『ソング・トゥ・ソング』音楽業界を舞台に4人の男女が幸せを模索

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 かつては、その寡作ぶり故に伝説の監督とまで言われたテレンス・マリックだが、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『ツリー・オブ・ライフ』以降は、毎年のように新作を発表する量産体制に入った。しかも、本作より後に撮って先に日本で公開された『名もなき生涯』でメッセージ性のある社会派作品に回帰したものの、本作までは恋愛を絡めたドメスティックな内容ばかりなのだ。

 否、それは正確ではない。音楽業界を舞台に4人の男女が幸せを模索する本作でマリックは、人間の心の内奥を深く掘り下げようとしているように思えるから。哲学的に。要は外か内かの違いに過ぎないのだ。そのために彼が選んだ手法は、プライベートフィルムのような親密なカメラワークだった。にもかかわらず、主演級がそろい踏みのキャストは超大作並みに豪華だし、エマニュエル・ルベツキがワイドレンズのシネマスコープで切り取る映像は、やはり仰々しい。

 ドメスティックな題材を扱っても作品に宿ってしまう大仰さ。好き嫌いはともかく、それこそがマリックの作家性だろう。しかも彼は、どうすれば映画になるかを知っている。太陽を美しく撮る方法も、自然光の使い方も、何がフォトジェニックかも。何より、彼が俳優というものに、その肉体に強く惹かれていることが画面から伝わってくるのだ。映画作家にとって最も必要な資質だろう。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:テレンス・マリック

出演:ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン

12月25日(金)から全国公開

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