【速報】サウル・カネロ・アルバレス、18cmの身長差を跳ね返してWBA・WBC世界スーパー・ミドル級王座を統一(12R判定勝利)

元6階級王者のオスカー・デラホーヤ率いるゴールデンボーイ・プロモーションズとの契約を解除してフリー(として英国のスポーツ動画専用配信サービス DAZNと直接契約)になったボクシング界きってのスーパースター、サウル・カネロ・アルバレスが、自身が持つWBC世界スーパー・ミドル級タイトルを賭けて、対立団体であるWBA世界スーパー・ミドル級王者のカラム・スミスと激突した。

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長身のWBA王者に対してP4P常連のカネロ・アルバレス

173cmのカネロ(スペイン語でシナモンを意味する。赤毛のアルバレスについたニックネーム)に対して、191cmのスミス。2人の身長差は(および、リーチ差も同様に)実に18cm!
雄大な体格を誇るカネロにしても、この身長差は厄介だと思われるが、実績から見るに、カネロが不利と思われるデータはこのくらい。P4P(パウンド・フォー・パウンド。仮に階級差がないとしたら誰が1番強いかを考えたランキング)の上位の常連であるアルバレスならば、これまで無敗の長身スミスをも容易く攻略するだろうという見方が大勢を占めていた。

スピードを維持しながら、より重いクラスでも通じるパワーを維持してきたアルバレス

世界に暗い影を落とし続ける新型コロナウイルス感染症の流行(パンデミック)によって、長らく試合を組んでもらうことができなかったカネロ・アルバレス。1年1ヶ月ぶりの試合は、スーパー・ミドル級(160 - 168ポンド =72.575 - 76.204kg) のメジャー2団体(WBAとWBC)の王座統一戦となった。

スーパー・ミドルと言えば全17階級中4番目に重い階級であり、日本人からすれば完全に重量級の部類に入る。173cm(175cmとも言われるが、173cmのほうが実際に近いだろう)のアルバレスは、スーパー・ミドルの平均身長である180-183cmに大きく見劣りするが、胸板の厚さや腕の太さなど、体幹の強さで、このクラスでも力負けをすることがない。(191cmのスミスは逆に規格外とも言えるが、その分“厚み”には欠けるということになる)

カネロは、スーパー・ウェルター級(147 - 154ポンド =66.678 - 69.853kg)からキャリアをスタートしたが、スピードを落とすことなく、巧みに(ミドル級、そしてスーパー・ミドル級に)階級を上げてきた。何度も繰り返しているように身長的にはウェルター級でもそれほど大きい部類には入らないが、どのクラスでも通じるパワーを発揮してきた。結果的に階級を上げれば上げたなりに、スピードを犠牲にすることなく、どの階級でも通じるだけの パワー を獲得してきた。
もともとカネロは防御もうまく、高いテクニックを誇っているが、重いクラスにステップアップしてもパワー不足に陥ることないので、足で逃げるような試合巧者ぶりに転身することなく、常に真っ向勝負、相手にプレッシャーをかけ続けるアグレッシブな試合ぶりを見せてきた。(唯一の敗戦は メイウェザーの老練さに翻弄されての判定負けだが、この試合で受けた屈辱はカネロをさらに高度なファイターに進化させ、彼がディフェンス中心のメイウェザーの狡猾さを真似るようなことにはならなかった)
これがカネロを世界的なスターに押し上げた要因であると思う。ゴロフキンにも言えることだが、試合に勝つことを念頭に置いた 安全運転的な戦い方より、相手をぶっ倒してやる!という剥き出しの闘志を見せてくれるボクサーに、大抵の観客は惹かれるものだ。ケレン味なく、常に前に前にと出るカネロは、かつてのタイソンにも似て、時代を超えてアドレナリンを暴発させてくれる“熱さ”を与えてくれるのだ。

試合速報: アルバレスの判定勝利

スタンディングダウンはとらない(立ったままでのカウントをとることはしない)というルールで始まったこの試合、下馬評どおり カネロ・アルバレス がスミスを圧倒して、 3-0の判定勝利 を収めた。

オーソドックス(左手を前に出す、右利きの構え)の2人。長身のスミスに距離を遠くとられるのは厄介だ。アルバレスは両腕を高く堅く保ちつつ、いつものとおりアグレッシブに間合いを詰めては手を出す。
背の高いスミスは、射程の長いジャブとストレートを主体とした正攻法のスタイルでカネロを突き放そうと試みるが、カネロは構わずどんどん前に出る展開。

互いに強打の直撃はないが、ポイントでは攻め続けているカネロが抑えているようにみえる序盤戦だ。

カネロがダイソンと異なるのは、属する階級からすると背が低い部類に入る体型は同じながら、ダイソンが一気に距離を詰めて踏み出しながらパンチを振るい、フットワークが拳を追いかけるような動きを武器にしているのに対して、カネロはむしろ確実に近づいてからしっかりと足裏で踏み込み反動を生かしながらパンチを出すところだろうと思う。もちろんどちらも近接距離での破壊力のある攻撃は巧みだが、混戦で打ち負けないのも、相手を下がらせるだけのプレッシャーのかけ方をするのもカネロの方だ。

スミスは必死に長い腕を振り回すが、カネロの前進を止めることはできず、あっさりと距離を詰められてしまう。近い距離だと自分の背の高さが逆に不自由さを生むので、スミスは屈むような体勢をしてカネロと頭の高さを合わせざるを得なくなる。その結果、カネロのパンチを顔に受ける回数が多くなるという悪循環に陥る。

お互いに強打のクリーンヒットは少なく、相手をぐらつかせるようなシーンもないのだが、徹頭徹尾カネロの攻勢が目立った試合だった。

KO勝利を遂げたゴロフキンに比べると地味な結果になったと言えなくもないが、僕の見立てでは、カネロは30歳にしていまだ強さのピークを保っているとみえた。

[【速報】IBF世界ミドル級タイトルマッチ〜ゲンナディー・ゴロフキンvsカミル・シェルメタ - dino.network | the premium web magazine for the Power People by Revolver,Inc.]

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小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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