ダン・フォーゲルバーグが残した永遠のクリスマス名曲「懐かしき恋人の歌」 1981年 8月 ダン・フォーゲルバーグのアルバム「イノセント・エイジ」が米国でリリースされた月

ミュージックビデオ無き時代の傑作アルバム「イノセント・エイジ」

忘れられないクリスマスの名曲を1曲紹介しようと思っていたら、あることに気が付きました。

楽曲は「懐かしき恋人の歌(Same Old Lang Syne)」。その作者はダン・フォーゲルバーグ。2007年12月16日に亡くなったので、もう10年以上の月日が経過していることになります(享年56)。

私にとって、ダン・フォーゲルバーグは “ミュージックビデオのない人” という印象でした。それは洋楽チャートをテレビで紹介する番組が日本でいくつか始まった頃のこと。ミュージックビデオがないものはジャケットのみの紹介、楽曲はフルコーラスでオンエアされません(1981年頃なので、ミュージックビデオのあるアーティストはたくさんいたのですが…)。

ダン・フォーゲルバーグの1981年発表のアルバム『イノセント・エイジ』は2枚組の大作でこの中から4曲ものシングルが立て続けにヒットしました。しかし、それぞれミュージックビデオが無かったので立て続けにジャケット紹介という形になりました。要するに、彼はなかなかフルで曲を聴くことができない大ヒットメーカーだったわけです。曲はサビのちょっとしたフレーズしか聴けませんでしたし、2枚組でやや高額。当時中学生だった私はアルバム購入まで漕ぎ着けられませんでした。

アルバムを手に入れたのは随分後になってから。あまりの内容の良さに「リアルタイムで、もっと聴いておきたかった」と後悔することになりました。

自身の実体験から生まれたクリスマスに相応しい名曲

シングル「懐かしき恋人の歌」はアルバムに先駆けて前年の12月に発売されたものです。詩はダン・フォーゲルバーグ自身の実体験から作られ、クリスマス・イブの日に食料品店で昔の恋人に偶然再会した時のことが歌われます。

男は開いているBARがないので、酒屋で缶ビールを買って彼女の車に乗り込み再会を祝います。“Old Lang Syne” とは「蛍の光」のことで日本語にする時には「久しき昔」などと訳されるのですが、彼女は結婚したことを… 男はミュージシャンをしていることなど… お互いの現状を語りながら「久しき昔」に乾杯するのです。

そして2人が別れて、それぞれ家に帰ろうと振り返ると「雪は雨に変わっていた」というフレーズ。曲も終わりに差しかかり、最後にマイケル・ブレッカーがソプラノサックスで「蛍の光」を奏でます。何とも素敵な楽曲。クリスマスだけでなく大晦日、1年の終わりにもこれを聴いてじんわりしたいもんです。

日本でもお馴染み、日産グロリアのCMソング「ロンガー」

あらゆる楽器やコーラスをこなし多重録音も駆使する、作曲術にも長けた天才肌のミュージシャン、ダン・フォーゲルバーグですが、やや地味な作風と大々的に宣伝されなかったこともあり、日本での知名度はあまり高くはありません。

しかし、80年代後半には1979年のヒット曲「ロンガー」が日産グロリアのCMに使用され、そこで興味を持たれた方も多かったんじゃないでしょうか。アルバムの完成度はムチャムチャ高いので、「ロンガー」収録のアルバム『フェニックス』や『イノセント・エイジ』あたりから聴いて頂くことを強くおススメします。

ちなみに「懐かしき恋人の歌」で歌われる地元イリノイの食料品店の前の通りはフォーゲルバーグ・パークウェイと改名、誕生日である8月13日は『ダン・フォーゲルバーグ・デー』に制定されています。

あなたのためのオススメ記事 ダン・フォーゲルバーグ「ロンガー」長く愛される人気の秘密
※2017年12月16日、2018年12月16日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: DR.ENO

© Reminder LLC