第21回グリーン購入大賞、SDGsに取り組む自治体をデータベース化する試みに環境大臣賞

環境負荷が小さい製品やサービスの購入を推進する環境団体、グリーン購入ネットワーク(GPN)(東京・千代田区)が主催する「第21回グリーン購入大賞」の表彰式が12月11日、都内で開催された。13の企業や自治体などが受賞したほか、新潟、大阪の2市が特別賞を受賞した。環境大臣賞はSDGsに取り組む自治体をデータベース化し支援する法政大学の川久保俊研究室、経済産業大臣賞はプラスチックごみのリサイクル事業を展開する昭和電工(同・港区)、農林水産大臣賞はフードロス削減を目標にショッピングサイトを運営するクラダシ(同・品川区)が受賞した。(横田伸治)

同賞は1998年に創設され、今年で21回目。持続可能な調達を通じたグリーン市場の拡大への貢献という観点から審査・評価を行い、受賞団体を決めている。同賞では2018年の第19回からSDGsの目標達成に寄与する取り組みについても募集を行っており、今回は従来の大企業部門、中小企業部門、行政・民間団体部門に加えて「プラスチック資源循環特別部門」も新設された。

東京都千代田区内で行われた表彰式では、GPN会長で審査委員長の梅田靖・東京大大学院教授が「海洋プラスチックごみ問題や廃材プラスチックの輸出規制など、プラスチックの資源循環問題が大きくクローズアップされている」と新部門設置の経緯を説明。「今年度の受賞事例から次なる優秀事例が生み出されることを願っています」と述べた。

新部門に応募があった事例のうち、経済産業大臣賞に選ばれた昭和電工は、家庭から排出されるプラスチックを高温で分子レベルに分解、水素ガスや炭酸ガスにリサイクルし、水素はアンモニア合成の原料に、炭酸ガスは炭酸製品やドライアイスの原料に使用するシステムを導入している。同社の竹内陽一・川崎事業所長は「新部門最初の年に受賞でき、うれしい。使用済みプラスチックを化学原料にリサイクルすることで、二酸化炭素の排出量を削減できる。今後は他社とも協働し、新たな資源循環を生み出す実証事業など、社会の課題解決に向けて積極的に取り組んでいく」と話した。

昭和電工の竹内陽一・川崎事業所長(左)と梅田靖・東京大大学院教授/GPN会長/グリーン購入大賞 審査委員長

また、環境大臣賞を受賞した法政大学川久保俊研究室は、同大の川久保俊准教授を中心に、所属する学生たちが全国約1800の自治体の情報をまとめたデータベースを作成。各自治体がSDGs達成に向けて取り組んでいる戦略を検索できるほか、自治体側が取り組みを発信できる機能も実装した。川久保准教授は「私たちが研究を開始した2016年には、まだSDGsが浸透していなかった。予算もなく、また私たちは建築学科でプログラミングができる学生もいなかった。人もリソースも情報もないところから、学生たちが日々学び、外注せずにプラットフォームを作ってくれた。引き続き機能改善を続け、SDGs達成に貢献できるよう頑張っていく」と語った。

法政大の川久保俊 准教授

農林水産大臣賞が贈られたクラダシは、賞味期限やパッケージの汚れ、自然災害による被害などにより通常の販売が困難な商品を買い取り、消費者に安価で販売するサービスを展開している。購入を通じてフードロスを削減できるビジネスモデルとして評価された。同社の関藤竜也・代表取締役社長は「食品ロスの削減だけでなく、購入代金の約3%が社会支援金となり、環境保護、動物保護、社会福祉などで活躍している団体に気軽に寄付できることから、気軽な社会貢献を実現している。新しい価値を付けることで、世の中に正しいことを、無理なくできる場を創設することが、環境保護につながっていくと感じている」と受賞を喜んだ。

梅田審査委員長(右)から賞状を受け取るクラダシの関藤竜也代表

このほか、国際フェアトレード認証コーヒーを商品化し、有機JAS認証コーヒーの普及に取り組んでいる小川珈琲(京都市)など4団体が大賞を受賞。さらに、財務会計システムにグリーン購入に関係する入力を必須項目とするなど、グリーン購入の定着を推進している町田市など6団体が優秀賞に選ばれた。

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