好きな人と結婚したはずなのに…お金の価値観が一度も噛み合わなかった結婚生活の末路

片思いすること2年、ひょんなことからつきあうことになり、さらには結婚まで。大好きな彼とそんなことになったらうれしくてたまらないはず。ところが結婚からその後の生活に至るまで、なんとすべての費用を彼女が出すことになってしまったら……。


大好きだった人とつきあえることになって

学生時代、少しだけつきあったことのある彼と、30歳を過ぎて再会。未練が再び恋心となり、ずっと片思いをしていたというのはアユミさん37歳。

「再会してから当時のグループで定期的に飲み会をやるようになったんです。その日だけは残業を断っても出向いていました。彼が来る可能性があるなら、と。だけど私、どうも恋愛がうまくいかない20代を過ごしていたので、自分から積極的に出ることはできなかったんです」

月に1度ほどの会合が楽しみでしかたなかったとアユミさんは言います。グループでSNSを使って情報交換や近況報告もしていましたが、そこにも彼が投稿するとつい反応して熱く語ったこともあります。それでも自分からデートに誘うことはできませんでした。

ところが2年ほどたったとき、いつも7,8人集まるのに3人しか来られない日がありました。うちふたりはアユミさんと彼。ゆっくり食事をしていると、もうひとりの男友だちに会社から緊急の呼び出しがかかりました。

「ふたりになってしまって、私としてはラッキーと思ったけど、同時に緊張感が走りましたね。彼のほうはまったく変わらない様子でした。ここで親しく話しておかないと距離が縮まらないと焦った私は、あまり飲めないお酒の力を借りて、大学生当時の話や趣味の話を一生懸命したんです。彼もだんだん乗ってきたんですが、ふとしたときに『オレたち、どうして別れちゃったんだっけ』と言い出して。お互い就活が忙しくて、なんとなく疎遠になったと私は記憶していたんですが、彼は私が冷たくなったと言うんです。それはない、だって今だって、と言いかけて思わず黙ると、彼が『オレもアユミちゃんのこと思ってたよ』って。思わず涙があふれました」

彼女の涙を見て彼は焦り、ふたりで大笑いしたそうです。この日からふたりはつきあい始めました。

結婚はしたものの

それから1年ほどつきあい、彼女も35歳という年齢が近づいていることを意識しました。結婚して子どもがほしいと思ったのです。

「仕事も好きだけど、やはり家庭をもちたいという思いが年齢とともに強くなっていったんです。彼は結婚するつもりがなさそうだったので、いちかばちかで『35歳までには結婚したい』と訴えました。すると彼はわかったって。なんの抵抗もなく、そこからトントン拍子に結婚に行き着きました」

特に式は挙げず、簡単なパーティのみにしたのですが、前払いの締め切り日が近づいてきたとき彼は出張で不在。しかたなく彼女が振り込みました。

「私が広めの1LDKに住んでいたので、彼が私のところに引っ越してくることになったんです。新婚旅行はイギリスに行ったんですが、旅行代金は私が振り込みました。なんとなくお金のことがうやむやになっているのが気にはなったんですが、ふたりとも仕事をしながらだし、特に彼は当時忙しかったので、あとできちんと話そうと思って日にちが過ぎていきました。新婚旅行先でも食事代など、ほとんど私が支払ったんです。彼は英語が苦手だし旅行中にケンカするのもいやだから、黙って払いましたけど」

帰国して始まった日常生活は楽しかったと言います。何より大好きな彼と一緒に暮らせるのですから、彼女も張り切っていました。ただ、家賃や光熱費は今まで通り彼女の口座から引き落とされていきます。彼は自ら食事を作ったりはしなかったので、彼女は仕事帰りにスーパーに寄って食材を買って帰ります。結局、彼から生活費をもらうことはありませんでした。

子どもができて話したお金のこと

「1年ほどで妊娠したんです。将来のこともあるし、さすがにこのまま黙っているわけにはいかないと思って彼に生活費のことだけどと切り出したら、彼は『子どもってお金かかるんだよね』『オレ、子どもなんていらなかったのになあ』って。私、心底びっくりして声も出ませんでした」

彼はなぜ自分と結婚したのか。彼女の頭の中をそんな思いが駆け巡りました。すると彼は、「でもしょうがないよね。子どもができたら車を買い換えようかって。いや、そういう問題じゃない。むしろ車は手放してもいいくらい。私はずっと生活費を負担してきて貯金を切り崩して生活しているのにと思い切りぶちまけたんです。すると彼、『オレ、結婚したかったわけじゃないし』って」

彼女はもう無理だと家を飛び出しました。でもふと考えたのです。ここはもともと私が借りて住んでいる家だ、と。そこで義父母の家に行って、今までかかったお金のことなどすべてを話しました。結婚前後にかかった費用、新婚旅行代、その後の生活費などで彼女は500万円ほど出していました。せっせとためた貯金も底をついています。

「義父母は、それでどうしたいのと言うので、このままだと子どももかわいそうなので別れたいと言いました。すると義父母はわかった、お金は明日振り込む。あなたが帰宅したときは息子がいないようにしておくからって」

そのまま家に帰ってみたら、確かに夫はいませんでした。そして翌日には500万円を振り込まれ、その数日後には離婚届が送られてきたのです。

「妙に手回しがいいなという感じでした。義父母からすると息子に従わない嫁はいらないということだったんでしょうか。彼、相当甘やかされて育ったんでしょうね。何でもそうやって親に尻ぬぐいしてもらってきたんでしょう」

養育費をもらっても、父親には会わず…

離婚はしたものの、産まれた子は夫の子です。弁護士を立てて認知はさせました。養育費も月に5万円と決めましたが、おそらく義父母が払っているとアユミさんは思っています。義父母は孫の顔を見たがったので連れて行ったこともありますが、夫は一度も自分の娘の顔を見ていません。そして、そんな息子を諫めることもしない義父母。その奇妙な親子関係を、今もアユミさんは不思議に思っています。

「息子は2歳になりました。ひとりで育てるのは大変でしたけど友人知人の手を借りながらなんとかここまでやってきました。勤務先も非常に理解があったので助かっています」
夫ともう会うことはないかもしれないけど、それでも「大好きだった記憶」は忘れず、いつか息子に伝えたいとアユミさんは考えているそうです。

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