養殖いけすをリアルタイムに監視 長崎大と粕谷製網が開発 陸上からの管理を

「マルチセンサプラットフォーム」(中央)の実証実験を公開する関係者=長崎市、県総合水産試験場の試験いけす

 長崎大情報データ科学部の小林透教授の研究グループと粕谷製網(諫早市)が、水中の養殖いけす内の環境をセンサーやカメラでリアルタイムに監視する装置「マルチセンサプラットフォーム」を開発した。今後、開発中の自動給餌装置と連動させ、陸上から沖合のいけすを管理するシステム構築を目指す。

 この装置は、三つの筒状の容器の中に、センサーと3種類のカメラを配備。センサーでは塩分濃度、水温、溶存酸素濃度を測定する。海水による機器の腐食を防ぐために空気室を設け、計測時だけ接水させるのが特徴。カメラは360度全方位の撮影が可能なものなど3種類あり、いけす内を可視化する。
 近年、赤潮の影響が少ない沖合で、波浪の影響を軽減させる浮沈式いけすを使った養殖が注目されているが、給餌の手間や魚の状態把握などの課題がある。同大と同社は、「水中自動給餌機原理モデルの開発」をテーマに県産業振興財団の海洋技術開発研究委託事業の採択を受け、2018年度から共同研究を続けている。
 開発中の給餌装置は、乾燥した餌を空気室内の水面に投入する仕組み。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の技術を組み合わせて養殖魚の活性度に合わせて給餌量を自動調整する機能の研究開発も進めていく。
 小林教授らは18日、長崎市多以良町の県総合水産試験場の試験いけすで、「マルチセンサプラットフォーム」の実証実験を報道陣に公開した。装置が水中で撮影した画像などをスマートフォンなどで確認し、水中ドローンを使って作動状況もチェックした。
 小林教授は「いけす自体のロボット化を目指している。人の手を介さず、いけすが魚を見守り、必要な時に適切な量のえさを与えることで養殖業の効率化につながる」と話している。

長崎大情報データ科学部と粕谷製網が共同開発した「マルチセンサプラットフォーム」(同部提供)

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