なぜ高2で153キロを投げられたのか 元ロッテ右腕が伝えたい“目標と分析”

元ロッテの島孝明さん【写真・編集部】

連載『島孝明のセカンドキャリア―Brand New Days―』第9回

こんにちは、元ロッテの島孝明です。野球選手にとってオフシーズンは、1年を振り返りって、自身の足りない部分などを補い、また今後の自分を方向づける上で貴重な時間となります。選手の中には、一冬超えて別人のように成長することもあるほど、競技人生の中でも非常に重要な役割を担っています。今回は、私のこれまでの過ごし方などをお伝えし、少しでも参考にしていただければ嬉しいです。

1年を振り返るということは、自分の現状に対して自ら評価を下すことになるわけですが、その際に今後自分がどうなりたいのかといった「自我目標」と、それを達成するために具体的に何をするべきかといった「課題目標」の2つが必要になってきます。自我目標とは、これまでの成績や他人との比較から立てられるものでありますが、その目標だけではモチベーションを維持することが難しく、また、その後の取り組みが有耶無耶なものになってしまいます。

オフシーズンの練習に取り組む前に、しっかりとした現状分析と2種類の目標を立てておくことで、春を迎えた時に、これまでよりも大きく成長した自分の姿を目にすることができるでしょう。また、最近では様々な計測機械も普及しているため、そこから得た情報を活用することや、信頼のおけるコーチやトレーナーなど、周りの人と意見を出し合い進めていくのも良いと思います。

高校野球などにおいては、あらかじめメニューが設定されているところが殆どであると思いますが、自主練習のような、自らメニューを選択し取り組む過程は、決められたメニューを取り組むよりも高い学習効果が得られることが研究でも明らかになっており、もし少しでも自由な時間が取れるのであれば、積極的に活用して欲しいです。ただその取り組む内容が、自ら立てた目標の達成に不適切である場合は学習効果につながらないことがあるので、改めて現状の正しい分析と、正確な目標を設定していくことが求められるでしょう。

私も振り返ってみれば、常にこうした取り組みが出来ていたわけではなく、出来た年とそうでない年で、その差は顕著に表れていたと思います。153キロを投げるに至った高校2年の冬では、150キロを投げることを目標に掲げ、達成のために、ウエートトレーニングを用いて筋肉量を増やす練習を多く取り入れたり、瞬発力を高めるためのプライオメトリクスや、チューブを使って肩周りや臀部などの細かい筋肉も鍛えていきました。

身体が発達するということは、神経系が発達するということ

こうしたフィジカル面の向上にフォーカスを当てた練習に取り組む一方で、技術向上のための練習も同時に行っていかなければなりません。身体が発達するということは、神経系が発達することも意味しており、同じ動作を行うにしても、これまでとは違った感覚で遂行しなければならない可能性が出てきます。しかし、人によっては全くボールを投げない人など、個人差があるため断言することは出来ませんが、個人的には同時にバランス良く取り組んでいく方が良いと思います。

また、既存の球種をブラッシュアップすることや新しい球種の習得なども、オフシーズンに取り組むべき事項であると思います。真っ直ぐの他に何か一つ武器となる球種があるだけでも、ピッチングの幅は大きく変わってくるため、どんなカウントからでもストライクを狙って取りに行ける球種を持っていない人は、この期間に習得しておくべきでしょう。他にも、フィールディングなど普段あまり時間をかけない基礎的な練習も、この機会にじっくり取り組んでみてはいかがでしょうか。

オフシーズンのトレーニングは単調でマンネリ化しやすく、モチベーションを保つことが難しい時期でもあると思いますが、そうした地道で小さな積み重ねによって、成長した自分が創られていくのだと思います。日々自分が立てた目標や練習の目的を確認しながら、多くの選手が自身の未知なる境地へ飛躍していって欲しいと思います。(島孝明/Takaaki Shima)

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