【速報】IBF世界ミドル級タイトルマッチ〜ゲンナディー・ゴロフキンvsカミル・シェルメタ

かつて20連続でその王座を守ってきた無敵の王者トリプル・ジー(GGG)こと、ゲンナディー・ゴロフキン。カネロ・アルバレスとの第二戦で敗れてタイトルを失ったものの、 2019年10月にIBF王者に返り咲き 、今回が改めての初めての防衛戦。スポーツ動画専門配信サービスのDAZNの独占中継だ。

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[GGG(ゲンナディ・ゲンナディヴィッチ・ゴロフキン)王座返り咲きは? - dino.network | the premium web magazine for the Power People by Revolver,Inc.]

衰え始めたかつての名王者を世界が舐め始めた?

42戦40勝(35KO)1敗1分のレコードを持つゴロフキン。完璧な戦績の汚点?となる1敗1分はカネロ・アルバレスとの2連戦によるものだ。1982年4月8日生まれの彼にとって(シェルメタとの試合当日はなんと38歳ということになる)、いかに頑健な肉体と旺盛な気力を持っているとしても、リングに立ち続けていられる時間はそうはない。アルバレスとの三度目の対戦を実現させて、自分のレコードに傷をつけた借りを返すならば、もはや回り道をしている余裕はないはずだ。

IBF王座を奪還したデレビャンチェンコ戦 では、ゴロフキンの攻撃力を恐れず圧力をかけ返したデレビャンチェンコの勇気とパワーに手を焼き、判定に持ち込まれた。その様子は、ゴロフキンの加齢による衰えを観ている全ての者に感じさせたのではないか?

ゴロフキンは、構えはオーソドックスで、トリッキーな動きもない。ディフェンスがそれほどうまいわけではなく、わりと打たれることも多いのだが、身体(筋肉)がよほど柔らかいのだろう、パンチを受けてもあまり効いた感じがしない。
そして、石が入ってるんではないか?と言われるくらい“硬い“剛拳を振るう攻撃的なスタンスで(特に、ストレート並みの威力を持つ左ジャブを執拗に振るうことで)、常に相手に圧力をかけていく。結局、その猛烈な圧力によって相手に手を出す隙を与えず、相打ちになっても自分にはあまり効かず、相手はダメージを受けていくことで、大勢を抑えていくというのがゴロフキンのスタイルなのである。
いわば、攻撃は最大の防御を地でいくタイプだ。
(だから、カネロとの第1戦ではこの圧力を受けきれなかったカネロはゴロフキンに圧倒されたが、ゴロフキンが衰えたのか それとも鍛え直したカネロの若さが上回ったのか、第2戦ではゴロフキンに逆にプレッシャーをかけ返したカネロに、ゴロフキンは屈することになった)

勝ちはしたものの、かつての強さはもはや過去のもの、ゴロフキンはすでにピークを過ぎたロートルなボクサーなのだ、と思った者は多かったように思う。

KO率は低いものの、タフさを誇る無敗の挑戦者シェルメタ

コロナ禍の影響もあって、IBF王座奪回してから1年2ヶ月ものブランクをあけることになったゴロフキンに挑戦することになったのは、ポーランド出身のボクサー、カミル・シェルメタ。1989年10月11日生まれの彼は、それほど若いとも言えないが、少なくともゴロフキンよりは若い。これまで21戦して21勝5KO無敗。KO率こそ低いが、これまでプロのリングでダウンしたことがないタフさが売り物だ。

下馬評ではゴロフキン有利だが、ゴロフキンを破ったときのカネロやデレビャンチェンコに倣って、パンチを受けても下がらずにプレッシャーをかけ続けてゴロフキンを下がらせるという戦い方ができれば、番狂わせの可能性はあるかもしれない。
ゴロフキン自身、自分が衰えているという見方を覆して、自分の商品価値を再度高めるためにも良い勝ち方を欲しているから、多少強引でも倒しにかかってくるに違いない。その攻勢を逆手にとってカウンターを当てていくことがシェルメタには求められていた。

結果はゴロフキンの圧勝だが・・

試合は無観客試合として行われた。
DAZNによって世界に配信されるため、それなりの賑やかさと華やかさを与えられた会場はそれほどの寂しさは感じられない。(もちろん大観衆の熱気を感じながら闘えることのアドレナリン噴出ぶりは恋しいが)観客を設けないことにより、今後はこうしたスーパーファイトを開催できる“箱(会場)”の選択肢が増えるだろうから、配信のみを前提とした催しがイベント戦略のみを軸となることで、興行ビジネスは新しいカタチへと進化していくのかもしれない。

そんな環境の中、いつものように屈託のない笑みを満面に浮かべながらゴロフキンは入場してきた。対するシェルメタはかなり緊張した面持ち。

ゴロフキンに勝つには、彼の攻撃力やタフネスを舐めてかかる必要があるのに、シェルメタには、伝説的な王者とあいまみえることへの敬意しかないように見える。

果たして試合が始まると、カネロやデレビャンチェンコがトライしたようにゴロフキンに圧力をかけ返すことができないシェルメタは、ただまともにゴロフキンの前に立ち続け、結果としてゴロフキンの強打を受けまくるだけになった。ゴロフキンは多少打たれようがグイグイ前に出てくる。柔軟なカラダに支えられた打たれ強さと剛拳を信じて止まないそのスタイルに対抗するには、彼を下がらせるしかないのだが、シェルメタはゴロフキンにとって最もやりやすい距離に身を置いたまま打たれる。シェルメタのパンチもゴロフキンを捉えるが、ゴロフキンを下がらせるだけのパワーが込められていない。

結局、シェルメタはダウンを繰り返し、やがて心を折られてしまう。
7ラウンドが終了したところで試合を投げ、コーナーから立ち上がろうとはしなかったのである。

こうしてゴロフキンは第7ラウンドTKO勝ちを収め、通算21度目の王座防衛(現有のIBFタイトル防衛としてはV1)を果たした。

形としては圧勝となり、ゴロフキンここにありという狼煙をあげることに成功したので、カネロとの第3戦への実現性は高まったかもしれないのだが、僕自身は 今回の試合はシェルメタが為すべきことを為さなかった、勇気を振り絞ってゴロフキンからのプレッシャーを押し返して彼を下がらせる展開を実現できなかっただけ、という感じがしていて、ゴロフキンの衰えを否定することにはなっていない、という気がしている。(もちろん、グローブに石が入っているのではないか?とさえ言われた豪打は健在だったが、それでも相手の意識を断ち切るような勝ち方ではなかったし)

ゴロフキンというボクサーは大好きだし応援しているのだが(だからまだ引退せずにもうしばらく輝きを放って欲しいと思っているのだが)、今回の試合は単に真面目な男
(シェルメタ)が自滅しただけの結果にみえて仕方なく、ゴロフキンの力の証明にはなっていないのではないか?と思っているのである。

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小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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