津波警戒区域に藤沢、大磯、二宮追加ヘ 神奈川県、避難対策を強化 

海水浴客らに避難を呼び掛ける「津波フラッグ」の実演が行われた大磯町の津波避難タワー=2020年8月

 東日本大震災の教訓を生かし、津波避難対策を強化する「津波災害警戒区域」の指定地域に、藤沢市と大磯、二宮両町が加わる見通しとなった。神奈川県は本年度中の指定を目指しており、各市町は指定後、ハザードマップの改定などを進める。警戒区域の指定は、沿岸部のイメージ低下への懸念などから全国的に遅れているが、東京湾沿岸も含め計15市町が対象の県内では、これで相模湾沿いの6市町に区域が拡大する。

 県は2019年3月、各市町の意向を踏まえ段階的に警戒区域を指定する方針を策定。これを基にモデル地域として同12月、小田原市と真鶴、湯河原両町に指定した。藤沢など3市町はこれに続く指定エリアとなる見込みだ。

 3市町とも津波の影響が最も大きくなるのは、相模湾に延びる相模トラフで巨大地震が起きた場合とされる。11メートル超が見込まれる藤沢市は「警戒区域となる沿岸部を対象とした住民説明会を来年1~2月に開き、対策をさらに進めるきっかけにしたい」と指定を目指す理由を説明。大磯、二宮両町はともに17メートル超の津波が3分で押し寄せるとの厳しい予測が示されており、「最新の想定を反映したハザードマップに改定する」(大磯町)、「浸水想定域が内陸まで広がっているのは小田原市に隣接するエリア。同市が既に警戒区域に指定されていることを踏まえ、対策をある程度そろえたい」(二宮町)などと指定後の取り組みを描いている。

 警戒区域は11年12月に制定された津波防災地域づくり法に盛り込まれた仕組みで、津波からの警戒避難態勢を整備することが目的。指定主体は都道府県だが、指定は義務ではない。沿岸部のイメージ悪化や地価下落を懸念する地域もあり、今年10月時点の国土交通省の集計では、17道府県の計246市町村にとどまっている。

◆津波災害警戒区域
 指定地域では、押し寄せた津波が建物にぶつかった状況を想定した詳細な「基準水位」が地点別に明らかにされる。市町村はこれを基にハザードマップを作製し、避難場所の選定や見直しに役立てる。浸水想定区域内の学校や病院、福祉施設、地下街などは避難確保計画の策定が義務付けられ、区域内の宅地や建物を売買する際は重要事項説明が必要になる。開発行為の規制が加わる「津波災害特別警戒区域」も指定できる。

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