メクル第514号 多くの仲間で航空機飛ばす グランドハンドリング 井川誠二さん

「仲間で一つの航空機を飛ばしているという“つながり”がいい」と話す井川さん=大村市、長崎空港

 空港で航空機が到着(とうちゃく)してから、再(ふたた)び飛び立つまでの間の地上業務(ぎょうむ)を担(にな)っています。
 まず着陸した航空機を駐機場(ちゅうきじょう)まで誘導(ゆうどう)し、停止させます。乗客の手荷物など貨物を積み降(お)ろしたり、ターミナルと航空機をつなぐ「パッセンジャーボーディングブリッジ」を取り付けたりします。最後は、バックできない航空機を大型車両で押(お)し出し、滑走路(かっそうろ)まで移動(いどう)させる「プッシュバック」を行います。これら全てがグランドハンドリングの仕事です。

到着後、乗客の手荷物を素早く降ろします

 ◆時間と安全守る
 1機を主に4人で担当(たんとう)します。今は新型コロナウイルス禍(か)で減便(げんびん)になっていますが、多い日には1日13便をこなしていました。
 駐機場へ航空機を誘導する「マーシャリング」は、両手にオレンジ色のパドルを持ってサインを送ります。「機長に見やすく分かりやすく」を意識(いしき)しています。
 手荷物の積み降ろしは丁寧(ていねい)に。出発の荷物は1個(こ)でも違(ちが)えば離陸(りりく)できないので、数と行き先の確認(かくにん)も慎重(しんちょう)にしています。
 空港では安全上の理由などから航空機は前進しかできないため、プッシュバックが必要になります。乗客が乗っている航空機を動かすので、押し始める時と停止時の衝撃(しょうげき)を小さくするよう気を配っています。経験(けいけん)を積まないとできない業務。初めて押した時のうれしさは、今でも覚えています。
 どの業務も、全て航空機の定時出発と安全のため。私たちは、それを支(ささ)える縁(えん)の下の力持ちのような存在(そんざい)です。着陸から離陸まで30~40分間が勝負。離陸する航空機に手を振(ふ)る時は疲(つか)れを感じるとともに、無事に出発してもらえたと、ほっとする瞬間(しゅんかん)でもあります。乗客が手を振り返してくれるのもうれしいです。

機体をプッシュバックするため、特殊車両「トーイングカー」を接続

 ◆修学(しゅうがく)旅行で興味(きょうみ)
 高校2年の冬、修学(しゅうがく)旅行先の韓国(かんこく)から長崎空港に到着した時、機内から荷物を降ろすスタッフを見て「やってみたい」と興味(きょうみ)が湧(わ)きました。飛行機の一番近くで働く仕事に迫力(はくりょく)を感じました。
 卒業後、18歳(さい)で空港業務の会社に入社。手荷物の仕分けや積んだ荷物の運搬(うんぱん)など、貨物に関する仕事をしました。24歳で今の会社に入り、26歳から本格(ほんかく)的にグランドハンドリングを担当しています。

パドルを持ち、着陸した航空機を誘導するマーシャリング

 ◆人とのつながり
 当初は覚えることがたくさんで必死でした。機体のドアを開ける業務一つとっても、乗客用と貨物用のドアを開けるのでは別の資格(しかく)が必要。貨物を運ぶ、プッシュバックのための特殊(とくしゅ)な車両も運転するので、それぞれ免許(めんきょ)も取らなければいけません。全部で約20種以上。日々勉強です。
 この仕事は1人ではできません。多くの仲間で一つの航空機を飛ばしています。それはグランドハンドリングだけではなく、空港カウンターや整備(せいび)のスタッフ、全員の力です。どこが欠けても飛ばせない。「仲間でやっている」という人とのつながりを感じられるところがやりがいです。
 今は、後輩(こうはい)を指導(しどう)する教官も担(にな)っています。どう伝えたら頭に入っていくのか、相手のことを考えながら教えるようにしています。自分自身も若(わか)い人の意見を聞いて、考えを広げていきたいと思っています。

© 株式会社長崎新聞社