タイガース・ヒンチ新監督 データ全盛時代の難しさを語る

2020年のワールドシリーズ終了とともに1年間の職務停止処分が明け、タイガースの新監督に就任したAJ・ヒンチ(前アストロズ監督)は、監督就任についてタイガースと話を進める一方で、レイズのケビン・キャッシュ監督と連絡を取り合っていたという。主な話題はワールドシリーズでの継投失敗について。キャッシュはワールドシリーズ第6戦でブレイク・スネルを早期降板させたことで大きな批判を浴びたが、ヒンチも昨年のワールドシリーズで同様の経験をしていた。

ドジャースが1988年以来32年ぶりのワールドシリーズ制覇を決めた第6戦、キャッシュは先発のスネルが素晴らしいピッチングを見せていたにもかかわらず、6回裏一死から9番のオースティン・バーンズにヒットを許し、ドジャース打線が3巡目に入ったところでスネルを降板させた。スネルはその時点で73球しか投げておらず、打たれたヒットも2本だけ。2番手のニック・アンダーソンがドジャースに逆転を許したため、キャッシュの決断は大きな批判を浴びた。

ヒンチはアストロズの監督を務めていた2019年にワールドシリーズでナショナルズと対戦。お互い3勝ずつで迎えた第7戦、2対0とリードしていた7回表一死から先発のザック・グレインキーがアンソニー・レンドンにソロ本塁打を許し、続くフアン・ソトに四球を与えたところで交代を命じた。ところが、直後に2番手のウィル・ハリスがハウィー・ケンドリックに逆転2ランを被弾。グレインキーも80球、被安打2という快投を見せていたため、継投失敗として批判を受けた。

現代の球界には膨大なデータが溢れており、監督はそのデータを駆使してベストの判断をすることが求められる。しかし、ヒンチは「それが難しいんだ」と語る。「監督は選手のことを熟知したうえで、持っている全ての情報を駆使して意思決定をしなければならない。でも、測定可能なデータもあれば、そうでないものもある。人間的な要素もたくさんあるんだ。そうしたものとデータを組み合わせて、正しい判断を下さなければならない」とヒンチ。データに頼りすぎてもダメ。自分の直感を信じすぎてもダメ。そのバランスが非常に難しいのだという。

「私自身はその2つをブレンドした監督だと考えている」とヒンチは言う。「私たちは監督として選手に愛情を注いでいるから、選手たちには成功してもらいたい。でも、それと同時に様々なデータが存在して、現代はそれが意思決定の原動力になっている。それらを上手く組み合わせて戦っていかなければならないんだ」とデータ全盛時代の意思決定の難しさについて語る。

結果だけを見て采配を批判するのは簡単だ。しかし、その意思決定に至るまでに様々な葛藤や苦悩が存在していることを、我々は忘れるべきではないだろう。

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