遊撃に楽天新人・小深田、外野にハム西川 打撃指標だけで選ぶパのベストナインは?

楽天・小深田大翔(左)と日本ハム・西川遥輝【写真:荒川祐史】

選手の得点創出力を示す指標「wRC+」を用いて選出

NPBから発表された2020年度のセパ両リーグのベストナイン。巨人から最多の5選手、ソフトバンクからはパ・リーグ最多の3選手が選出された。

記者投票によって選ばれるベストナインだが、その基準は実際、判然としない。守備の名手が選ばれる賞としてゴールデングラブ賞があるのだから、ベストナインは攻撃面だけの賞と言えそうだが、実際はゴールデングラブ賞が打撃成績に影響され、逆にベストナインが守備成績に影響されている部分も見受けられる。

以前に攻撃、守備、走塁、投球など全ての面を総合した勝利貢献度の指標「WAR」を用いて、両リーグのベストナインを選んだ。では、打撃面だけに特化した場合に、セイバーメトリクスの指標でベストナインを選ぶと、どうなるのだろうか。

そこで、ここでは選手の得点創出力を示す指標「wRC+」を用いて検証する。検証のデータは、セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。「wRC+」は打席当たりの得点創出の多さを評価する指標で、平均的な打者が「100」となる。球場による影響(パークファクター)に対する補正も行われており、条件を中立にした中で得点創出能力が測れるとされる。

なお、メジャーリーグでは打撃面だけでベストナインを選ぶ「シルバースラッガー賞」がある。今回はこれに当たるようなものだと考えてもらえればいい。ある程度シーズンを通じて試合に出た選手に対象を絞るために今季350打席以上に立った選手に限定した。

9人中6人が“本家”と同じ顔ぶれ…三塁、遊撃、外野で異なる結果に

【パ・リーグ】
捕手 甲斐拓也(ソフトバンク)101
一塁 中田翔(日本ハム)135
二塁 浅村栄斗(楽天)169
三塁 スパンジェンバーグ(西武)125
遊撃 小深田大翔(楽天)115
外野 柳田悠岐(ソフトバンク)205
西川遥輝(日本ハム)151
吉田正尚(オリックス)173
DH 近藤健介(日本ハム)181

パ・リーグでは捕手の甲斐、中田、浅村、柳田、吉田正、近藤が実際のベストナインに選ばれた面々と同じ顔ぶれになる。その中でも柳田はwRC+205というとんでもない数字を叩き出した。これは平均的な打者と比べて「2.05」倍の得点を生んだことになる。セパ両リーグで200を超えたのは柳田だけ。全選手で2位が近藤の181で、柳田の凄さが際立った。

近藤に続くリーグ3位がパ・リーグ首位打者の吉田正と浅村の173、そして西川の151がリーグ5位になる。上位5人のうち外野手が4人を占めたため、近藤をDHとして選んだ。なお、西川に続くのは149だったロッテのレオネス・マーティン、147だった楽天のステフェン・ロメロだった。

ベストナインに選ばれた中田はwRC+135でリーグ6位。一塁手では西武の山川穂高(125)に10の差をつけた。捕手の甲斐は101で、西武の森友哉(97)らも上回った。wRC+でいえば、同じチームの栗原陵矢(103)や中村晃(101)と同水準。捕手でこの数字は価値あるものだろう。

実際のベストナインの投票結果と異なる形となったのは先に挙げた外野の西川と、三塁手と遊撃手だ。三塁手でwRC+のトップだったのは西武のスパンジェンバーグ。wRC+は125で、ベストナインに選ばれた楽天・鈴木大地の108を上回っていた。ただ、スパンジェンバーグは左翼が590イニングの出場と多く、三塁を守ったのは345イニングだけ。純粋に「三塁手」となると、鈴木になるか。

そしてパ・リーグの遊撃手でトップの指標を叩き出したのは楽天のルーキー小深田大翔。wRC+は平均以上の115を記録した。ベストナインを受賞した源田のwRC+は平均以下となる88。打撃面だけに限れば、小深田は源田を上回っていた。なお、350打席には届かなかったものの、楽天の茂木栄五郎(321打席)はwRC+で145と小深田よりも上だった。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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