『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』ケニアの助産師をめぐるドキュメンタリー

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 ケニアの小さな村に住むプリシラ・ステナイは、「ゴゴ(おばあちゃん)」の愛称で親しまれる94歳の助産師。子供の頃学校に通えなかったため、ひ孫たちと一緒に小学校で学んでいる。目下の目標は、卒業試験に合格すること。本作はそんな彼女を追ったドキュメンタリー映画だ。

 監督は、『世界の果ての通学路』のパスカル・プリッソン。今回も途上国の教育問題にスポットを当てているが、大きく違うのは、題材やテーマ以上に主人公の魅力が立っていること。もっと言えば、いい意味でゴゴは劇映画の主人公のようなのだ。

 作り込まれた画面やカット割りの中で、彼女はまるでそこにカメラがないかのように自然に振る舞う。子供たちも然り。一体、被写体とどんな関係を築けば、こんな撮影が可能なのだろう? そこに差し挟まれる端正な引き画や空ショット、リハーサルしたかのような巧みな移動撮影。夜の風景に至っては、デイフォーナイトだろうか? さらには、野生動物たちの間を修学旅行の黄色いスクールバスが土煙を上げて走る光景も、フィクションを見るようである。

 にもかかわらず、当然ながらゴゴや子供たちには、プロの俳優にはマネできないリアリティーがある。ふとした拍子についカメラを見てしまうのも逆にリアルで、だからこそ、「世界中に教育の大切さを伝えたい」というゴゴの思いが、一層我々の心に響くのだ。★★★★★(外山真也)

監督:パスカル・プリッソン

撮影監督:ミッシェル・ベンジャミン

12月25日(金)から全国順次公開

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