだしも、もはやオワコンのニコニコ生放送って……。安倍晋三・前首相も緊急事態宣言下の5月6日に山中伸弥氏とともにニコ生の番組に生出演したが、このときはYahoo!JAPANの特設ページでも放送され、休日の20時からという多くの人が視聴しやすい時間帯だった。菅首相の今回の番組は、そうした配慮がまるでなかったのだ。

その上、番組タイトルは「国民の質問に答える」となっているが、首相官邸のTwitterアカウントでも番組の告知はおこなわれず、菅首相のTwitterアカウントでも告知がおこなわれたのは番組開始の4分前である14時56分。ニコニコニュースの公式アカウントは前日の21時36分に番組告知をおこなっていたが、番組終了時点でもリツイート数は150件足らずで、ほとんど拡散されていなかった。

ご存知のとおり、10日に国内の新規感染者数が2972人と2日連続で最多を更新し、さらには分科会が感染急拡大に歯止めがかからない地域の「GoToトラベル」一時停止の提言をおこなうなど、菅首相には広く国民に状況を説明する責任が生じていたのは言うまでもない。だが、菅首相はNHKで生中継される正式な記者会見をおこなわず、よく話をしているという政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏ひとりが聞き役となるニコ生の番組をコソコソと登場したのだ。

ようするに、記者からの追及を受ける場から逃げておきながら、「国民に丁寧に説明してきた」という言い訳づくりをおこなった、というわけだ。

しかも絶句したのは、番組冒頭での挨拶だ。鈴木氏から「まず最初に番組をご覧のみなさんにメッセージを」と振られると、菅首相は笑みを浮かべて、こう口を開いたのだ。

「みなさんこんにちは。ガースーです(笑)。どうぞよろしくお願いいたします」

札幌市や大阪府では最終手段である自衛隊の派遣要請という緊急事態にまで至っており、多くの都道府県の医療現場からは悲鳴があがりつづけている。そんな只中にあって、総理大臣が「ガースーです(笑)」とニコ生に巣食うネトウヨぐらいにしか受けないような寝ぼけた自己紹介をする──。しかも、「メッセージを」と振られていたのに、菅首相が発したのはこれだけ。さすがに鈴木氏も「それだけ?」とツッコんでいたが、それでも菅首相は小さく頷いてニヤニヤと笑うだけ。この場面ひとつとっても、現在の危機的状況と自分に課せられた責任をこの男がまったく理解していないことがはっきりしただろう。

●菅首相は「移動では感染しないという提言もいただいていた」と分科会に責任転嫁

実際、このニコ生の冒頭部分を放送していたTBS系『ゴゴスマ』(CBCテレビ)では、「ガースーです(笑)」と菅首相が挨拶し終えた直後にニュース速報が流れ、〈東京で新たに595人が感染 1日の発表人数としては過去2番目 重症者67人〉というテロップが映し出された。そのテロップの数字と、緊張感もなく弛緩しきった菅首相の表情のコントラストは、まさしく地獄絵図だった。

だが、問題はそれだけではない。番組では「GoToトラベル」一時停止についての質問もなされたが、菅首相はあっけらかんと「まだそこは考えてません」と回答。「きょう(分科会から)提言を受けたわけですから」だの「西村(康稔)大臣を中心に、それぞれの首長とこれから調整をする」だのと述べ、対応までに2〜3日かかるとしたのだ。

いつもは「スピード感」をやたら強調するのに、提言を受けても「まだ考えてない」とは──。この間、分科会メンバーのみならず、東京都医師会の尾崎治夫会長も「GoTo」停止を求め、昨日には日本病院会が「GoTo」の即刻中止を求める声明を発表して「医療現場では、今でも重症者らの診療を必死に行っているが、感染拡大がこのまま続けば、医療崩壊は必至だ」と切実なメッセージを発信した。だが、現場の切羽詰まった声などお構いなしで、菅首相は「これから調整」などと述べたのである。

そればかりか、菅首相は分科会に責任を押し付けるかのように、こんなことまで言い出したのだ。

「いつの間にか『GoTo』が悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていたんです」

まったく何を言うのか。「いつの間にか悪いことになってきちゃった」などと言うが、「GoTo」開始時から感染拡大を危険視する専門家は少なくなかった。そんななかで分科会が政府の追認機関に成り下がって「GoTo」を許した責任は重く、医療崩壊が叫ばれる状況にまで陥ってから一時停止を求めても遅すぎるというのも事実だ。しかし、その分科会に睨みを利かせてきたのは、ほかならぬ菅首相だ。そして、ようやく一時停止の提言が出ても、自分の頑迷さや政治判断の遅さを棚に上げて「いつの間にか『GoTo』が悪いことになってきちゃった」とは、呆れてものも言えない。

●鈴木哲夫のぬるい質問の「ニコ生」で説明責任をすませようとする菅首相

しかし、このほかにも菅首相はツッコミどころ満載の回答しかおこなわなかったというのに、聞き役の鈴木氏はたいした追及をすることもなく、せいぜい「僕は菅さんとずっと一対一で話してるからわかるけど、菅さんの言葉で説明していくってこともプラス必要かなって」などと馴れ合った雰囲気のなかで言うのが精一杯。しかも、10問にも満たない視聴者からの質問に答えただけで(ちなみにそのうち2問は尖閣諸島問題とTPP加盟という中国の話題に費やされた)、番組はたったの約30分で終了となったのだ。

繰り返すが、都市部ならず地方でも過去最多の新規感染者数を出す府県が続出し、重症者や死亡者の増加に国民が不安を抱くなか、菅首相は緊張感のかけらもなく、このようなヌルさ全開の番組を「国民への説明の場」に仕立て上げた。しかも、鈴木氏は番組の最後に「これ定期的にやりたいんです」などと言い出したのだが、対して菅首相はご機嫌な様子で「時期がきたらやります(笑)」と回答していた。

こんな予定調和かつ甘すぎる番組に生出演することで肝心の記者会見から逃げる口実を与えることなど断じて許されるものではないが、もっと深刻なのは、菅首相がこの国の危機的状況をまったく直視しようとせず、ヘラヘラと笑っていたことのほうだ。医療現場から悲鳴があがるいま、この国の総理大臣はだらしない笑みを浮かべているだけだという現実を、ひとりでも多くの国民が知るべきだ。
(編集部)

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