TM NETWORK 伝説のラジオ番組「SF Rock Station」が復活、ついに3人勢ぞろい! 1986年 10月7日 東海ラジオで小室哲哉の「SF Rock Station」の放送が始まった日

伝説のラジオ番組「SF Rock Station」

TM NETWORKの3人が一夜限りで、伝説のラジオ番組『SF Rock Station』を復活!
―― ある日、そんな驚きの一報が飛び込んできた。

『SF Rock Station』とは、1986年~93年まで、氷室京介や岡村靖幸らトップアーティストたちがDJを務め、人気を博した東海ラジオの伝説の番組だ。その火曜日の初代パーソナリティを務めたのがTM NETWORK。1986年~88年を小室哲哉が、1988年~89年を木根尚登が担当。

デビュー35周年のアニバーサリーイヤーとなる今年、最後の締めくくりとして、久々に公の場で3人が揃うこと、しかもそれがこの『SF Rock Station』ということに興奮と感動が止まらなかった。

ファン(FANKS)の中にはオンエア当時はまだ幼くて聴けなかった… とか、後になって番組の存在を知った… という人も多かったことだろう。ということで、そんなFANKS必聴の番組『TM NETWORK SF Rock Station 2020』のオンエア後の興奮冷めやらぬ中、当時、どんな番組だったのか、記憶を振り返ってみたいと思う。

目指すは名古屋の東海ラジオ、周波数は1332kHz

毎週火曜日は早寝して仮眠。深夜1時からの番組スタートに合わせて30分前には目を覚ます。速攻でラジカセのスイッチをオン。ダイヤルを回して周波数を合わせ、アンテナを伸ばしたり縮めたりしながら角度を探る…

目指す周波数は1332kHz、名古屋の東海ラジオだ。九州にいながら、とにかく必死で微調整を繰り返す。本当はベッドの中で聴きたいのに電波の入りが悪いときなんて、冬の寒さにも負けず、窓を開けてアンテナを出し入れする涙ぐましさと情熱(笑)。

なんとかアタリをつけてラジカセのスピーカーに耳を寄せると、かすかに聴こえてくる軽快なリズム…。「Self Control」のイントロだ。「今夜のお相手はFanks Dyna-Mix DJ小室哲哉です」という聴き慣れた声に、ほっと胸をなでおろす… これが私の毎週火曜日のルーティーンで、週に1度の楽しみ、深夜1時の『SF Rock Station』の始まりだった。

ラジオならではのアットホーム感、まるで楽屋を覗いてるよう!

人をいじるのは得意でも自分がいじられるのには弱くて「俺のことは放っておいてくれ」と言い放つ木根尚登。曲を茶化されるたびに「せっかく僕が作った曲なのに…」と本気でぼやく小室哲哉。来たり来なかったりのフリーダム、のんびりしたお喋りと思わぬところでツボって爆笑する宇都宮隆。

TM NETWORKのシリアスなライブや、カッコイイ世界観とは裏腹に… というか、「本当にこの人たちがあのステージ上の彼らなのだろうか?」と首をかしげてしまうほど、良い意味で “グダグダ” なトーク(笑)。

3人の素の姿と仲の良さが感じられて、ただただ楽しい2時間だった。バンドのサポートメンバーたちも準レギュラーとして出演。B'zとしてデビューする前のギタリスト松本孝弘、ベースの日詰昭一郎などなど次々に番組にやってきて繰り広げるトークは、まるで楽屋を覗いているかのようだった。

番組は洋楽紹介コーナー「スターズオン」からスタート。ほかにも小室が当時から愛してやまないアイドルたちの曲について語る「アイドルだってYou Can Dance」、「おとこ組」、「おねえさま組」などたくさんのコーナーがあった。「おとこ組」は当時、圧倒的に少なかった男性ファンの声を拾うためのコーナーで、なぜか「おねえさま組」だけは写真同封が必須条件だった(笑)。

ちょっぴり色っぽいお悩みコーナー「I'm Sexy」

トーク中心の深夜2時台、リスナーから寄せられるちょっぴり色っぽいお悩みコーナーが「I'm Sexy」だ。一応、宇都宮のコーナーというていではあったが、日詰扮するドクトル日詰がカウンセラー役を務め、ハガキを読むときには、ここぞというところでエコーがかかる演出にお腹を抱えて笑った。

みんなでリスナーの悩みにノリノリで答える雰囲気は、さながら男子校のよう。とはいえ、どんな色っぽい話でも、決して下品になりすぎなかったところは出演者たちの人柄によるものだったと思う。

番組から生まれた楽曲もあった。「神社でB」と「恋のながら族」だ。「神社でB」はリスナーのハガキに書かれた “神社でBしちゃいました” という話にツボった出演者たちが、それを元に作った曲。「恋のながら族」は当時のマネージャー井上氏の素行を茶化して作った曲で、なんとインディーズでリリースもされた。確か「土管でD」という幻の曲もあった(はずだ)。

