「改姓ハンディいつまで」 選択的夫婦別姓導入訴え闘うサイボウズ・青野社長

「サイボウズ」社長の青野慶久さん(同社提供)

 夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗ることも認める選択的夫婦別姓を巡り、自民党内で議論が紛糾している。東証1部上場のソフトウエア会社「サイボウズ」(東京都中央区)社長の青野慶久さん(49)は、改姓して不都合を被った当事者として選択的夫婦別姓導入を訴え、法廷でも闘っている。「政府はいつまで改姓によるハンディを背負わせるのか。早く立法を」との思いを強めている。

 政府の第5次男女共同参画基本計画が今週中にも閣議決定されるのを前に、自民党の特別委員会で制度についての議論が活発化。計画案には導入に前向きな表現が盛り込まれ、推進派が「(実家の姓が絶えることを心配し)一人っ子同士が結婚を踏みとどまるケースがある」などと主張する一方、高市早苗前総務相ら慎重派が反発。計画案の内容は“後退”を余儀なくされている。

 9月に菅政権が発足して以降、選択的夫婦別姓を巡る政府の動きを、青野さんはこう見る。

 「安倍晋三前首相が明確に無視していたので、首相が代われば進むと期待していた。河野太郎氏、小泉進次郎氏ら、次期首相に名が上がる人の多くは制度に賛成とみられる。いずれは法改正されるだろう」

 「ただ遅すぎる。数十年間ずっと苦しんでいる国民がいて、無駄な名前の書き換え作業をしている人を大量に生み出している。私のように、(旧姓との)使い分けで無駄なコストやリスクを抱えている人が大量にいる。どれだけハンディを背負わせるのか」

 菅義偉首相は総裁選に先立つ9月、選択的夫婦別姓について慎重な検討が必要との立場を示す一方、11月の参院予算委員会では、過去に推進の立場で議員活動をしてきたことについて「責任がある」と明言した。ただ青野さんは菅首相の取り組み姿勢については「選択的夫婦別姓導入は『ゼロイチ』の話で、立法しない限りはゼロ評価。国会議員の仕事は立法。(当事者らの)話を聞いたとしても、立法しないなら仕事していないのと一緒だ」と、まだ懐疑的だ。

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