遊撃手のGG賞は坂本か?京田か? セイバー指標で見るセ・リーグの守備の名手は…

中日・京田陽太(左)と巨人・坂本勇人【写真:荒川祐史、読売巨人軍提供】

セイバーメトリクスの指標「UZR」から守備で貢献した選手を検証

セ・パ両リーグで守備の優れた選手に贈られるのが「三井ゴールデン・グラブ賞」だ。この賞は新聞社、通信社、放送局のプロ野球記者で取材歴5年以上のキャリアを持つ者による投票で選ばれ、今年は12月18日に受賞選手が発表される。

選考対象となるのは、投手では規定投球回以上投げている選手またはチームの試合数の3分の1以上(今季は40試合以上)に登板している選手。捕手は試合数の2分の1以上を捕手として出場している、内野手は試合数の2分の1以上で1つのポジションの守備に就いている、外野手は試合数の2分の1以上を外野手として出場していること、と定められている。この条件をクリアした有資格選手から、記者投票で受賞選手が決まる。

では、このゴールデングラブ賞の発表を前に、科学的に野球を分析することを目的とするセイバーメトリクスの指標から、各ポジションで最も優れた守備指標を記録した選手を検証してみたい。対象とするのは、各ポジションのゴールデングラブ賞有資格選手に限定し、投手は守備指標に大きな差が生じないために対象とはしていない。

検証のデータは、セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを基にした。セイバーメトリクスで用いられる「UZR」はリーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだかを表す指標。これを用いて、今季の守備の貢献度を測ってみたい。今回はセ・リーグ編だ。

12球団でトップのUZR19.1を叩き出したのは阪神の中堅手・近本光司

【セ・リーグ】
捕手 木下拓哉(中日)4.2
一塁 D・ビシエド(中日)6.0
二塁 吉川尚輝(巨人)10.8
三塁 岡本和真(巨人)14.5
遊撃 京田陽太(中日)10.1
左翼 青木宣親(ヤクルト)15.2
中堅 近本光司(阪神)19.1
右翼 松原聖弥(巨人)7.4

セ・リーグの中でも際立つ数字を叩き出したのが中堅の近本。UZRは全選手でトップの19.1を記録した。俊足を武器とした守備範囲もさることながら、各球団の守備力の高い選手が守ることの多い中堅でこれほどまでに抜きん出たUZRを記録するのは、それだけ近本の能力が秀でていた何よりの証だろう。

同じ外野手では左翼がベテランの青木、右翼は巨人の新星・松原がトップ。青木は今季無失策で守備率10割を記録。6補殺もリーグ2位の数字だった。右翼といえば、広島の鈴木誠也が思い浮かぶが、鈴木の今季のUZRは-0.1。リーグトップの8補殺をマークしているものの、UZRは7.4の松原を大きく下回っていた。

昨季何かと話題となったのは遊撃手。巨人の坂本勇人が受賞したが、そのUZRは-2.4で、京田陽太の16.6を大きく下回っていた。では、今季はどうか。京田のUZR10.1に対して、坂本は10.0とその差はわずか。1000イニングあたりに換算する「UZR/1000」では京田の9.7に対して、欠場のあった坂本は11.3になる。京田の13失策、守備率.977に対して、坂本の4失策、守備率.991という点がどう票に現れるか。

2年連続で阪神・梅野がGG賞受賞も、今季のUZRトップは中日の木下

三塁手では巨人の岡本がUZR14.5でトップ。2位の中日・高橋周平が8.7で、その差は開いている。守備率でいえば、高橋の.982に対して、岡本は.971と下回っているが、UZRでは岡本が上だ。同じく二塁手では巨人の吉川尚が10.8でトップ。二塁手と言えば、広島の菊池の印象が強いが、そのUZRは6.3だった。ただ、菊池は無失策で守備率10割。ここの評価も分かれそうだ。

一塁手は中日のビシエドがトップ。守備率も.999とリーグトップで順当にいけば、ゴールデングラブ賞に選ばれるはずか。捕手で指標トップは中日の木下だった。捕手は捕逸や盗塁阻止から出される指標で木下がリーグ1位。特に盗塁阻止率が.455と12球団でもトップだった。捕手は2年連続で阪神の梅野隆太郎捕手がゴールデングラブ賞に選ばれているが、今季の指標は木下が上回っている。

一方で、松原や木下などは有資格選手となってはいるものの、出場試合数はさほど多くない。試合数が少ないと、どうしてもシーズン通してプレーしていた選手よりも印象は薄くなりがち。その辺りが投票結果としてどう現れるか、注目したい。

【表】2020年セ・リーグの「UZR」トップ10一覧

【表】2020年セ・リーグの「UZR」トップ10一覧 signature

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

© 株式会社Creative2