<社説>辺野古土砂投入2年 工事は即刻断念すべきだ

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、政府が辺野古沿岸に土砂を投入してから14日で2年となった。昨年2月の県民投票で投票者の7割が埋め立てに反対した民意を無視し工事を強行している。軟弱地盤のある大浦湾側で着工の見通しも立っていないにもかかわらずだ。 玉城デニー知事は記者会見で「日米政府は『辺野古が唯一の解決策』との固定観念にとらわれず県との対話に応じてほしい」と求めた。知事が繰り返してきたこの要請をも政府は拒否し続けている。

 このような政府の態度は、民主主義に反する暴挙だ。政府は工事を即刻断念し、普天間飛行場は県内移設条件を付けず即時に返還すべきだ。

 辺野古新基地建設を巡って国と県は9回も訴訟で争ってきた。国を相手に一県が司法の場でここまでとことん争うのは異常事態と言うほかない。県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の決定は違法として起こした訴訟も県は11日、訴えを却下した那覇地裁判決を不服として福岡高裁那覇支部に控訴した。

 県はこれまでの訴訟で1度も勝っていない。それでも譲らない背景には県民の強固な民意がある。県民投票をはじめ県知事選、国政選挙など県内の主な選挙で辺野古新基地に反対する候補が勝利を重ねてきた。土砂投入後の選挙でもその流れは変わらず、今年6月の県議選で当選者の6割を新基地反対派が占めた。

 なぜ県民の辺野古反対の民意は揺るがないのか。辺野古移設は県民にとって負担軽減ではなく、機能強化という新たな負担だからだ。垂直離着陸輸送機オスプレイが離着陸する滑走路のほか、弾薬庫や軍港が新たに整備される。基地機能が強化されるほど「敵」の標的になる。核兵器を含むミサイル戦争の時代である。攻撃されれば周辺住民の多大な犠牲は避けられない。

 土砂投入から2年の間、在沖米軍基地で新型コロナウイルス感染症が拡大し、県民に感染する事態が起きている。米軍基地はコロナの進入経路としても脅威だ。新たな基地負担が浮き彫りになった。

 しかし政府は県民の基地負担に真剣に向き合っていない。沖縄だけでなく全国知事会が求めている日米地位協定の改定に取り組まない姿勢からも明らかだ。

 辺野古埋め立て工事は既に実現性を失っている。政府は昨年12月、新基地完成までに12年、費用は9300億円かかると明らかにした。今年4月に軟弱地盤の改良工事を含む設計変更を県に提出したが、県は承認しない構えで訴訟に発展する可能性が高い。

 工費は県試算で最大2兆6500億円に上る。コロナ対策で財政がひっ迫している時である。工費はコロナ対策に回すべきだ。世界がコロナ禍で苦しむ中、県民の民意を足げにしてでも新たな軍事基地建設に突き進む政府の姿勢は異常と言うほかない。

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