番組から誕生した謎のバンド、ハンバーグ&カニクリームコロッケ

そして番組を機に、メンバーそれぞれが別の楽器に持ち替えて結成したバンド “ハンバーグ&カニクリームコロッケ” の存在を忘れてはならない。このユーモラスなバンド名はTM NETWORKのメンバーが大好きなファミレスのメニューからつけられたもの。

ギターはスーパーウェーブ小室、ベースをファンキーチョッパー木根、ドラムをバックオーライ宇都宮、リードボーカルをドクトル日詰が、それぞれ担当。当初は忙しい仕事の合間の遊びや息抜きで始めたものではなかっただろうか。それが番組をきっかけに前述した二曲が生まれ、まさか番組のイベントとしてライブまで開くことになってしまうとは…。

微妙すぎるライブ演奏はご愛敬。TM NETWORKのツアー中もコツコツ練習をしていたようで、そんな話もラジオの中でよく語られていた。いつも、何をするにも、ふざけているのに真剣で… 当たり前のことだけれど、子どもながらに「この人たち… 本当に音楽が好きなんだろうな」と思ったりしたものだ。

ただのラジオ番組じゃない、FANKSにとってかけがえのない場所!

今でこそTM NETWORKといえば手の届かない遠い憧れのような存在だが、この番組でのリスナーたちとの関係は常にフラットで、ポンポンなんでも言い合える空気だった。

例えばアルバム『humansystem』が発売されたときには、リスナーからの “1曲目はいいんじゃない?” とか “4曲目の「Human System」? イントロいいよ。ピアノうまいね” とイチイチ上から目線のレヴューが書かれたハガキを、これまたいちいち読みあげる小室の姿は本当におかしかったし、“I’m Sexyのコーナーが嫌い” というハガキも届いたり。辛辣な意見を送ってくる人たちも当然、メンバーの面白おかしい反応や返しが分かった上でのことだった。

そんなやりとりの一つひとつに、メンバーとFANKSとの信頼や絆の深さが感じられて、距離の近さがとても温かくて心地よかった。『SF Rock Station』は、ただのラジオ番組ではなく、メンバーたちと一緒になってわちゃわちゃできる、FANKSにとってかけがえのない場所であり、絆だった。

一夜限りのオンエア「TM NETWORK SF Rock Station 2020」

さて、2020年12月18日にオンエアされた『TM NETWORK SF Rock Station 2020』。19時ジャストに「エスエフ、ロ~ックステ~ション」という当時と変わらぬジングルが流れてきた瞬間、一気に中学時代にタイムスリップ。

あんな話やこんな話が目白押し… かと思いきや、やっぱり案の定、ほとんど当時を覚えていないTMの3人。「しっかり思い出して~!!」と叫びたくなった当時のリアルリスナーも多かったはず(笑)。

けれど、あの当時の3人がそのままそこにいるようで、変わらぬ自然体の彼らに、なぜだか安堵した。また、番組が進むにつれてここでしか味わえない懐かしのあのグダグダ感と、阿吽の呼吸、温かな雰囲気が戻ってきて嬉しく思えた。

そして何より、流れてきた曲の順番の意味。それは単なるリリース順ということではなく、当時、番組で小室がとにかく異様なほどプッシュしていた曲を、その時代順に流してくれたこと(一部楽曲を除く)。そこに、この番組を大切に思ってくれているスタッフの愛を感じて、胸が熱くなった。当時、決まってどこよりも早くこの番組で新曲を解禁し、私たちに届けてくれていた小室。初めて新曲を聴いた時のあのワクワク感が、はっきりと思い出された。

膨らむ期待、言葉の端々から感じたTM NETWORK再始動?

今後の活動についても話は及び、個人的には言葉の端々からTM NETWORK再始動へのメッセージを受け取れたような気がした。

1986年。ちょうど「これから駆け上がって行くぞ!」という勢いの真っ只中で始まったラジオ番組『SF Rock Station』。そして今回オンエアされた『TM NETWORK SF Rock Station 2020』から、また新たなTM NETWORKの物語が始まれば、それはとても素敵なことだと思わずにはいられない、とても素晴らしい夜だった。

今ではradiko(ラジコ)というとても素晴らしいアプリがあって、どこにいてもラジオが自由に聴ける時代だ。砂嵐のようなノイズに邪魔されることもなく、アンテナや周波数の心配もない。しかも今回、聴き逃した人にはタイムフリーもあり、1週間は聴くことができる。ぜひ、今現在のメンバーたちからどんなトークが飛び出したのか、チェックしてほしい。

最後になるが実は私も当時、番組にハガキを送ったことがあった。運よく採用されて宇都宮さんと松本孝弘さんが大盛り上がりで読んでくれた。なんのコーナーだったかって? それは墓場まで持っていこうと思う(笑)。

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カタリベ: 村上あやの

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