指標は上回るも2年連続で逃したGG賞… 中日・京田が自ら明かす“坂本との差”とは?

中日・京田陽太【写真:小西亮】

昨年は57票差、今年は198票差「やっぱり今年は無理でしたね」

守備の名手に贈られる「三井ゴールデン・グラブ賞」が18日に発表された。セ・リーグの遊撃手では、巨人の坂本勇人内野手が2年連続で受賞。初受賞を目指した中日の京田陽太内野手は、2年連続で次点と届かなかった。守備のデータ指標では昨季に引き続きわずかに上回ったものの、得票数では198差と大差に。京田自身は、この差をどう感じているのか。

吉報は届かず、淡々と受け入れる。「ちょっとは期待していましたが、やっぱり今年は無理でしたね」。今季は120試合1047イニングに出場するも、遊撃手ではワーストの13失策を記録。坂本は115試合出場で883イニングと15%ほど出場機会は少なかったが、4失策にとどめた。「まぁ、エラーですよね……」。“見た目”の数字でも劣っていることは、京田も分かっていた。

ゴールデングラブ賞は、5年以上のプロ野球取材キャリアを持つ新聞社や放送局などの記者投票によって決まる。昨年は299票のうち坂本が167票を集め、2位の京田は110票。他のポジションと比較しても僅差の57票差だった。一方で今年は300票のうち坂本が245票、京田は47票と大きく開いた。

京田の「やっぱり今年は」という言葉の裏には、昨年の悔しさがある。端的に目に見える失策数や好守のイメージではなく、データ的観点から守備を総合的に評価する指標「UZR(Ultimate Zone Rating)」では、大きく上回っていた。

UZRとは、リーグの同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、どれだけの失点を防いだかを示す項目。セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータによると、昨季は京田がリーグトップの「16.6」で、坂本は「-2.4」だった。今季は坂本が「10.0」に対し、リーグトップの京田が「10.1」とわずかに上回った。

越えられない坂本の壁「どんなバウンドでも同じように捕っているように見える」

データ的には“当確”ながら、越えられない坂本の壁。「柔らかさやハンドリング、足さばき。どんなバウンドでも同じように捕っているように見える。スローイングも安定していて、捕ったらアウトという感じなのはすごいです」。発展途上の自分と、円熟味を増す坂本との違いを感じる。

失策数の増加は、守備位置を下げた代償なのは分かっている。深い位置で捕球する分、一塁でセーフにしてしまう確率は上がる。「今まで投げた事のない距離。当然焦りましたし、その恐怖心に打ち勝つことができませんでした」と素直に認める。

当然、批判もあった。それでも信じて貫いた。「挑戦した1年なので。もちろんエラーが少ないに越したことはありませんが、エラーしたくないと思って消極的になるのはイヤ。間違いなく追いつける球は増えているし、果敢にいきたい」。年々その貪欲さは増す。「来年はどれだけ下がれるか楽しみです」と変化していく自らに期待する。

「正直、ゴールデングラブを獲れるかなと思った」という昨オフ。悔しさのあまり、取材で思わず「打てばいいんでしょ」と言ったことを反省する。「記者さんは毎日試合を見てくれているわけですから。僕はこれからも素直に結果を受け入れていくだけです」と穏やかに笑う。

気持ちも変わった。「これまでは絶対にゴールデングラブを獲りたいって思っていましたが、今は受賞というより、まずはピッチャーに安心してもらえるショートになりたいなと」。好プレーの直後、ベンチに戻ってくると「ありがとう、助かった」。チームメートからそう言ってもらえたことが何よりうれしかった。たとえ勲章は手に入らなくても、信頼だけは失いたくない。(小西亮 / Ryo Konishi)

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