金融機関や業者に敬遠される「新米サラリーマン大家」3つの特徴

2008年より不動産投資をスタートして、安定したサラリーマン人生をセミリタイアした安藤新之助さん。現在では3社の法人を経営しながら、都市銀行・地方銀行・信用金庫の合計9行の金融機関から、15億円超の取引実績を持たれています。前回では1棟目の物件を購入した話を聞きましたが、今回は安藤さんに不動産投資の要である、金融機関や業者との良好な関係構築方法を聞きました。


「事故情報」がつくと入居審査にも影響?

――新米のサラリーマン大家に対して、最低限知っておいてほしいことは?

1つ目は、「自分はオーナーであり、賃貸事業者でもあり、社長である」そのマインドを持つこと。「誰かに勧められたから買ったので、自分には責任はない」、そういう考えではいけません。このタイプは金融機関からも一番嫌われますし、不動産業者とも良い関係が築けません。

2つ目は融資に関してです。金融機関とは一緒に共存共栄していき、利益を分かち合う関係です。借りたら終わりではなく、そこから船出します。定期的に顔を出したり情報交換をするなどコミニュケーションを図り続けることが大事です。融資をしてもらった金融機関から「定期(預金口座)をつくってほしい」と言われたら、差し支えない範囲で応える。「貸金庫を利用してほしい」と言ったら借りてあげる。何か利益を分かち合う気持ちが大事です。

3つ目が、約束は必ず守ること。これは簡単そうでなかなかできない。例えば時間もそうです。「〇時〇分に行きます」と約束したら絶対に守る。先の「定期をやりましょう」「わかりました」なんていう世間話で軽く言われたことでも、先方はしっかり覚えています。ですから催促される前にこちらから申し出るくらいにする。「家賃が入ってきたら、できるだけ使わずストックしていきます」という内容をプレゼンをしておきながら、車や時計を買うなどしてはいけません。彼らはそういうところをよく見ています。

――購入前にできる金融機関対策はありますか?

高金利な自動車や商品等のローンやカードローン、クレジットカードのリボ払いなどは安易にしてはいけません。消費者ローンも含め、あらゆる借金は全て個人信用情報(クレジットやローン等の申し込みや契約に関する情報)に載ります。これは金融機関から必ずチェックされて、「自分の収入の範囲以内でやれない人なんだな」と映ります。私は一度も使ったことありません。

また、支払いの遅延などを一度でもすると「事故情報」として載ります。たとえば、スマホの分割購入をしていて、引き落としの日にうっかり口座にお金がなくても「事故情報」として掲載されるケースがあります。事故の履歴がつくと、融資どころか賃貸マンションの入居審査でも影響が出ることがあります。

――できれば一括で買ったほうがいいわけですね。

はい。できるなら一括で買ったほうがいいです。ただし、分割購入自体を金融機関が問題視することはないようです。一度問合せしたところ、そのような回答を得ました。ただ、高金利の場合お金に対する意識の低さを印象付けてしまう可能性は避けられないです。

――なるほど。ほかに初心者がしてはいけないことはありますか?

初心者に限った話ではないですが、嘘はつかないこと。2018年に世間を騒がせた不正融資問題では、金融機関に対しての「嘘」がありました。投資家自体に自覚のあるケース・ないケースがありますが、「うっかり忘れた」のと「悪意で言わない」のは、全然違うと思います。金融機関に対しては良いことも悪いことも含め、しっかり情報は開示しましょう。悪い情報については、それをどのようにリカバリーするのか提案しましょう。「聞かれなかったから……」というのは通用しません。

「融資アレンジ」で気をつけたいこと

――不正融資トラブルでは悪質な業者が問題になりました。収益専門業者による「融資アレンジ」はどうでしょうか。

業者に物件とセットで融資の手配まで依頼するのは、手間が省けて効率的ですから私は賛成です。ただ、それにおんぶに抱っこでは危険です。その良し悪しが自分で判断できるスキルは身に着けておかなければといけない。買えるからいい案件ではなく、事業として運営していくにあたり、良い物件なのかを見極めないと失敗物件をつかまされてしまいます。ここが大事ですね。

――では、どんな物件を選んだらいいですか?

賃貸需要があり満室経営ができる見込みのある物件です。たとえ山の奥にポツンと建っていても、そこに入居者がしっかり付けばいいでしょう。私がドミナント戦略(特定の地域で物件を買い集めること)にしているのは融資のためもありますが、自分の目の行き届くエリアを選んでいるということです。だから自分が分からないところは買いません。

――「不動産投資=不労所得」というイメージをどう思いますか?

今は「不労所得を得たい」というイメージだけで参入するのは厳しい時代です。「自分がオーナーとして賃貸事業として切り開いていくんだ」という目的意識が大切です。もちろん本業の傍らで行う副業として不動産投資を行うのも問題ありません。ただし「副」業ですから、あまりにも短期間で「とっとと脱サラしよう」という考えには危険が伴います。最初から不労所得をつかみにいくと騙されるので、いい物件を買うための知識を学び経験を積み重ねてから行動しましょう。

――やはり勉強が大事ですね!

ただし勉強だけして完結していたら意味がありません。それは数字に対しても同じです。例えば「利回り〇%なければいけない」と数字に固執して買えなくなってしまう人や、「あの人はこういう物件を買っているから私もこういう物件がほしい」と他人の投資に囚われている人は、要注意です。

――そうならないためにはどうしたら?

「こういうふうになりたい」というお手本を1人見つけること。私は邱永漢氏(台湾、日本の実業家)の教えを学びました。ロバート・キヨサキさんの『金持ち父さん 貧乏父さん』をバイブルにして、実践している方は多いです。

――最後に、不動産投資に興味を持っているサラリーマンが注意すべきことは何ですか?

私見ですが、高額なコミュニティやスクールをやっている人に投資で成功している人は少ない印象を受けます。彼らが融資を受けられているのは、不動産よりも事業所得のほうが強いケースも多い、と思います。不動産賃貸業としての実力と事業の評価は違うものです。良い悪いではなくて、同じことがサラリーマン投資家では再現できません。だからこそ、不動産賃貸業だけで成功している方から学び、それを血肉にして欲しいと思います。

※この記事は投資を推奨するものではありません。自己の判断のうえ、投資を行ってください。

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