「Go To」の冷たさ

 出し遅れの証文とはこのこと、と反省しながら書くのだが、政府の「Go To トラベル」や「Go To イート」には、とてつもなく大きな欠落が潜んでいたように思えてならない▲ウイルス感染の先行きを見定められないまま、見切り発車で人を動かそうと試みたことを、改めて批判しようというのではない。「Go Toでひと息ついた」という関係業界の好意的な反応も承知している▲ただ、旅行にせよ外食にせよ、ある程度の経済的な余裕や時間的なゆとりが大前提の行動だ。それは「Go To」事業の“恩恵”が直接的に向かう先が限定的であることを意味している▲今はとても旅行どころではない-そんな苦境にある人たちは最初から「Go To」の勘定に入っていない。ある意味、とても冷たい政策だ。割引もキャンセルも自分にはどうせ無関係…一連のドタバタを冷めた目で眺めていた人々も少なくないだろう▲春からの政府の施策を思い返している。一律10万円の特別給付金には異論もあったし、「アベノマスク」はやっぱり愚策だったと思う。ただ、少なくともこの二つはすべての国民に届いた▲昨日は冬至。昼の時間は少しずつ長くなっていくが、寒さはこれからが本番。政治は、少しずつでも温かさを取り戻していけるだろうか。(智)


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