ピシッと整ったおぐしに、ラメが光るスーツ。いつもどおりのハツラツとしたオーラで登場した三山ひろしだが、ここはひとけのないコンサートホール。「今年は約60本、(コンサートが)なくなったり延期になった」という三山が収録した、無観客ライブの模様を映像化したのが本作だ。
ファンの思い、そして三山の思いを通わせて歌い上げたのはじつに29曲。オリジナル曲だけでなく、『野球小僧』や『岸壁の母』『哀愁列車』など、時代を超える綺羅星のごとき名曲の数々を伸びやかに披露している。「ビタミンボイス」とのキャッチフレーズが印象的だが、とにかく精巧な職人技を見ているような、余裕のあるブレのない歌声に驚き、聴き入ってしまう。
そして本作には、無観客ライブならではのお楽しみも。曲間の着替えの模様も生実況にて披露しているのがユニークだった。そして着替えたのにまったく髪が乱れていない……そんなところにもつい、注目してしまう。「けん玉」のイメージだけではない、三山の新たなツッコミどころ、もとい魅力に触れられる一作に仕上がっていると感じた。
(日本クラウン・4364円+税)=玉木美企子