セイバー指標で選ぶベストナインは? パ・リーグは3人が実際とは異なる顔ぶれに

日本ハム・西川遥輝、オリックス・山本由伸、ロッテのレオネス・マーティン(左から)【写真:石川加奈子、荒川祐史】

代替可能選手と比べてどれだけ勝利を上積みしたかを表す「WAR」で検証

日本野球機構は16日、セパ両リーグの今季の「ベストナイン」を発表した。セ・リーグを制した巨人から菅野智之投手、大城卓三捕手、岡本和真内野手、坂本勇人内野手、丸佳浩外野手と最多の5人が選出。セ・リーグ9人、パ・リーグ10人の受賞者は17日に行われる「NPBアワード」で表彰される。

ベストナインは新聞社、通信社、放送局のプロ野球記者で取材歴5年以上のキャリアを持つ者による投票で選ばれるが、では統計上で今季、チームに大きく貢献したのは、どの選手だったのだろう? そこで野球を科学的に分析するセイバーメトリクスにおいて、打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標である「WAR」を用い、セイバーメトリクス指標で選ぶベストナインを挙げてみたい。

検証のデータはセイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。「WAR」は「そのポジションの平均以下の代替可能選手に比べて、どれだけ勝利数を上積みしたか」を統計的に推計した指標となり、より数値が大きいほど、勝利への貢献度が大きいとされる。

今回はパ・リーグを見ていきたい。

【パ・リーグ】
投手 山本由伸(オリックス)5.0
捕手 甲斐拓也(ソフトバンク)3.0
一塁手 中田翔(日本ハム)1.8
二塁手 浅村栄斗(楽天)5.4
三塁手 鈴木大地(楽天)1.2
遊撃手 源田壮亮(西武)4.8
外野手 柳田悠岐(ソフトバンク)8.4
外野手 西川遥輝(日本ハム)4.1
外野手 L・マーティン(ロッテ)4.0
指名打者 近藤健介(日本ハム)4.2

柳田は両リーグの全選手でダントツのWAR8.4を記録

パ・リーグだけでなく、12球団で最高のWARを記録したのは、ソフトバンクの柳田。2位の巨人・坂本が5.7だったことからも、8.4という抜きん出た数値を残した柳田がどれだけ稀有な、替えの効かない選手であるかを表している。柳田は16日に発表されたベストナインでも選出されている。

このほかに実際のベストナインと同じ結果となったのは甲斐、中田、浅村、鈴木大、源田、近藤の6人。浅村は5.4と両リーグ通じて4位のWAR5.4を記録。甲斐は捕手で12球団トップのWAR3.0を記録した。

一塁の中田、三塁の鈴木大、遊撃の源田もそれぞれのポジションでWARはトップの数字。近藤のWAR4.2は外野手として柳田に次ぐ数字だったが、他選手との兼ね合いからDHに。これらの面々は指標から言っても、選出は妥当なものだった。

一方で実際のベストナイン投票と異なったのが投手と外野手だ。WARのパ・リーグトップは山本の5.0。対して千賀は4.6に。千賀は投手タイトルで3冠に輝いたが、WARの上では山本に軍配が上がった。

外野手では日本ハムの西川とロッテのマーティンがランクイン。西川はWAR4.1、マーティンが4.0で、ベストナインに選ばれた吉田正の3.4、栗山巧(DH)の0.7を上回っていた。首位打者にもなった吉田正は打撃面での貢献は際立つが、守備面の指標で大きなマイナスに。攻守両面で“総合的に“見ると、西川やマーティンを下回る。

【表】2020年パ・リーグの「WAR」投打トップ10一覧

【表】2020年パ・リーグの「WAR」投打トップ10一覧 signature

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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