コロナ景気はいつまで続くか - 急激な成長を続けるHopinの挑戦

 2020年も年の瀬を迎え、「2020 ユーキャン新語・流行語大賞」が12月1日に発表された。結果が「3密」だと聞いて異論を挟む人は誰もいないのではないか、2020年はそんな一年になってしまった。

 Top10にはもちろんコロナ関係の流行語が多く入っており、「あつ森」「ソロキャンプ」と聞いても「コロナがあったから流行したんじゃないか」とあまのじゃくな気持ちにすらなってしまう。来年こそオリンピックをはじめ、気持ちが晴れやかになる一年になって欲しいと願うばかりである。

 今回はそんな世間の暗い気持ちとは裏腹に、今年こそが史上最高の一年!なんなら、この「コロナ景気」が終わって欲しくない!とまで思っているであろう、Hopinというスタートアップを紹介しよう。

 Hopinは2019年6月に創業したイギリスの首都ロンドン発のスタートアップで、オンラインカンファレンスを開催するためのプラットフォームを提供している。ご存知の通り、リアルな会場でのカンファレンスがほとんど開催できないため、オンラインカンファレンスのマーケットは急激に拡大し、Hopinは創業1年余りでユニコーン企業となっている。

 Hopinの成長を客観的な目線で分析したSiftedの記事を元に、今後のHopinの動向と新しいカンファレンスの形について考察してみたい。

Zoomを比較対象とするほどの注目度

 爆発的な成長を元に大きなリターンを期待するスタートアップの投資家にとって、Hopinは逸材であるに違いない。今年11月にシリーズBにて資金調達したHopinに投資したプレイヤーは、これまでSnapやSquare、Spotifyに投資した実績をもっており、Hopinの今後の成功を担保するに値する調達になったのではないだろうか。推定の評価額は21億ドルで、本シリーズでユニコーン(10億ドル以上のスタートアップ)となっている。

 実質8ヶ月しか売上を立てていないスタートアップにこれだけの評価をすることは異例であり、パンデミック後に同じ成長率を維持することは困難であると考えられるが、withコロナ・Afterコロナにおいて、Beforeコロナのようなカンファレンスのあり方は戻ってこないと見込んでの投資なのであろう。それほどコロナは新しいスタンダードを整備することを人類に強いており、Hopinはその旗手ともいうべきスタートアップなのである。

 Siftedでは、Zoomを比較対象としてHopinを客観的に評価している。通常の上場SaaSの平均収益倍率が10~20倍であるのに対しZoomは96倍、Hopinは未上場ながら100倍と、Zoomに匹敵もしくは凌駕する成長を見せているのだ。

競合も続々と誕生・製品の質と市場を確保し続けられるか

 すでに競合と呼ぶべき企業も後を追っている。イスラエルで誕生し、ニューヨークに拠点をおくBizzaboがその一つで、この1年で評価額が4倍になり新たな調達にも成功している。競合の存在によって、市場獲得のためのコスト増やサービスの解約率増など、Hopinの成長の妨げになりうる要因は今後増えてくるであろう。

 また、実際に私が参加したオンライン・カンファレンスでも、多くはHopinを使っていたが、会場でのエクスペリエンスにはまだまだ敵わないというのが率直な感想だ。利用者の観点では、企業間の競争を通じてオンライン・カンファレンスのUXがさらによくなることを期待したい。

 次のビッグ・カンファレンスは、年明け早々1月11~14日のCES(Consumer Electronics Show)である。毎年ラスベガスから大きなインパクトを全世界に発信するCESの体験を、どのオンライン・カンファレンス・プラットフォームが、どのように表現するのか注目したい。

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