KAGRAも参加する重力波望遠鏡の共同観測「O4」開始は2022年6月以降に

重力波望遠鏡「KAGRA」中央実験室内の様子(Credit: ICRR GW group)

日米欧の重力波望遠鏡によるLIGO-Virgo-KAGRAのコラボレーションは12月9日、複数の重力波望遠鏡が共同で取り組む次期観測期間「O4」(Observation 4)について、2022年6月以降に開始される予定であることを明らかにしました。

アメリカの「LIGO」(ライゴ、ワシントン州とルイジアナ州の2か所に建設)と欧州の「Virgo」(ヴァーゴ、イタリアに建設)は、観測期間「O2」(Observation 2、2016年11月30日~2017年8月25日)の終盤にあたる2017年8月1日から共同で観測を行っています。O2におけるLIGOとVirgoの共同観測はわずか1か月弱と短かったものの、2017年8月17日に検出された重力波「GW170817」は中性子星どうしの合体にともなう爆発現象「キロノバ」の観測につながりました。

アップグレードされた重力波望遠鏡による新たな観測期間「O3」(Observation 3)は2019年4月1日~2020年4月30日までの予定で始まり、当初からLIGOとVirgoによる共同観測が実現。2020年2月25日に連続運転を開始した日本の重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」も観測精度の向上を経て3月末から共同観測に参加できた可能性があったものの、O3の観測は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて予定よりも早く2020年3月27日に終了していました。

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1年間が予定されているO4の観測は、検出器の改善や米欧の重力波望遠鏡の「Advanced LIGO Plus(A+)」「Advanced Virgo Plus(AdV+)」へのアップグレードを経て2021年後半~2022年初頭に始まる予定でしたが、依然として続いている新型コロナウイルス感染症の影響や調達の遅れにより、前述のように2022年6月以降に開始される見込みとされています。

なお、LIGOとVirgoのコラボレーションによる観測が行われたO3ではブラックホールや中性子星の合体にともなう重力波を前半(2019年4月1日~10月1日)だけでも39例検出する成果があげられており、O2までの11例も含めると計50例に達しています。たとえばO3の前半で検出された重力波のひとつ「GW190521」はブラックホールどうしの合体にともなうもので、合体により太陽の約142倍の質量を持つ中間質量ブラックホールが誕生したとみられています。

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また、地球に到達した重力波がどの方向からやってきたのかは、複数の重力波望遠鏡が同じ重力波をキャッチした時間のわずかな差を分析することで知ることができます。米国内の2か所と欧州に建設されたLIGOおよびVirgoの共同観測に日本のKAGRAが加わることで、重力波の発生源をより正確に絞り込めることが期待されています。

アップグレード作業のために屋根の一部が持ち上げられている欧州の重力波望遠鏡「Virgo」(Credit: EGO/Fabozzi)

Image Credit: ICRR GW group
Source: ICRR / Virgo Website / LIGO Lab
文/松村武宏

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