ラッシュの再生可能性にこだわった香水、売り上げ全額を草の根団体に寄付

ラッシュジャパンは寄付月間の12月に合わせ、動物愛護や環境保全、人権の分野で活動する日本全国の草の根(グラスルーツ)団体に売り上げを全額寄付する香水「グラスルーツ」の販売を開始した。新宿店とオンラインショップの限定商品で、その主要な原材料は環境保全を重視したリジェネラティブ(再生可能)なシステムや考え方を取り入れるコミュニ

チャリティポットコインのデザインは動物保護、人権、環境保護を象徴

ティから調達しているという。「再生可能性を最優先に企業活動を行っている」という同社の取り組みとは。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本 啓一)

ラッシュは2007年9月から、売り上げの全額(消費税除く)を社会課題の解決に向かう草の根団体に寄付・助成する瓶入りのハンド&ボディローション「チャリティポット」を販売。2020年9月時点で、寄付総額は5300万ポンド(約71億5500万円)以上、日本国内では6億3000万円以上にもなった。

チャリティポットコインのデザインは動物保護、人権、環境保護を象徴

さらに2020年10月、チャリティポットを固形にし、パッケージレスを実現した「チャリティポットコイン」を発売。3種のデザインは、同社がチャリティプログラムで対象とする動物保護、人権、環境保護の分野を象徴するデザインを採用した。1個(10グラム)160円という、より気軽にチャリティに参加できる価格設定だ。

寄付月間の12月、これら「チャリティポット」シリーズにインスピレーションを受けた香水「グラスルーツ」を日本でも販売開始した。同商品の販売国は日本を含む6カ国。実店舗で購入できるのは世界で9店舗(日本では旗艦店の「LUSH新宿店」)のみだが、オンラインショップでも購入可能。もちろん「グラスルーツ」の名前の通り、売り上げは全額が草の根団体に寄付される。

実は、ラッシュジャパンには、店長の判断で「LUSH」店舗を、草の根の活動団体のイベントや講演会場として貸し出すことができるシステムがある。寄付に限らず関係性を築き、応援する姿勢はこれまでも一貫しているというわけだ。寄付はロビー団体、平和的な抗議活動、非暴力運動を含むキャンペーン活動、特に他からの資金調達が困難な団体に優先的に提供されるという。

ラッシュの資金提供についてのガイドラインなど詳細はこちら 

「グラスルーツ」は「チャリティポット」と同系統のゼラニウム、イランイランに濃厚なバニラとローズウッドを乗せた甘い香り。ラッシュらしく、その主要な原材料の調達には「リジェネラティブ(再生可能性)」に配慮した生産コミュニティから調達している。ベースとなるエタノールはオーガニックのサトウキビからつくられているが、サトウキビ畑はカーボンニュートラルなエネルギー利用、責任ある収穫が確認されているという。

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ゼラニウムの生産地はケニアのMOOF(マウンテン・オーガニック・ファーミング・ネットワーク)農園。MOOFの創設者はパーマカルチャーデザインの農業の実践者だ。ここで行われるパーマカルチャーとは例えば、換金作物と食用作物の栽培を両立させるため、間作用の植物を慎重に選び、その地域での食事に欠けている栄養分が豊富な家族向けの食用作物というだけでなく、周囲の土壌に利益をもたらす作物を選択する、といった「全体的な視点を持った」農業手法だ。2012年、地域の農家60軒にラッシュは60000本のゼラニウムの苗を配布した。これらの農業従事者にMOOFがパーマカルチャーの農業を伝える活動を行ったことで、今では農家のネットワークを形成している。

「課題の現場に直接向き合い、真摯に解決を目指す小さな団体は、活動資金が障壁になる場合が多いです」と話すのはラッシュジャパン広報担当の小山大作氏。「私たちができることは、商品を通して日本の消費者にその声を届け、直接出会うことができない人たちの思いを集めるハブになることです」と言うように、寄付や助成はもちろんのこと、原材料の調達の考え方にも「グラスルーツ」のコンセプトは共通している。

「売り上げの全額を寄付」とは文字通り、消費税を除く価格分の全額を寄付することだ。製造や輸送費用は当然、同社が負担する。ラッシュというハブに集まった「自分たちができることで、社会や環境が良くなれば」という消費者の思いに、ラッシュという企業の思いも加えられて寄付は届けられている。

LUSH公式「グラスルーツ」ページ

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