非開門で基金案「最良」 諫干問題 農相、長崎県など視察

営農状況などについて説明を受ける野上農相(中央左)=諫早市、中央干拓地

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査を巡り、野上浩太郎農相は20日、9月の就任後初めて長崎、佐賀両県を訪れた。農相は両県での意見交換会の場で「有明海の再生に全力を尽くす」としつつ、開門によらない基金での和解を目指すという「2017年の大臣談話に沿って進めるのが最良の方策」と従来の方針を繰り返した。
 農相は同日午前、諫早市の中央干拓地を訪れ、営農者から環境保全型農業の進捗状況などを聞いた後、同市内のホテルで中村法道知事らと意見交換。中村知事は同事業の防災面での効果や、カキやアサリのブランド化などについて説明し、関連訴訟の非開門での早期解決、干拓地調整池の水質改善などを要望した。
 午後には佐賀県入りし、佐賀市内の有明海漁業協同組合本所で山口祥義知事らと面会。山口知事はタイラギなど二枚貝の復活に向けた養殖の取り組みなどを説明。「有明海の再生には開門調査を含む環境変化の原因究明が必要」と強調した。
 その後、同市内のホテルでは開門派漁業者ら約30人と意見交換。馬奈木昭雄弁護団長は国に対し、裁判所からの和解協議に応じるよう求めた上で、広い立場の人が参加できるよう国からの積極的な働き掛けも要請した。農相は「昨年10月に江藤前大臣が申した通り、さまざまな立場の関係者がバランスよく参加するのであれば、一堂に会して話し合うこともあってよいと考えている」と述べた。

野上農相と意見交換する中村知事(前列右から2人目)ら地元関係者=諫早市、ホテルグランドパレス諫早

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