【編集部コラム】GoToキャンペーンと「第3波」の相関関係は明らかだ GPSによる人流データが明確に示唆

 11日に分科会が示した「ステージ3」相当の地域におけるGoToキャンペーン一時停止を含む対策強化案について、政府は自治体と調整し対応を決めるとしているものの、菅首相はじめ政府首脳は再三「エビデンスはない」と発言し後ろ向きな姿勢を崩していない。そこで、編集部では間接的ではあるものの、民間会社と厚生労働省が公開しているデータから、GoToキャンペーンと「第3波」の相関関係を示す事実を導いたので共有する。

GPSデータが示したのは「GoToによる急激な人流増加、集中」

Agoopが公開した11月29日までの観光地別人流増加データ提供:株式会社Agoop
Agoopが公開した11月29日までの観光地別人流増加データ提供:株式会社Agoop

 毎日個人情報を抜いたGPSデータを公開しているソフトバンク系のAgoopが、「秋の行楽エリア人流解析」と題した統計を公開している。昨年1年間と、今年11月29日までソフトバンク系のキャリア端末から同意の上取得したGPSデータを比較したものだ。同社Webサイトで公開されているので、時間のある方は確認していただきたい。

 この資料で注目してもらいたいのは増加率で、緊急事態宣言日前と比べ、一気に増加した地域が一部見られる。これは、絶対数が増えたからというよりも、GoToの支援策によって一気に人流増加した地域があるということを示している。換言すれば、「接触機会」「密の機会」が特異的に作り出されたとも言えるのではないだろうか。

このデータを踏まえた上で、厚生労働省のアドバイザリー・ボードが毎週まとめている都道府県別の新規感染者数などのデータを見ると、明らかに浮かび上がってくる事実がある。

(以上、厚生労働省アドバイザリー・ボードの12月10日付資料より)

 Agoopが発表した資料で急激な人流増加がみられた観光地を含む都道府県を見てみると、西日本を中心に、単なる増加とは言えないほどの急激な増加を示し、過去最高を更新していることが分かる。広島県が典型的で、増加率が極端な地域ほど急激に感染拡大している。

 GoToは他の地域でも行なっているのに、こうした特定の地域だけ異様に人流が増え、その後感染者が増えているのは何故なのか。傍証でしかないが、その要因はGoToの支援策の「手厚さ」の違いだろう。Agoopのデータでは広島県の厳島地域への人流が驚くべき増加を示しているが、その理由は広島の支援策がすさまじい内容で、「タダ同然」で旅行できたからだ。

 すでに予算枠が尽きているため新たな利用はできないが、広島県独自に、GoToキャンペーンと併用できる旅行総額最大50%補助のキャンペーンが展開されていた。つまりGoTo本体、地域クーポンと合わせればほとんどのケースで無料、場合によっては地域クーポン券分の一部が黒字という状態だった。

 この強力な支援策は先にも示した通り、広島県が予算枠を設定した特別施策で、指定した旅行代理店からしか申し込めない「売切御免」のキャンペーンだった。8月から近郊地域に限定して申し込みを受け付けていたが、GoToに東京地域が追加され、また地域制限を外した10月1日から当然ながら申し込みが殺到し、あっと言うまに予算が尽きた。そして秋の行楽シーズンに広島県へ観光客が押し寄せ、接触と密の機会が大量生産されたというわけである。

 この事実が示したものは「GoTo自体が感染を増やすわけではないが、GoToの内容と実施方法が人流の急激な増加を促すようなものであれば、感染拡大を誘発する蓋然性が高い」ということである。観光業支援策は必要であることは言うまでもないが、この事実を冷静に見れば、少なくとも人流の急激な増加と、それによる接触と密の機会を増やさない施策内容にしなければならないことは明らかだ。

 14日、名古屋市、広島市について各自治体がGoToの対象から一時的に外すよう政府に求めたことが明らかになっている。これだけ除外地域が増えれば、もはやキャンペーンは事実上止まっているのと同じだろう。この機会に一度全国的に停止して、制度設計を見直すべきではないだろうか。

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