中学受験開始まで1か月、みんな1日何時間勉強している?コロナ禍での家庭学習のコツ

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

埼玉県の中学入試スタートまでほぼ1か月。最も遅い東京・神奈川でもあと2か月と迫りました。受験生にとってはまさに追い込みの時期です。

今回はこの時期の受験生の家庭での学習時間を取り上げます。

今回の中学受験に関する数字:3~5時間


どうやって家庭学習の時間を確保するか

<タカの目>(高橋真実)

埼玉県内私立中学の出願がスタートし、いよいよ受験戦線が目の前に迫ってきました。この時期、受験生はどのぐらい家庭で勉強しているのでしょうか。

中学・高校受験塾栄光ゼミナールが志望中学(私立)に合格した6年生を対象に行ったアンケート結果によると、夏休み以降の平日の平均学習時間は「3~5時間」との回答が最も多く、34.4%を占めました。次に多かったのは「5~7時間」で18.3%。栄光ゼミナールでは、公立中高一貫校を目指す受験生のためのコースもあり、こちらでも家庭での学習時間は「3~5時間」が17.6%と最も多く、その次は「1~3時間」の7.6%でした。

学校の宿題もあり、塾での学習時間もあり、その上で受験のための学習時間を確保していくのは、容易なことではありません。

中学受験の場合は、家庭学習は親との二人三脚の部分が大きくなります。塾の課題が多い上に、夏以降は志望校の過去問にもチャレンジしなければならず、家庭学習でやるべきことはこの時期ますます増えます。第一志望の過去問は塾の学校別やコース別対策講座で対応するとして、第二志望以下の学校の過去問は家庭で対応するほかはありません。

小学生ですから、放っておけば易きに流れるのは必至。塾の先生からは「本人が自己管理できるように」と言われますが、現実的には本人の時間管理にあまり期待できません。結果、本人以上に悩み多いのが受験生の保護者です。

今年は例年以上にストレスのかかる受験期に

以前は、二人三脚の役割をお母さんたちが担ってきましたが、最近は、お父さんが積極的に取り組んでいるケースも多々見られます。
宿題や過去問対策などのサポートだけでなく、塾のテストの振り返りをお子さんと一緒に行うお父さんも。

受験が近づくこの時期、子どもも親も「あれもやらねば」「これもできていない」と焦るばかり。一方、体調管理のためには睡眠時間も確保しなければなりません。特に今年は、新型コロナウィルスもあり、体調管理にはことさら神経を使います。今年は例年以上に受験生・保護者は不安やストレスを抱えています。

この時期、家庭での学習はどのように取り組んでいくのがよいのでしょうか。また、親としてどんなことを心掛けるべきなのでしょうか。教えてください、モリの目さん。

家庭学習は塾の時間割がキホン

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんの今回のお題は、追い込み時期の家庭での学習時間ですね。3~5時間というのはモリの目の感覚にも近いですね。

このような時間になるのは、要は塾の時間割が基本にあるからです。通常小6生の塾の滞在時間は3時間くらいです。そうするとその前後の予復習に2時間かけるとすると5時間になりますね。

あるいは塾のない日はどうなるかというと、通塾生と同じ時間に勉強する習慣がついているはずですから、やはり同じように3時間のお勉強があります。ただ、塾がない日は家庭教師や個人指導をつける方も少なくないので、さらにそれに90分から2時間かけると思います。そうするとやはり最大5時間くらいになります。これは例年の小6生の学習スタイルだろうと思います。

今年は家庭学習の時間が増える?

ただし、今年は例年と違う可能性があります。

それは即ち、コロナによる学校閉鎖の可能性がないわけではないからです。それでなくともインフルによる学級閉鎖がある時期ですから、恐らく地域によって学校によって今冬は休業になる日が多くなる可能性が大きいと思います。

そうなると上記の家庭の学習時間も例年に比べて多くなるはずで、加えてご両親もテレワークで家庭にいて仕事をすることも同時に考えられます。
これはどういうことかというと、例年の受験生に比べて受験勉強に充てられる時間がかなり多く作れそうだ、ということです。

もちろん、感染リスクも隣り合わせにあります。恐らくテレワークなど親も家庭にいる場合は、感染リスクは低いと考えられますから、考えようによっては親子で長時間籠もる生活が、そのまま受験対応として活用できるということでもあります。

親は最良のコーチ

いうまでもなく、親は最良のコーチですから、コーチが側についているだけで相当に良い影響がでます。また出るようにできます。ただ、最良であっても最高の指導ができるわけではないので、経済的な事情が許せば、学習指導のできるベテランの教科指導者をつけるのがベストです。

そして、テレワークだと親のいる間に家庭教師の指導ができます。親も共に学べる可能性もありますし、なるべくそうした方が成績は間違いなく伸びます。何と言っても、受験の勘どころを親も知ることになります。

受験において、何か重要で何が不要かとわかってコーチができます。あるいは、わが子がどこが腑に落ちていなくて、何か理解できていないかも手に取るようにわかります。

筆者の経験では最初は反発したりしても、親子で学ぶうちに次第に歯車がかみ合い、会話がスムーズになります。親子学習は案ずるより生むが易しの典型です。

受験校ごとの対策をする貴重な時間

そもそも指導のための資料の整理を親がしておき、その整理に基づいてわが子に何をどのくらいの時間で学習をすすめられるかスケジューリングするのが一仕事です。

こうした資料作りをするのは、入試問題が「誤答誘導」だからです。同じ間違いをしやすいように作題してあるので、その誘導にのらないスキルを典型問題で身に付けておくことが大切です。正答率50%以上のレベルなら必ず得点しておかないと、勝負にはなりません。極端に言えば、逆にそれができさえすれば合格します。

以上の2点をおさえる根気強い勉強がこの時期のメインです。例年、こうした作業を塾と塾の勉強以外の時間で、受験する学校に絞ってやっていかねばなりません。となると土日のほぼ全日をつかっても十分にはできないくらいです。今回はそこが十分にできる可能性があります。

タカの目さんもご指摘のように、塾のテキストなどと違ってこうした志望校対策の個別メニューのスケジューリングはなかなか思うようにいかないのが普通です。
やはりどこまでできたか、学習マップに仕上げた領域をチェックしていくなど、”見える化”をして到達度を計る工夫が欠かせません。

間違いを覚えないこと

あと1月になると埼玉、千葉、茨城などで実際の入試が始まります。受験したら入試問題を必ず見直し、ミスの出方をなるべく即日チェックしてください。

2月の入試も同じようなことを聞かれることは珍しくはありません。同じミスをしないよう、「こうすれば正解する」という手法を身に付けましょう。決して「間違い」を覚えないこと。「こうしてはいけない」という覚え方をすると同じミスをしがちです。そこは大いに注意が必要です。

このように、今年の入試は最も成績が伸びるタイミングで、自分のための時間が長くとれそうです。これを活かせる受験生が合格を勝ち得るでしょう。

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