DH制は「投手が決められる権利に」 セ導入議論で専門家が提案、柔軟に魅力を

巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

元巨人の篠塚和典氏による「DH導入論」とは?

巨人が来季のDH制暫定導入を14日のセ・リーグ理事会に提案したが、議論はされず、前に進むことはなかった。新型コロナウイルスの影響が残る中、投手の負担軽減や見ているファンへの楽しい野球の提供などメリットはある。来季中の導入に異論もある中で巨人で活躍し、打撃コーチなどを歴任した篠塚和典氏は投手がDHの使用を選択できる制度するなど、私案を披露した。

篠塚氏は以前、元巨人・クロマティ氏とのFull-Countの対談でDH制導入は肯定的だった。野手1人の出場機会が増えることで選手のモチベーションが上がる点、守る側からすると気の抜けない打者が続くため、投手が育っていく点などを挙げてもらった。

「打者のやりがいは増えると思います。打線も活発になる。あとはどうしても、走・攻・守の三拍子が揃った選手しかレギュラーになれなかったものが、守備、走塁に目をつぶっても、ものすごいバッティングをする選手を生かせるという利点もあると思います」

打力が上がれば、それを抑えようと、投手力が上がる。その相乗効果に期待はできる。DH制導入で代打の数が減少する懸念の声もあるが、指名打者を3~4人で回すこともできる。守備に就く選手と指名打者をうまく使い分けることができれば、起用の幅は広がる。チームそれぞれに考えがあっていい。

巨人時代、篠塚氏はDHでの起用はない。ただ、西武や近鉄らとの日本シリーズでチームはDH制となり、多くの選手が出場した。シーズン中は外野のレギュラーだった吉村禎章氏や台湾出身の呂明賜氏らが起用された。

「やはり打のパ・リーグに勝つためですから、チームは攻撃的になりますよね。自然と打力は上がっていきました。代わりに守りに入れる選手もいた。そういう面白さは出ている選手にもありました」

長きに渡り巨人の主力として活躍した篠塚和典氏【写真:荒川祐史】

バッティングの得意な投手の打席も魅力…打席に立たせる選択肢もあり?

一方で、投手が打席に入ることの面白味もある。打撃の良い投手が華麗なバットコントロールを見せたり、アマチュア時代、主軸を打っていた選手が本塁打を放って見せたり……。実際にバッティングが大好きな投手もいる。

「その試合、その試合でDH制を使うか、使わないかを自由に決められればいいと思う。打席に立ちたいという投手には使わなければいいし、ピッチングに専念したい、させたいという投手にはDH制。投手が決めることができるような権利にすればいいのではないでしょうか。DHを使わないからって、試合が不利になるとは思いません」

3連戦などのカードが始まる前に監督同士の申し合わせ事項でもいい。投手コーチの判断でも構わない。柔軟な形を採用できれば、野球の魅力はより引き出せるはず。打つ気なく打席に立って、三球三振してアウトになる投手を見るよりも意図のある打席を見る方がファンは喜ぶ。

ピッチャーの権利として、DH制を採用する――。これはアイディアの一つだ。プロの見解で議論をしていけば、よりファンが楽しめる野球の可能性も広がっていくのではないだろうか。(Full-Count編集部)

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