あの路面電車、小田原に「ただいま」 64年ぶり長崎から帰郷「市内線モハ202号」、資金はCFで

トレーラーに搬送されて国道1号を移動する「小田原市内線モハ202号」=小田原市南町

 64年ぶりの「ただいま」-。かつて神奈川県小田原市内を走っていた路面電車の車両「市内線モハ202号」が19日早朝、なつかしの城下町に帰郷を果たした。1956年に小田原で路面電車の営業が終了後も長崎市内で現役として活躍。昨年に引退した。

 小田原市内線を走った現存する唯一の車両で、有志でつくる「小田原ゆかりの路面電車保存会」が、長崎電気軌道に譲渡を要請。クラウドファンディング(CF)で調達した資金で長崎からの輸送費を賄った。車両は16日午後にトレーラーで搬送されて長崎を出発していた。

 CFでは目標額を上回る善意が寄せられた。同会の小室刀時朗会長は協力に感謝。無事帰郷が実現し「まずはひと安心」とほっとした様子だった。車両は来年2月に同市南町にオープンする交流施設に展示されることが決まっており、「路面電車を多くの人のために活用したい。会の責任も重大」と気を引き締めた。

 交流施設の敷地内への搬送作業を見守った女性(68)は市内線の営業終了時に装飾を施した「花電車」に乗ったことを覚えている。「飾りがすごかった。帰郷した車両を前にお年寄りが昔話をできるし、子どもにも路面電車の歴史を伝えたい」と話した。

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