石原さとみ主演「人生最高の贈りもの」プロデューサーが語る、この時代における本作の意義

テレビ東京系では2021年1月4日に、新春ドラマスペシャル「人生最高の贈りもの」(午後8:00)が放送される。本作は、石原さとみ主演、石橋冠監督、岡田惠和脚本でおくる、余命宣告を受けた女性と、彼女を取り巻く家族の絆を描いたヒューマンストーリーだ。作品にほれ込み、制作に携わった田淵俊彦プロデューサーが、その魅力を語った。

東京の小さな洋館に暮らす元大学講師の翻訳家・笹井亮介(寺尾聰)は、妻に先立たれ1人暮らし。今では、家事も料理も完璧にこなすが仕事は自由奔放で、〆切を守らない亮介に担当編集者・野村(勝地涼)はいつも隣で頭を抱えていた。近所に住む原口光代(キムラ緑子)は、亮介の亡き妻から「主人をよろしく」と頼まれたのを口実に、毎日家に上がり込んでいる。一方、亮介の一人娘・田渕ゆり子(石原さとみ)は、長野県安曇野ののどかな町で、亮介の元教え子であり、教師をしている夫・繁行(向井理)と暮らしていたが、突然、東京の実家に現れる。驚く亮介は理由を尋ねるが、一切語ろうとしない。これまで話をあまりしてこなかった父娘だったため、2人の間にはぎこちない雰囲気が漂う。こうして突如始まった父と娘の2人暮らし。温かく穏やかに過ぎていくが、実は娘の人生に残された時間はわずかだった。娘が胸に秘めていた決意とは?

これまで数多くのドキュメンタリーやドラマを手掛けてきた田淵プロデューサーは、“日常の中の非日常“を一つのテーマとして掲げてきたという。「その点では、今回の岡田さんの脚本はドンピシャだったんです。そして岡田さんの脚本が素晴らしいのはもちろん、監督を務めていただいた石橋冠マジックもとても大きかったと感じています」と熱弁する。

石橋監督といえば、山田太一氏、倉本聰氏といった脚本家と組み、多くのドラマ作品を生み出してきた大ベテラン。田淵プロデューサーは「俳優の能力を、100%から一気に200%まで引き上げるようなところがありました」と述べ、「今のテレビドラマってカット割りが激しかったり、俳優さんに合わせてカメラが動いたりしますよね。今回は“フィックス”といって、カメラが固定されているんです。だから、俳優はカメラのフレームからはずれないように演技をしないといけない。そういう舞台演劇に近い手法を要求していました」とその演出手法を振り返る。

そして、「私は『池中玄太80キロ』(日本テレビ系)などを見ていた世代なので、ホームドラマを演出させたら石橋冠監督の右に出る者はいないと今でも思っています。今テレビでは、ホームドラマってほとんど見かけないじゃないですか。そこにチャレンジしていくという意味では、このジャンルに一番長けた方にお願いしたいと思いまして、石橋監督に演出をお願いしました」と、ベテラン監督に依頼した経緯を明かした。

今回の撮影は2019年の秋頃に行われた。世界がまだコロナにより一変する前の撮影だったが、結果的に今の時代にピタリと合う内容になったと感じているそうで、「このドラマでは“人間は1人で生きているのではない”ということが描かれます。周りにいろんな人たちがいて、そういう中での触れ合いがありながら日々生活しているんだなとあらためて感じている人が、今現在とても多いのではないかと思うんです。そこで“日常の中の非日常”に突き当たった時、そばに誰かがいるということの意味を、より強く感じる時期なのではないか」と、現在の状況に寄り添う物語となったことに手応えを得ている。

さらに、もう一つ時代に合致した点を「少し前に“自分探しの旅”が盛んだった頃があります。でも今年、コロナ禍にあって、自分というのは自分自身の中にあるものであって、探しにいくようなものではないんだ、とあらためて気付いたんです。自分の内面と向き合い、深く考えていく時代に入ったのではないかと。このドラマの主人公・ゆり子が葛藤して、どうやって生きていくかを考え、出した結論というのも、自分自身と向き合って対話をして見つけ出した答えなんです。それは1人で導き出したものではなく、夫である繁行という理解者がいたことによって進む道を見いだしたんですね」と分析。

最後には「新年早々に、余命幾ばくもない人の物語を見たくないという方もいらっしゃるかもしれませんが、決して悲観的な物語ではありません。『人生最高の贈りもの』というタイトルは、誰に対してのどういう贈り物なのか、見てくださった方がそれそれ解釈をしていただければうれしいです」と視聴者にメッセージを寄せた。

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